兄上とおれ

兄上とおれ


「…………」

「…………」

 や、やべえ……。凄く沈黙が重たい。ダラダラと冷や汗をかきながらジッと見つめてくる兄上−−−ドフィからそっと視線を外す。身内にはとびきり甘い兄上だけど流石に海兵になったことを知られてるおれがドンキホーテファミリーに潜入はやっぱり無理がありましたセンゴクさん。他の海兵を送ろうとしてたセンゴクさんを止めてまで来たのに見通しが甘かった……。

「……なあロシー」

「!」

 部屋に入ってからずっと黙りこんだままの兄上が口を開く。ピリピリした空気を纏っている兄上なんて初めて見た。

「お前、海軍に入るって言って家を出て行ったんだよな。なのに何故此処に来た?」

 此処は海賊の拠点だ、間違っても海軍基地なんかじゃない。それともドジったのか? 言葉を続ける兄上に返事をしようとしてあ、と気が付く。おれもしかして今ナギナギの力使ってる? やべえ使ってる! 兄上のサングラスが部屋の光を反射し、その表情を隠す。

「……それも口も聞けない状態で来るなんてな。まさか海軍になって何かあったのか?」

 ん?

「聞くところによれば支部によっては横領や海賊と懇ろになってるやつも多いらしいな? この間入ったうちの下っ端が泣いて訴えてた」

 …………あれ、なんか思ってたのと違う方に話が転がってない?

「信じて預けた弟を海軍にこんなになるまで、ふ、フフフ。フッフッフッ……ナメられたもんだ」

 あの、兄上? 兄上!?

「目的があって王下七武海になったのはいいが分かった、次は海軍を」

「兄上待って待って待って! なんか誤解してる!」

「……あ?」

 慌てて凪を解いて口を開く。これこのまま勘違いさせたら何するか分からないけど碌なことにならないやつだ!

 おれが口を開いたのを見て一瞬黙ったと思ったら兄上はすぐに指を動かす。

「え、わ」

 体が勝手に動き兄上に近寄る。あ、これ糸か!? そのまま近寄ったおれの顎をガシリと片手で掴み、兄上が口を開く。

「なあロシー、おれは大層お前が心配だったんだがどうやら勘違いだったらしいな? ……説明、してもらえるよな? 兄上に」

 その後此処に来た理由や状況を洗いざらい言わされ、全てを聞き終え頭を抱えた兄上によっておれはコラソンの席に座らされた。

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