保健室にて (失敗)
(略)
「ワタシの姿に焦がれているオマエならば容易いことだろう!さあ、理性《ロゴス》を焼き払い、衝動《パトス》を解き放て!」
「は、はい!がんばります!
っ……よいしょぉーっっ!」
ああもう、こんなに激励されたらやるしかない!
腹を括り、標的の柵を思い切り蹴飛ば─────そうとしたものの、目測を誤ったのか思い切り空振ってしまった。
「わああぁっ!?」
「おっと、無事か?」
「へ、……っ……!?!?」
そのまま後ろへ倒れ込みそうなところをギムレットさんが抱きとめてくれたらしい。お礼を言うべきなのはわかっているけど、それ以上に思考が追いつかない。
(わ、私、今ギムレットさんに後ろから抱き締められて……っ!?)
「ン?どうした?やけに鼓動が早いが……クク、頬もオマエの名の通りに色付いている」
「ひぇ、ぁ、はう…………」
背後から伸びてきた綺麗な手により、顔をそちらの方とゆっくり、しかし強制的に向けさせられる。指の腹で私のほっぺを撫でる彼女は鼻歌でも歌い出しそうなくらいに愉しそうだが、私の方はもう勘弁して欲しい、と許しを乞いたくなるくらいに動揺している。
ああ、多分今の私は苺くらい真っ赤なんだろうな……チーク要らずじゃん……とかくだらないことに意識を逸らし、現実逃避を図る始末だ。
「オマエはこの筋書《シナリオ》を望まないか?」
「……え、」
生殺しのような状況の中、不意に聞こえたギムレットさんの発言に反応しようとしたその瞬間。恐ろしく端正な顔が、鼻先が触れ合う程の距離へと近づいていた。
「……………っ〜〜!!そ、そういうのはもっと仲良くなってから、でっ……!?」
「うわっ!?どうしたの!?なんか魘されてたけど……大丈夫?」
「………え?トレーナーさん……?……………あ、そっか、私夢で………ぁあ〜!!最低だぁっ……!」
「え、本当にどうしたの!?」
ベリーベリーミルクは悪い夢を見たのか、あまり休めなかったようだ……