全部お酒のせい

全部お酒のせい

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 「あぁ…仕事の終わりに飲むお酒は最高〜。」

 映画の撮影も終わり久々に我が家に帰ってきた。まとまった仕事はある程度目処がついて久々の週末のオフを堪能することができる。昔はあまり好きじゃなかったお酒を飲んでゆっくりと晩酌を楽しむ。

 「おいおい酒に強いからってあんま呑みすぎるなよ?」

 バスタオル片手にお風呂上がりの彼がリビングへ入る。

 「先に始めてるよー。この一杯が堪らない…」

 「おっさんみたいなこと言ってるな。仕事お疲れ。撮影はどうだった?」

 「そう!それなの!聞いてくれない?」

 そこから私は撮影の愚痴を彼に吐き出した。

 「それは大変だったな。」

 「まぁ撮影自体は結構楽しかったんだけどね。」

 そこで彼があまり飲んでないことに気付く。

 「アクアって明日は仕事あるんだっけ?」

 「酔ってんのか?あかねに合わせて休暇もらってる。」

 「あれれ?そうだっけ?ならもっと晩酌楽しもうよ?ほら」

 アクアはあんまりお酒は飲まない。一、二杯程度飲んだらすぐに寝てしまう。曰く、居酒屋で姫川さんたちと飲んだ時凄い恥ずかしいことを口走ってしまったらしい。普段なら無理強いはしないけど、アルコールで理性が飛んでどんな様子だったのか気になりダル絡みをしてしまう。

 「ほらグラスちょーだい。注いであげるから。」

 「俺はいい。」

 「なぁにぃ?私の注いだお酒が飲めないの?」

 「あまり飲むと変な感じになるから飲みたくないんだよ。ほらあかねももう顔真っ赤だしベッドまで運んでやるからもう寝るぞ。」

 あくまで断る彼。寝る準備に入ろうとしていた。だけど私は引き下がらない。

 「わかったー。あ、アクアこっち向いて!」

 度数の高いお酒を口に含む。

 「ん?どうし…」

 不意打ちで彼の唇を奪う。一瞬の出来事に驚く彼の隙を突き、舌でくちびるをこじ開けてお酒を流し込む。後頭部をがっしり抑えて舌で彼の口を撫で回す。ゴクリ、と飲み込んだ音を確認して惜しむように口から離す。唇の端から僅かにお酒が垂れた。色っぽい。

 「おいあかね…悪ふざけが…」

 焦点が合わず虚な瞳でボーッとしていた。

 エッチだ…じゃなくて!もしかしてかなりまずいことをしたのでは?急いでお水を持ってこようと席を立とうとしたが、それは叶わなかった。私は彼に強く抱きしめられていた。

 「あれ?どうしたのアクア?」

 「行かないで。」

 荒い息で涙声で訴えかけられた。

 「大丈夫だよ?ほらそばにいるから。でもお水飲まないとアクアが心配だから…」

 「やだ。」

 腰まで手を回されてガッチリと抑えられる。振り解くことを考えるのは諦めた方が良さそうだ。

 首筋に顔を滑り込ませて深く吸われた。恥ずかしい。

 「あかねめっちゃ良い匂いする。落ち着く。好き。」

 普段の彼からは想像もできないぐらい素直で積極的に甘えて来てる。

 これはつまり…そういうことなのだろう。普段じゃ見られないぐらい彼は甘えん坊さんになったみたいだ。

 そのギャップに萌えてドキドキ、かれこれ10分。流石にベッドへ移動させた方が良さそうだ。

 「ベッドで続きしよ?だから一回離してそろそろ…」

 呂律の回らない口で紡ぐ。

 「無理、もう少しだけ…二週間もあかねに逢えなくて寂しかった。電話だけじゃ足りねぇよ。今あかね成分補給しなきゃ俺は動けない。」

 なんて可愛いことを言ってくれるんだ私の旦那は!などと余裕ぶっていると

「んぅ…⁉︎」

 首筋に甘い痛みが走る。俺のものだと誇示するために歯型の痕を残す。普段なら仕事の影響が出るようなことはしないから彼からは想像もできない。

 「俺は怒ってるあかね。恋愛ドラマなのはわかってるけど俺のあかねが他の野郎にハグされてんのが。だから俺がもっと上書きする。」

 「あっ♡ひゃっ♡」

 私の弱い部分を知り尽くしている彼は感じやすいところを重点的に攻める。先ほど付けた歯型を上から舌で上書きした。思わず甘い声が漏れるが彼は追随を許さなかった。それから…

 「あかね成分たくさん取れた。ベッド行くぞ。」

 お口から首筋まで甘く溶かされて上手く力の入らない私を優しく抱き上げてそのままベッドまで運ばれる。

 「…うん。今日はもう…。」

 「ベッドで続きするんだろ?今夜は寝かせねえぞ?」

 お酒のせい、いや、そのおかげで知らなかった新しい一面を知れた。後普通に負けた。






翌朝

「アクア大丈夫?」

「うぅ…頭痛いし、死ぬほど恥ずかしいことばっか言った。全部酒のせいだから!」

「甘えん坊のアクア可愛かったな!」

「グハッ…!」


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