俺くんVS稲生(決勝戦)
稲生・紅衣・メメ・虎屋のスレ主─特設闘技場─
「来たか!さあさあ五番隊の実力を見せてもらおうかのう!」
「毎度のことながら妙にテンション高いですね...先達の胸を借りて戦えることに感謝でもしときますよ」
現状特筆して何かを仕込んでいる様には見えない稲生と気が抜けているようで相手から目を離さない俺くんが闘技場に揃った
開始の合図が鳴る この大会では最後の試合であり決勝戦である
俺くんは斬魄刀を抜き様子を見るが稲生はまだ刀に手すら付けていない
「宣言するぞ 『吾はここより一歩も動かぬ』 歩を進めぬのならお主がいくら罠を敷こうと意味をなさんじゃろう」
「...いきなりサボり宣言ですか 判定勝ちなんてルールは無かったはずですよ」
「無論時間切れなど狙う気はないぞ ここは滅却師らしく戦うのも一興じゃ...まあ吾は『滅却師の誇り』とかは持っておらんがな」
稲生は右手に被せていた人工の皮膚を引っぺがし白い手袋である『散霊手套』を晒す
稲生が霊子兵装を形作るとそれは稲生の体躯など全く考慮していないような重機関となった
「もたもたしておると削り取ってしまうぞ!」
「確かにそれなら手っ取り早くやるべきか...
パンと手を叩きまるで手品のように斬魄刀を消す 少しでも身じろげば狩人の罠が犇めく戦場の出来上がりである
言葉とは真逆に無意味な策を取る俺くんに稲生も怪訝な表情を見せたがそれも束の間
「動かないというのなら無理やり動かしてあげますよ」
「ええい!テコでもタコでも動く気はないぞ吾はー!」
空手で稲生へ向かう俺くん 放たれた霊子の矢は重機関銃を模しているだけあって大量だ...足を止めてどうこうするのは厳しいだろう
「「縛道の三十・嘴突三閃」」
俺くんが縛道による拘束を狙うが開いている手で稲生が同じ縛道を放ち絡めとらせて地へと固定した
白打へと転ずるにしても拘束なり攻撃なりで隙を作らねば稲生に近づくのも一苦労だ
「破道の三十一・赤火砲!」 「縛道の三十九・円閘扇!」
詠唱破棄をした破道では片手間とはいえ縛道がある以上有効打にはなり得ない
「どうしたのじゃ 始解では埒はこじ開けられんと既に分かっておろうに」
「......それじゃあこじ開けさせてもらいますね『埒』」
卍解により俺くんに後光が射し光によって俺くんに影が満ちる
「正直ソレめちゃくちゃ眩しいのじゃが!」
「老眼のせいなんじゃないですか?」
「いや左目は一度取り換えとるが差異は無いぞ」
「目玉をコンタクトかなにかだと思ってます?」
どこぞのフルフルニィ一族のように目玉を取り換える稲生はさておき既に戦いは佳境である
勝負を決するのは光のような一撃かはたまた...俺くんはその足を稲生の方へと踏み込んだ
稲生の周りには設計が狂いそれぞれが生きたまま繋がった鴉たちが一度に発生した
虚としての性質を含んだ霊圧から生まれたためか超速再生により初めから無い部品を再生しようと更にあべこべに改造(なお)っていく
例え攻撃の途中で気づこうとも一度入れば生きたままに腐る者共から抜け出せない
「『入っていたら』不味かったですね...思ってた以上にコワイ技ですね 稲生五席」
「随分と無茶をしたのう...『罠』にかけたのか自分自身を あれほど速度を出して無理やり止めたのなら手足ごと引きちぎれかねんじゃろうに」
俺くんの体からは引き裂かれ血が肌に滲み 片腕は肩が外れて項垂れ落ち 足は跛行して歩く始末だ
「そっちに入った方が悲惨でしょ 無防備に突っ込んだらもみくちゃに押しつぶされて骨まで砕かれちゃいますよ というか自分で出られるんですか」
「出るには出られるがのう...破芒陣(しゅぷれんがー)」
あらかじめ描いておいた陣を用いて自分ごと鴉たちを焼き切る稲生
「本当なら藻掻いておる所で発動してお主を焼いてやろうとしておったのじゃがな」
「...本当に突っ込まなくて良かった」
とはいえ自傷により稲生はもうボロボロであり鴉と霊子兵装の連射で霊圧もすっからかんである
対して俺くんは怪我はあるもののまだ戦闘は可能だ...よって
「降参じゃ 強くなったのう...五席としても鼻が高いわ」
「あなたは十三番隊の五席で五番隊じゃないですー まあでも誉め言葉はそのまま受け取っておきますよ」
決勝戦は互いに罠と化かし合いによって勝負を決した この後俺くんは写す価値無しになるのはまだ未来の話である