冷害のヤマト
拷問描写や解釈違い、不快な表現(主に拷問関係)があります。
そういったことが嫌な方は削除の申し出や見ない様にすることをオススメします。
「お願いしますヤマトさ……ぎぃやぁぁぁぁ!!!」
「何を叫んでるの?まだ真皮が半分切れたくらいじゃないか……まだ太い神経を直接撫でるまで三十分はあると思うけど」
ギッ……ギッ……
鋸が、何かを引き切る音がする。叫び声が島中に響き渡る。まるで地獄の鬼の怨嗟の声。恐るべき悪魔の放つ断末魔。
自動的に動く鋸によって、男の右腕が切られていく。しかもその動きは緩慢で、刃も最低限錆が取れている。
最低限肉や魚が切れる程度に研がれているくらいで本来の木材を切るという役割は全く果たせないであろう代物だった。
ここは百獣海賊団の本拠地"鬼ヶ島"の奥深く、本来ならばカイドウにとっての重罪人を閉じ込めて置く部屋であり、現在はある"存在"の自室であり、狂える人型の獣を満足させる為の、狭い世界の恐ろしい悪夢である。
そこにいたのは青のグラデーションの掛かった白髪にして巨身、角を持った美女と黒の戦闘服に身を纏った2mほどの男である。
女は固そうな椅子に座りながらそれを観察し、男は歯を食いしばりながら頑として座っていた。
「ちょっと傷口見せてね……うん、やっぱりそうだよ。灼熱感と強く滲みる様な痛みしかないはずだ。百獣海賊団の一員なら耐えろよ、当たり前だろ」
「ぐぁぁぁいいいぃ!!!!く、くすりの、せいでずっっっっ!!!!」
「ん?あっそうか!クイーンに頼んでおいたんだっけ。ごめんごめんじゃあデータもそれ前提にしなきゃね」
「ぁ゛ぁぁぁぁぁあ゛あ゛っ!!!」
「いい声っ!今度機会があったらあいつに頼んで宴の時の一発芸に出してあげる!楽しみだなぁ……♡」
"世界最悪の生物"
大看板
冷害のヤマト
懸賞金 0ベリー
「そうだ。せっかく身体を縛り付けずに生の反応を楽しんでるんだ。だから絶対に逃げないでね」
「はい゛っっっっ!!に゛げま゛ぜん゛っ!!!」
「ウソ♪逃げたい時は逃げてもいいよ?その時はもっっと長い時間そういう方向の楽しみ方をするだけだから」
「ごこ゛う゛い゛!がん゛じゃ゛じま゛ず!!!」
この女は、悪魔であった。痛みを愛し、苦悶に喜び、嘆きの涙をすすって生きている。叫び声はオーケストラ、命乞いの声は讃美歌、殺してくれという嘆願は正に雅楽。
ご機嫌に鼻歌を歌いながら、とある書類を開く。ワノ国から届く冷気対策の願い出だ。痩せた土地でも育つ作物の種が欲しいというもの。ヤマトは頭を抱えながら数瞬考えたが、ワノ国の作物事情はヤマトの基準ではまだ"余裕"がある。ヤマトは落胆した表情でその紙を破り捨てた。
さて、ヤマトがまだ十代前半であった頃、気まぐれに自分の父親に願い出たことがある。
ワノ国の国力を下げるには農作物や漁、牧畜を崩した方が都合がいい。
当時ヤマトの本性を把握しきれていなかった彼女の父は、ようやく四皇の娘であることを自覚したのかと喜びながらその提案を受け入れた。すると四皇の確保していた悪魔の実を食い、ワノ国をすぐさま冷害に陥れる。苦しみ喘ぐ民衆を見て目を輝かせながらニコニコと天使の様な笑顔見せたのだ。その様は天女の様であり、何かに歪んだ化け物の様に映った。
しかし一方でバイオ兵器に詳しいクイーンに冷害に強い作物をワノ国に広めたいと頼み込み、実際に成果を出したこともある。
四皇は怒って娘のヤマトにワノ国を豊かにするつもりかと言われ、折檻されそうになるとその少女はその後に父親にこう返した。
「私の能力を使うだけだと一回冷害で苦しむだけで終わっちゃうでしょ?寒さに強くて土地の栄養を大きく吸い尽くす作物を広めたら何年も苦しんでくれるんだよ?」
当時、少女から女性になろうとしていたその身体の中には別の物が既に宿っていた。そこから十年以上掛けて醸成されたのが、ヤマトという美しい女であった。
時は戻って現在。まだ、ワノ国の飢餓は蔓延しきっていない。花の都はまだ華やかであることを思い出し、不快感に顔を顰めた。
その悪魔の部屋に闖入者が現れた。この部屋には用事や要請がなければ下っ端は勿論、真打やそのトップ飛び六胞すら近寄ることはない。
そうなれば自然と敵対者か大看板、総督しか候補はいないが、その中でこの行為を止めに入るのは、補佐として君臨するあの男の他にはいない。
「キング!どうしたのこんなところまで!もしかしてやっっっっと協力してくれる気になった!?」
「ヤマト姫。カイドウさんから通達だ。"今すぐ全ての拷問を止めろ、酒が不味くなる"」
「嫌だ、私の食事が不味くなる」
「……いい加減にしろヤマト、今週で何人目だ。プレジャーズやウェイターズとはいえ百獣海賊団の戦力だ。あまり浪費するな」
「君がしばらく私の"実験台"になるならいいよ」
その一言は、目の前の大男を憤怒に貶めることに等しい。背中に背負った炎が大きく燃え盛り、ヤマトに向かって強い威圧感が飛ぶ。直後キングの近くにあった壁が瞬時に粉砕され、その中心地には拳が置かれている。
事情を知っていてなお他人の傷口を広げようとする度し難い邪悪に嫌悪感を催しながら、吐き捨てる様に言葉をかけ、強くヤマトを殴りつけた。
「いっっっっ、何をするんだキング!」
「調子に乗るなよクソガキ。お前の処分は俺に一任されているんだ。今すぐぶち殺してやってもいい」
「殺してみなよ。ワノ国の作物調整やその予測を基にした課税計算は誰がやってると思ってるんだ?ワノ国の侍を生かさず殺さずの状態にしてるのは私だぞ。"大看板 火災のキング"」
「……百獣海賊団の政策とお前の命を天秤に掛けろってのか」
「…………」
「せめて控えろ。一週間に八人程度、殺さないこと、今後戦力にならない程度にしないという条件なら妥協してやる」
「……………………………………………………今後に影響のない拷問か!新ジャンルだ、さすがキング!大看板ってだけはある!」
「お前と同類という扱いだけは止めろ」
先ほどまでの険悪は雰囲気は一転して和やかなものに代わり、まるで兄妹かの様な会話が繰り広げられる。しかし、ヤマトは決して恨みを忘れる様な人物ではない。キングの方を睨みつけると低い声で脅しの言葉を投げつける。
「狼は、獲物を一晩掛けて追い詰めるっていうのは知っているだろ?」
「プテラノドンは崖から飛び立つ狼より執念深く鷹より素早い空の王者だ。覚えとけ」
「そうだったのか……っ!一応従うよ。じゃあまたね」
キングが足早にその場を去ろうとすると、手をぶんぶんと振って答える。やっぱり人と会話するのは楽しいし、新しい発見がある。
おでんの日誌によれば狭い世界でできることなんか、高が知れているし、限界がある。外の世界にこそ、数えきれないほどの悦びがあるのだ。
「おでんみたいに、自由に世界を回りたいなぁ……ね?」
ヤマトは鋸で切られている男の方を見る。その男は既に気絶しており、ほとんど反応を示さない。拷問を受けている男に麻酔と止血剤を打つ。
彼女は、次目覚めた時に腕を失った男の表情を想像して、天使の様な笑顔を浮かべた。