偉大なる王の休日

偉大なる王の休日


彼女と初めて会ったのは2年前のジャパンカップ。巷では樫の女王なんて呼ばれてるけど、いざ会ってみると想像と違いすぎて拍子抜けした

もっと白毛のアイツみたいな気が強いヤツなのかと思ってたけど実際は、食べることが好きでおっとりしてて…普段の姿とレースでの気迫溢れる走りが結びつかずに困惑した覚えがある。

今思うとその時に惚れたのかもしれない

気持ちを自覚するまでそう時間はかからなかった 。ドバイで勝った時、勢いで告白して二つ返事でOKされたのは驚いたっけな…付き合ったはいいが、あまりにも他の牡(おとこ)と対応が変わらなさすぎて俺ら本当に恋人なのかって戸惑ったことも今となっては良い思い出だ

最初は手を繋ぐことすら緊張したけどデートを重ねてすっかり慣れたのか、こうして膝の上で眠るように…ん?


「あのー、レーベンさん?そこ俺の膝の上なんすけど…」

「ん〜…もう食べれないよぉ…むにゃ」

一緒にレースを観ながらソファに腰掛けていた筈の愛しの彼女はよだれを垂らしながら夢の中だった。いや寝るの早くね?まだ真昼だぞ?昼飯食ったばっかだぞ!?


「おーい起きろレーベン 食った後すぐ寝るとまた+32だぞ」

軽く頬を叩いたりひっぱってみるが起きる気配が無い 頬は餅みたいに柔らかかった。

また体重増えてんなコレ

「えくれあ…ぶっしゅどのえりゅ…」

駄目だ全く聞いちゃいねぇ…雑に扱う訳にもいかず頭を悩ませる


このままだと俺が色々と限界で持ちそうにないので、なんとかして起こさなければならない

何か良い起こし方は…ある。定番のヤツが。

やっていいよな?恋人だしな?

睫毛なげぇ…相変わらず可愛い顔してんな

意を決して顔を近づけ唇を重ねる 


柔らかな感触と共に甘い菓子の味がした。…そういや菓子の女王とか言われてた事あったな 


なんてくだらない事を考えている間に姫君はまるで魔法が解けたかのように目を覚ました。


「ん…あれ、あたし寝ちゃってた?起こしてくれたの?シャフ君ありがと〜…」

「言ったそばから寝ようとすんなよ!」

慌てて肩を掴み隣に座らせる


「なんかね?口にやらかい物があたったような気が、し…」

自身の身に起きた事に気づいたのか、顔が林檎のように赤くなる

「…わ、わ!シャフ君、いま もしかして…!」

「お目覚めですか?眠り姫」

悪戯っぽく笑い彼女の唇に指をあてる


「眠り姫を目覚めさせるにはコレしかないだろ」

「でも、そんな急に、その、普通に起こしてよ!」

彼女の反応を見てると何故かこちらも顔が熱くなってきた…こうなったら開き直るしかない

「そんな怒るなよ 何やっても起きないんだから仕方ないだろ?」


「飲み物取ってくるわ」 なんとか誤魔化そうとキッチンへ向かおうと立ち上がった、その時

「…起きてる時にしてほしかったな」

背後から小さく呟く声がした。

ま〜たコイツは爆弾発言を…どこで覚えてくるんだ一体 

仕方ない 望みを叶えてやりますか

足を止め、きょとんとした顔に向き直り──


「なあ、もう1回しようぜ」

「…うん!」


ランプの魔人にはなれないけど、愛しいわがまま姫の願いならなんだって叶えてやろう

偉大なる王に不可能は無いのだから。


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