「先生もグラフィティやってみない?」

「先生もグラフィティやってみない?」


モモトークに連絡が来たのは昨夜の遅く、雨がシャーレの外壁を打ち付けていた。躊躇う理由も余裕も無かったから、返事をしてすぐ眠りについた。それで、ああ、すぐにミレニアムに足を運んだっけ......

曖昧な記憶を一つずつ整理していく。そうしないと、目の前の、いやドアの奥の彼女を理解しきれないからだ。

真っ先にヴェリタスの部室に行ったが、マキの姿はなかった。そうだ。丁度あの時モモトークでこの静かな部屋を指定したのはこれが理由だったんだね。それから......


「せんせ~い?このまま外に出て行っちゃおうかな~?」

それはダメだ。先生として、正しいことをしなければいけない。整理途中の意をなんとか決して、目を閉じながら部屋の中に入る。

直後、強い衝撃に耐えかねて視てしまった。彼女は肌に何も纏わず、小さな体から伸びた細い腕で私の両手を奪い、腹の上に座っている。

「ねえ先生。こんなこと先生にしか頼めないんだよ?」

"ほ、ほら、塗料を人体に直接塗るのはちょっと..."

「大丈夫だって!ミレニアムの製品だから!」

「それにね、先生にしてほしいの。じゃないと、あたしの芸術魂が納得しないの!」

放たれた言葉や彼女の目から、本気なのだと悟った。もはや、何を言っても止められないと解った。

"でも、絵は上手じゃないんだよね。"

「先生、あたしは先生の絵の上手さじゃなくて、先生がどういう風に表現するかが見たいの。それに、今から起こる芸術は大事な思い出になる。そう思わない?」

反論は口から出なかった。仕方なく、彼女のスプレーの方に向かう。彼女は柔らかい表情で椅子に座った。カーテンは閉まり切っている。遠くから生徒達の声が聞こえてくる。私は息をゆっくり吸って、指先からスプレーを噴射し始めた。

「んっ...ふふ...」

細かく揺れる腕の上へ色を塗り付ける。欲しいまま、肩に、足に、腰に、腹に、胸に......


遂にスプレーを置いたとき、彼女は満足げな様子だった。一応、首から上には塗っていない。が、顔はスプレーを塗ったように赤かった。

「すごいよ先生!記念に写真を撮ってくれない?」

"うん...いや、駄目だよ!?"

「あはは!うん!十分目に焼き付いたよ!先生もそうでしょ?」

"もちろん。"

そう言った後に気付く。仮にも先生と生徒の関係で「良くないこと」をしてしまったのだと。そう思うと、重い罪悪感と生温い背徳感が頭を支配した。

「でも、もう一色欲しくならない?」

"もう一色?"

「そう。白色が足りないと思うな...」

そう言い切る前に、彼女は、マキは私のベルトに手をかけていた。

"マキ、駄目だよ。"

「先生は、ほんとに何も考えずにこれをOKしたの?」

「メイキング動画、しっかり撮ってるよ。」

「先生もほら...しっかり大人じゃん...大きいね...初めて見たけど...」

マキは小さな口で一気にそれを頬張った。燃えるような熱さが、この部屋に、私に、彼女に伝染していく。

「んんっ...どう?うまっく...できてる...?」

んぽっ、んぽっと、唇が忙しなく音を立てる。私が優しく頭を撫でると、

「んん...はあ...」

彼女は安心したように濃い息を吐いた。その息すら、十分にそれを刺激した。

「ふーっ...ふふ...ビクビクしてる...おもしろいね...」

「...ん~?出そう?...いいよっ♡」

「先生の白色...出しちゃって...いいよっ♡あっ♡!!」

細かく揺れる顔の上から、白色を塗り付ける。欲しいまま、乱れた髪に、可愛い口に、真っ白な首に、汚したくなる肩に、呼吸に揺れる胸に......さっきは熱中していて気付かなかった。愛らしい身体と、私の酷く歪んだ劣情に。

彼女は胸から指でそれを掬い取り、揶揄うようにこちらに見せつけてくる。

「ねえ先生?まだ終わりじゃ...ないよね♡」

「ほら...♡」


もう戻れない。戻る気もない。私はネクタイを外し、一人の大人として彼女を抱く。

汗と色々な液体のまざったキスをした。いつまでもしていたいと思った。

「次は...手でしてあげるね...♡その次は...」

机に放られたシャツには、滲んだペンキの色が移っていた。


"マキがこんなにエッチな子だったなんて、知らなかったな。"

「それは先生もでしょ!こ~んな小さい手でちょっと触るだけで...ほ~ら♡」

「先生、覚悟してね?」

彼女は唾を垂らし、優しい手つきで動かし始めた。ぎゅっと握ってみたり、先端を弄繰り回してみたりしてくる。しかも、私の悶えている様を、彼女はじっと見つめている。鑑賞するみたいに。正直言って、恥ずかしいからやめてほしいのだが。

「先生、そんなに見られるのが嫌なの?こっちは全身まで見られたんだけどな~」

"嫌なんて言ってない。"

「顔がそう言ってるよ......あっそうだ!」

思い出したかの様に、それは胸に押し付けられた。

予想していた通りの感触だったが、それ以上の火力が襲った。

「こういうの...好きかな...?」

"マキ...好きだよ..."

「えっ!?...ああ...うーん...どっち?」

"..."

「ちょっと!何とか言ってよ!!」

"マキのこと、生徒以上に好きだよ。"

「...うん...わかった...あたしも好きだよ♡」

身体を跳ねさせてそれを上下させる。すぐだった。どくどくと流れ出る液体が胸を白く染めたのは。それもひとえに彼女のせいだと思うと、次の行動は決まり切っている。

「なっなに先生?急にがっついてきちゃって。」

"マキ、こうさせた責任を取って。この後の責任は私が負うから。"

「......いいよ♡ほら、来て...♡」

彼女は体のすべてを差し出した。二本の指で開かれたところに、私はゆっくりと押し込む。

「んうっ...んっ...♡」

「んむっ!?...んむ...♡」

きつく締め付けてくる。漏れてくる声を抑えるためにキスをしたが、多幸感で馬鹿になりそうだ。ゆっくりと奥の奥まで突き進める。

「あ゛っ♡せんせぇ♡これヤバい♡」

「いたっ...ぐないよ♡せんせぇもだい...っじょうぶ?」

"大丈夫だよマキ...優しいね...大好き"

「せんせぇ...♡これ゛っしあわせすぎ♡」

「ぁああっ手っ...あったかい...」

「んっ♡せんせいもイキそうなのっ?いっしょっ...だね...」

「んむっ...んあああ゛あっっ!!」

自分の想いと共に、全てを吐き出す。弱いところも、嫌いなところも。キスはやめなかった。気を紛らわせるためじゃなく、ただ愛し合う為に。暗い部屋には水の音以外響いていなかった。



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