共通ルート テストプレイデータ

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杉沢第三高校 校門前/夜


ここにいろ、とだけ言い残した伏黒の背中が校舎へ消えてから数分。

俺はまだ校門の前から動けずにいた。


「何、言う通りにしてんだ。俺は……」


手足が小刻みに震えていることに気づく。

俺は何にビビってる?


“死”


そうだな、学校からは死の予感がする。死ぬのは怖い。

爺ちゃんも、死ぬのは怖かったかな。そんな感じは全然しなかったな。

俺も泣いたけど怖かったからじゃない。少し、寂しかったんだ。


今目の前にある「死」と爺ちゃんの「死」。何が違う?


『オマエは強いから人を助けろ』


爺ちゃんの遺言がリフレインする。何度も、何度も。責め立てるように。

呪術、呪霊、呪物。今まで知らなかった世界の裏側。……なんでよりによって今日なんだよ。


「クソッ、俺は——」


1.人に任せる◀︎
2.人を助ける



BAD END1/欠けた日常


——ここは伏黒に任せて待とう。


今日初めて呪いのことを知った俺が行ってどうなる? 専門家だという伏黒の足手纏いにしかならない。

漂ってくる圧に耐え、その場でじっと待つ。すると。


・・・・・・・・・・・・・
校舎の四階が内側から爆ぜた。


「……え? は?」


呆気に取られる間にも夜の住宅街に轟音が続けて何度も響く。

先輩達と伏黒は? 無事なのか?

どうする、どうすればいい。俺に何ができる。

何もできないなら、このままここで——


——って、そうじゃねぇだろ!


いつまで迷ってんだよ俺は! 何もしねぇ言い訳を探してどうする!

なんでもいい、とりあえず中に……!


「君、何してるの?」


いつの間にか真横に背の高い男が立っていた。

顔を見上げてギョッとする。前が見えているか怪しい黒いアイマスク。どう見ても不審者だ。

不審者は俺の答えを待たずにスタスタと校舎へ歩き出した。それに置いていかれないよう慌てて追いかける。


「恵のやつよっぽど慌ててたのかな、帳下ろし忘れてる……ん? ここは危ないよ。早くお家に帰りなさい」

「ちょ、ちょっと待ってよ! 先輩達と、えっと、知り合いが中にいるんだ! 俺も一緒に——」

「あちゃあ、一般人がいるのか……うーん、君にうろつかれると邪魔になるんだよねぇ。えい☆」


そんな軽い掛け声とともに額に衝撃が走る。

急激にブラックアウトしていく視界の中で、こちらに背を向けた男が校舎の方へ去っていった。


その後。


気がつけば校門前に停められた救急車の中だった。

意識に問題はないかや怪我の有無を確認される間に質問してみると、学校で『ガス爆発』が起こったらしい。

俺はその余波で倒れて頭を軽く打ったというのが救急隊員の見立てのようだ。


何かを忘れている気がする。——思い出せ。


校内で肝試しをしていたはずの先輩について聞くと、どうやらひと足さきに病院へ搬送されたらしい。

俺は幸い目立った外傷もない。何かあれば些細なことでも病院を受診するよう言われ帰路についた。

先輩達は心配だが、こんな深夜に見舞いに行くわけにもいかない。明日以降、担任を通して具合を聞いてみよう。


何かを忘れている気がする。——思い出せない。


それにしても。

どうして俺はあの夜、校門の前にいたんだろう。

怖がりな先輩達の様子を見にいこうかとも思っていたけど、爺ちゃんが死んだからそれは取りやめたはずだった。なのに“1人で”学校を訪れていて、その道中はぼんやりとしている。

どうして俺はあの夜、とても焦っていたんだろう。


何かを忘れている気がする。——そんな気がする。


次の日からは怒涛の忙しさだった。

爺ちゃんの火葬や遺品の整理、役所での手続き。他に親戚がいない未成年の俺は施設に行くことに決まった。

通学圏内の施設には空きがなかったので、高校入学からわずか2ヶ月で転校することになる。

担任から先輩の家族へ入院先を聞いてもらったら、なんと東京の病院だった。流石に今の俺の経済状況では簡単に見舞いに行けない。なんでそんな遠い所にと不思議に思ったけど、元気になったら教えて欲しいとお願いするぐらいしかできなかった。


何かを忘れている気がする。——そんな気がしていた、はずだった。


結局あの夜以降、杉沢第三高校には一度も登校しないまま俺は別の街に引っ越した。

欠けた記憶の隙間は他のもので徐々に埋められ輪郭すら曖昧になっていく。

理由のわからないぽっかりとした喪失感を抱えたまま、いつかはその感覚さえ忘れて日常は続いていくんだろう。

それでも今はまだ、この欠落を覚えていたかった。


BAD END1/欠けた日常



ピンチャン道場1


(♪ゴキゲンなBGM)


羂「羂索です!」

髙「髙羽だぜ!」

羂&髙「2人合わせてピンチャンでーす! よろしくお願いしまーす!」

羂「さて、この第一回ピンチャン道場に来るプレイヤーは道場初体験か、もしくは2周目以降のライブラリ開放目的が多いだろうけれど。果たして君はどちらだろうね?」

髙「初体験の君のために簡単にこの道場のことを説明しよう! ピンチャン道場とは! ……なんだっけ?」

羂「『とりあえず大声出しておけばOK』は昭和の笑いだよ? この道場はわかりやすく言うと、バッドエンドを踏んでしまったプレイヤーへの救済措置だ。直前の会話での選択肢ミスや戦闘でのゲームオーバーはいいとして、複数のフラグが組み合わさったバッドエンドなんかも中にはあるからね」

髙「ああ〜、何日か前の会話が関わってたりすると、ルートのどの場面まで戻ればいいかわからねぇもんな」

羂「そうそう。そういう時のために私達がバッドエンド後の楽屋裏でアドバイスを贈ろうってわけさ」

髙「なるほどな。じゃあ記念すべき第一回ピンチャン道場のアドバイスを、どうぞ!」

羂「今回はどうやら物語が始まる以前の問題だったようだね。敗因はズバリ『主人公力の欠如』!」

髙「手厳しい〜! まぁでもお祖父さんの遺言もあったのに、あそこで尻込みしてちゃ少年はヒーローになれないよな」

羂「別にヒーローになるのが目的のゲームではないけれどね。ただ、日常から飛び出す勇気がなければ物語が始まらないのは確かだ。焼き直しと惰性からは何も産まれないよ」

髙「はい、その通りです……」

羂「おっと相方の何かに刺さってしまったかな、まあいいや。主人公のプロフィールにも『祖父の遺言に従って人を助けようとする』と書いてあるからね。『主人公らしい行動をする』というのは重要な攻略ポイントの一つだよ」

髙「主人公や各ヒロインのプロフィールはメニューのライブラリから参照できるぞ! ルートが進行すると攻略のヒントになる情報が更新されたりもするから、完全攻略を目指すならこまめにチェックしよう!」

羂「兎にも角にも。せっかくコンティニューが用意されているのだから、バッドエンドは何回踏んでしまってもOKさ。私達のアドバイスをうまく利用してハッピーエンドを目指すといいよ!」

髙「無限コンテはプレイヤーの特権だよな。一緒に主人公とヒロインの幸せな未来を掴み取ろう!」

羂「フフ、プレイヤーの特権か。言い得て妙だね。さて、あまり長々と話してても何だし、初回はこのくらいにしておこうか」

髙「俺と相方も本編のどこかに登場するから探してみてくれ! それでは〜!」

羂&髙「ピンチャンがお送りしました! また次回!」


(♪ゴキゲンなBGM)


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NEXT◀︎


(無音)


羂「……」

羂「おや?」

羂「どうやら勘がいい子がいるようだね。では、もう少しだけサービスしておこうか」

羂「宿儺ルートの12月で『Tips:零本目』を獲得していれば、このエンドから11月のイベントへ繋がる隠しルートが開放されるよ」

羂「私としてはこちらが当初想定していたルートなんだけど……まぁ本来から外れたことで生まれる混沌も楽しみの一つだからね。ライブ感を大事にしていこう」

羂「……」

羂「そうだ、言い忘れるところだった」

羂「『虎杖悠仁』をよろしくね。きっと仲良くなれるよ」

羂「また次回」


(無音)


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