先生が鬼強い世界線
キヴォトスの某パーティー会場、便利屋68とシャーレの先生はとある潜入任務を遂行していた。
"カヨコって本当にみんなから信頼されてるんだね"
『…いきなりどうしたの?』
"こういう任務ってアルが進んで行きたがるものだと思ってたよ"
『ああ、そういうことね。勿論社長も私のことを信頼してくれてるんだろうけど、前に社長のことを助けてくれた事以来、会話の話題に先生が上がるだけでも赤面しだすの。』
『だから、「今回の先生との会場への潜入はカヨコがやってくれないか」って強くお願いされてね…』
"あはは…なんだか申し訳ないね…"
『もう、そんな事で謝らなくてもいいよ』
『…! 先生、アレが今回のターゲットだよ。』
カヨコが目線で先生にそう示す。
そこには、護衛を引き連れた人型のロボットがパーティ会場へ入ってくる姿が見えた。
"随分と手厚い護衛だね…それに、客やキャストに扮してるのも沢山いる…"
『私が近くまで行って様子を伺ってくる。』
"だ、大丈夫?"
『心配しないで。こんな場面は何回も経験してきてるから。』
"…本当にマズくなったら私を呼んでね"
『うん、わかった。』
そう言うとカヨコは目標の付近へ接近していく。振り返るタイミングや目線の癖を把握した彼女は、慎重に洗練された動きでかろうじて声が聞こえる距離まで詰め寄った。
「ハハハハ。カイザーコーポレーションさんとお近づきになれて何よりです…」
「…ええ。この後再び上の会議室でお話を…」
「飲みすぎないようにしなければなりませんな…」
『(これ以上は有意義な情報を聞き出せそうにない…先生の元へ戻ろう。)』
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"大丈夫だった?"
『うん。この後の動きが大体わかったよ。』
"さすがはカヨコだね"
『ありがとう。それでこの後だけど、目標は上で会談を行うみたい。だからそこか移動中が狙…』
突然、先生がカヨコにハグをする。
賑やかな会場とは対照的に、2人付近の空間には静寂が流れた。
"……もう大丈夫かな"
『せ、先生、いきなりどうしたの』
"ごめんね。さっき変装したエージェントがこっちに近づいてきたから…"
"ごめん、息苦しかったよね…顔が赤くなっちゃってる…"
『だ、大丈夫だから。こっちこそ油断してたよ』
"とりあえず、アルたちに共有しようか"
『そうだね。一度集まって作戦会議してもいいかも』
便利屋のグループのモモトークに先ほどの情報を送信する。
すると返信がより早く頭上から爆発音が響いき、天井が崩れ始めた。
次の瞬間、会場に銃声が轟く。
次第にその中に怒号が混じり、鉛玉の応酬が始まった。
阿鼻叫喚の中で、先生がカヨコに問いかける
"カヨコ大丈夫!?"
『大丈夫。それより早くみんなに連絡とらないと…』
"それなら大丈夫そうだよ。ほら"
先生が銃声の方を指をさす。そこには護衛やエージェントたちと銃撃戦を繰り広げるムツキとハルカの姿があった。
『あの子達が原因だったのね…』
『とりあえずあっちの加勢にいこう。』
"うん。そうし…"
そう言いかけた次の瞬間、先生の顔の付近を銃弾が掠めた。
2人の近くに、ゾロゾロとアンドロイド達が集まってきている。
"…たかったけど、先にこっちを片付けないといけないみたいだね。"
『こうも多いと骨が折れそうだね…』
"大丈夫、すぐに終わるよ"
そう言うと先生はホルスターから銃を抜く。
その直後、一瞬のためらいもなく引き金を引いた。
6回銃声が鳴り、6人の相手が倒れる。リロードの隙をカバーするように、カヨコもすかさず銃を抜いて応戦を始めた。
空薬莢が床に落ちるよりも早く薬室を満たすと、再び狙いを定めて発砲する。
先生はカヨコを遮蔽物まで援護した後、相手の斜線を避けながら距離を詰めていき敵を蹂躙していく。
落ちている小銃を拾いながら、辺りの敵へ機械のような精密さで弾幕を浴びせてゆく。
ハルカとムツキに戦力が裂かれているからか、2人のあたりを取り巻く敵勢力の数が減り始めた。
先生はカヨコの隠れている場所へ戻り体制を整える。
『社長から話は聞いてたけど、まさかここまでとはね。』
"みんなのお荷物になるのはごめんだからね"
こんな修羅場でもいつものように軽口を叩く先生に、カヨコから笑みが溢れる。
次の瞬間、先生がカヨコの方向へ銃を向けた
"屈んで!"
その言葉の意味をとっさに理解して体を下げる。
先生が引き金を引くと、カヨコの後ろ側から兵士が倒れる音がした。
"危なかったね…"
『…ありがとう。』
先生に向かってそう言うと、抱擁をするような形で肩腕を先生の背中に回す。
"カヨコ!?いきなりどうし…"
瞬間、消音器のついた拳銃の音が聞こえ、カヨコの体が少し震える。
そう思った次の瞬間、先生の後方で人が倒れる音がした。
"助かったよ。"
『ふふっ。コレでチャラだね。』
ムツキ達の交戦も終わったらしく、会場は静寂と硝煙に包まれていた。
『カヨコちゃ〜ん!先生〜!早く出ていかないとここ崩れちゃうよ〜!』
『ご、ごめんなさいごめんなさい、わたしのせいで…』
『もう、大丈夫だってハルカちゃん〜』
"わかった!すぐ行くね!"
"じゃあカヨコ、行こっか"
『うん。そうだね』
そう言って2人は出口の方へ向かって行っく。薬莢と爪痕を残し、2つの影は土煙の中に消えて行った。
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暗い夜道を、1人走る影があった。
「はぁっ、はぁっ…」
「い、生きてるぞ…俺は生きてるぞ!」
「オレを仕留め損なったな便利屋ァ!この屈辱は決して忘れんぞ…かならず復讐を果たして…」
次の瞬間、鋭い銃声が鳴る。
先程まで生きながらえようと走っていた筈の影は、力無く地面に倒れた。
『一つ教えてあげる。アウトローっていうのは、常に2発目を用意しているものなのよ。』
「き、貴様は…」
『私達を止めたいのなら、空崎ヒナと風紀委員を連れてきなさい。』
『それでも、私たちは止まらないわ。』
『……あの人が一緒なら、尚のことよ』