冷凍生首発見
「うう……」
なんだか視界が赤黒い。あれ?さっきまでセンタースクエアに居たはず……
いや、なんでセンタースクエアに行ったんだっけ……?
そうだ、確かカキツバタを探しに……
朧げな記憶の中、スグリは自身が床に突っ伏しているのに気が付きよろよろと立ち上がろうとした。
というのも床……というよりこの空間そのものがぶよぶよとした──まるで生き物の中のような感触をしており、まっすぐ立っているのが難しい。
ここがブルーベリー学園のどこかであれば、その名の通りブルーベリーソースの赤黒さを一面にぶちまけた部屋で意識を取り戻したスグリはふらつきながらも中央にある机までたどり着き、辺りを見回す。
広さや机の配置は部室と同じくらいだろうか? どことなくダークなテーマの部室に似ているこの部屋のロッカーを念の為確認しに行ってみたが……居るはずのポケモンは居なかった。
ここが改装中で誰も居ないだけの部室だと思いたかったスグリはがっくりと肩を落とす。
次にスグリが調べ出したのはこの部屋で出入り口となる扉があるはずの場所。なぜかテラリウムドームでよく見かけるブロックのデザインになっていた。
出口を求め薄暗い部屋の中一際輝く白に触れてみると、何やら温かい。どこか覚えのある感覚がする。
もしかして……?と思い、上下二段の上の扉をおそるおそる開けると、中は涼しく、物を入れるスペースがある、普通の冷蔵庫だった。
ただ、位置がおかしい。出入り口の位置に冷蔵庫がある。これは異常だ。
外に出る為のヒントがあるとしたら、下の段、おそらく冷凍庫だろう。
つい先程までセンタースクエアからポーラエリアへ行こうとしたのを思い出す。そこで何かあったような気がしたが、鮮明には思い出せなかった。
手詰まりだらけのこの部屋でまだ探索していないのはここだけ。意を決して下の段を開けることにした。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
予想通りだったのは冷たかったこと。
予想出来なかったことは謎の白い箱が入っていたこと。
おそらくこれがこの部屋から出る手掛かりだろう。
凍りついた少し重みのある箱を取り出し、生物めいた生温かい床に置く。
とりあえず中身を見ないことには……と軽い気持ちで開けることにしたが、これは間違いだったかもしれない。
「わぎゃーー!?!?」
ごろん、と中に入っていたそれはスグリの探していたカキツバタの首であった。