再会
「待てや、久しぶりやなぁ藍染」
その揺れる金糸をみて、懐かしさと嬉しさそしてとてつもない困惑が俺に襲いかかってきた。
「たいちょうだ」「たいちょうだよ」裏狩たちが俺の中でザワザワ、と騒ぎ出す。
胸元を押さえて気持ちを沈めようとするけど、それは鎮まる様子を見せなかった。
結界の中で副隊長達の治療をしていた吉良が様子が変なことに気づいたのか俺の名前を呼ぶ。
だがその呼び声に答える前に目の前にキラキラと金糸が揺れた。
「なんやぁ?平子やないんか。なぁ、」
その口が紡ぐのは俺の名前だ。この人が名付けてくれた「大好きの形」。俺を俺たらしめるもの。
「仮にも大罪人の名前は名乗らせられない、と奪われたんです」
気持ちを落ち着かせるために軽く深呼吸してから言葉を紡ぐ。俺もこの人との繋がりとも呼べる「平子」という苗字を名乗りたかったに決まってる。けれどそれは当時の四十六室からの決定で捨てることを強制されてしまった。
その代わりに名付けた苗字はそれまでの記憶の中でこの人以外で1番綺麗だと思ったものにした。
「それはなんというか、難儀やったなぁ。頑張ったやん。」
そう言って頭を撫でられる。この感触も100年ぶりほどだと考えると涙腺が緩まった気がした。
「相変わらず、泣き虫なぁ。」
「だって、だって」
「分かっとる、だから落ち着きィ」
仕方がない、と言いたげな笑いとともにこの人は頭を撫でていた手を背中に回し宥めるように背中をさする。
俺が落ち着いた頃合で「じゃあ、総隊長に挨拶行ってくるわ」と言って俺の頭をひとなでして行ってしまった。
その瞬間、心の内に堰き止めていた感情が爆発する。
「なんで、なんで、なんでなんでなんで」
「髪を切っちゃったんですか!?!?平子隊長!!」
そう言った瞬間、総隊長の目の前であの人の足がガクッと折れるのが見えた。