偽物・本物
鉄華団おいしーなタウン支部~福あん~
あまね「品田、相談があるのだが…」
拓海「…………な、なんだ菓彩…?」←【警戒】
あまね「そう警戒するな。
今回は真面目な相談だ。
…エルレインのことだ。」
拓海「エルレイン? エルレインがどうかしたのか?」
あまね「ああ、実は……」
【あまね、事情を説明】
拓海「ふむ…カイゼリンと仲良くなりたい、か。
エルレインがそう言っていたのか。」
あまね「ああ。だが、同時に
300年前のエルレインの記憶を持っているだけの偽物の自身は
カイゼリンの友になる資格はないのでは?……と悩んでいる。
…カイゼリンはスキアヘッドが植え付けた偽の記憶によって
長いあいだ苦しんでいたからな……」
拓海「…なるほど。仲良くしたいけど
カイゼリンは『偽りの記憶』で長い間ずっと苦しんでいたから……
エルレイン自身の『本物の記憶を持った偽物』である事実が
引け目になってしまっているわけか…
『偽物』で苦しんだ相手に『偽物』が友達になりたいなんて……
……確かに言いだしづらいな。」
ダークドリーム「ふぅん…エルレイン、そんなことを悩んでいるのね…」
拓海「…うぉっ!?リムっ!?
い、いつからそこに…!?」
ダークドリーム「割と最初の方から。
………少しエルレインと話をしたくなった。
あまね…今からエルレインに会いに行ってもいいかしら?」
あまね「…あ、ああ……いいぞ。」
……
~フルーツパーラー菓彩~
エルレイン「…………………………………」
ダークドリーム「…………………………………」
拓海「……な、何を話すつもりなんだろう……?」
あまね「わからん。
とりあえずダークドリームを信じて見守ろう。」
ダークドリーム「……エルレイン。」
エルレイン「は、はい……」
ダークドリーム「カイゼリンという人と仲良くなりたい、仲良くしたい…
…そう、あなたは考えているのよね?」
エルレイン「……はい。
……ですが、わたくしは……」
ダークドリーム「……いいと思うわ、別に。」
エルレイン「え?」
ダークドリーム「仲良くしたい、友達になりたいならなればいい。
その気持ちがエルレインの正直な気持ちならそうすべきよ。」
エルレイン「ですが…」
ダークドリーム「私は一度死んだ。
生まれて初めてできた友達の目の前で。」
エルレイン「!?」
ダークドリーム「……死んだあの時に思ったことは…
一言で言い表せないほど色々あったけど…
…その子ともう少しだけ話をしてみたかった。
…そんなこと、考えてた。」
エルレイン「……」
ダークドリーム「……たまたま復活できて今はその子とも無事にまた会えたけど…
…本来なら私、あの時に終わってたのよ。
今ここにいるのはホント、運が良かった……それだけ。」
エルレイン「……」
ダークドリーム「エルレイン、私たちはたまたま運が良かったから今ここに居る。
……けど、誰にもこんなこと習ってないけどなんとなくわかる。
『次』はない……ないのよ。」
エルレイン「……」
ダークドリーム「だから……上手く言えないけど…
…そうしたいなら、そうしなきゃ。そうした方がいい。
……せっかく来るはずのなかったチャンスが来たんだもの。
無駄にしない方がいいわ。」
エルレイン「……ですが…
わたくしは本物のエルレインではないのですよ…?」
ダークドリーム「本物も偽物も関係ない。
大事なのは……ここにある、あなたの気持ち。」
【ダークドリーム、エルレインの胸元を指さす】
ダークドリーム「私達は偽物だけど……心はある。
それは紛れもない本物。」
エルレイン「……リム……」
ダークドリーム「……ウジウジ悩む前にその心にある気持ちを
カイゼリンとやらに正直に言ったら?
……ダメだった時はまぁ……その時はその時、よ。
……『骨は拾ってあげる』。これはまだ習ったばかりだけど…
…多分できると思うから、私。」
エルレイン「……………………………」
ダークドリーム「…………………………………」
エルレイン「……………………ありがとうございます……リム。
あなたのおかげで……少し、勇気が持てた気がします……」
ダークドリーム「………………………………………そう。
……お礼がしたいなら後で何か奢ってもらってもいいかしら?」
エルレイン「…………ふふっ、すみません。それはしばらくの間は無理です。
リムは相当な大食い、とあまねから聞きおよんでおりますから。
貯蓄のないわたくしにはリムを満足させられる程に
何かを奢ることは到底出来ません♪
……次の給料日までお待ちください、ね♪」
ダークドリーム「……あまね……」
【見守っていたあまねを睨むダークドリーム】
あまね「~♪(口笛)」←【そっぽを向く】
拓海(すまん、リム……こればかりは擁護できない……
お前にうかつに『奢る』なんて言ったが最後……
財布が死ぬ、ってのは事実だからな……)
……
~後日・その辺の公園~
【カイゼリンに事情を話すエルレイン】
エルレイン「……先程お話した通り、わたくしは…
本物のエルレインではありません……」
カイゼリン「……」
エルレイン「それでも……あなたさえよろしければ…その……
わたくしの…友達に…なって欲しいのです…!!
よ、よろしくお願い……いたします……!」
【エルレイン、カイゼリンに手を差し出して握手を求める】
カイゼリン「……にわかに信じがたい…いや、
正直……驚きのあまり理解が追いつかない……」
エルレイン「……っ…」
カイゼリン「……が………これが………答えだ。」
ぎゅ…!【エルレインの手を握り、握手するカイゼリン】
エルレイン「……っ!!」
カイゼリン「私なんかでよければ………
その…………………………………………喜んで………(照れ)」
エルレイン「……カイゼリン…………
………………………はい……♪」
……
【離れた場所から二人を見守る拓海&あまね&ダークドリーム】
拓海「一件落着…だな。」
あまね「ああ。」
ダークドリーム「みたいね。
……さて、私はこの辺でおいとまさせてもらうわ。
なごみ亭のディナータイムのシフトが入っているから、ね。」
【ダークドリーム、帰る】
拓海「……俺達も、おいとまするか。」
あまね「ああ。」
拓海「ところで菓彩……」
あまね「なんだ?」
拓海「……お前はいつになったら『本当の菓彩あまね』に戻るんだ?
いつまで…『悪魔じみたトラブルメーカー』なんて
到底似合わないモノを演じ続けるつもりなんだ?」
あまね「……そういう君はいつになったら
ゆいに自身の気持ちを正直に伝える気になるんだ?」
拓海「……」
あまね「……」
拓海「……この話はやめよう。平行線だ。」
【拓海、『やれやれ』と言わんばかりに肩をすくめる】
あまね「……そうだな。ハッピーエンドに水を差しかねん。
…ダークドリームへのお礼の品を買いに行こう。
付き合ってくれ、品田。」
拓海「ああ。」