〇位決定戦
「ねえウタ、そろそろ教えなさいよ」
「え?何を?」
「一味の中で、誰が好きか♡」
「誰がす……すっ……!?
そ、そんなの!!そんなの、そんなの……
る、る……」
「あはは、顔真っ赤にしちゃってカワイイんだから」
「ゔー…………」
「はいはい、1番は聞くまでもなかったわよね。
じゃあ、2番目ならどう?2番目に好きな人」
「2番目?」
「そ、2番目。別にそういう意味の好きだけじゃなくていいのよ?じゃないとあたしとロビンが不利じゃない」
「うーん、2番目かぁ……2番目……
いざそうやって聞かれると答えづらいなぁ……
でも、まずはナミかな」
「あたし?」
「うん。人形だった時も私よく"ケガ"してたけど、その度に大体ナミが治してくれたでしょ?
それに今もこうやってよくお話してくれるし、優しいからナミのことも好きだよ」
「ウタ……」
「それにこうやって……」ギュッ
「きゃっ!う、ウタ?」
「……あー、あったかい。やっぱりナミにくっつくと落ち着くなぁ……」
「あんた……もう、ほんっとカワイイんだからーこのこのー♡」ウリウリ
「わっ、ちょ、くすぐったいよ…!」
「それじゃ、あたしが2番目ってことでいいのかしら?」
「うーん……」
「……即決というわけではなさそうね」ガクッ
「ウソップもいいなぁ、いつも優しくしてくれたし。
ナミがいない時はウソップが治してくれたし、私がちょっとでも戦えるようにしてくれたのもウソップだしね」
「ウタヒメ星だっけ?今考えると相当無茶なことしてたわね」
「あはは……あれ実は結構楽しかったんだけどね。ウソップが本気で謝ってくるからあんまり下手なことは言わないけど。
それに、ウソップの冒険話も聞いてて楽しかったし……」
「ほとんどホラ話だけどね……言われてみれば、あんたウソップともよく一緒にいた気がするわね」
「えっ!?あれホラなの!?」
「ウソでしょ!?」
「それからサンジもかな〜。
ご飯が美味しいのはもちろんだし、戻ったばっかりで私が上手く食べられなかった時もちゃんと考えて作ってくれてたし。
バラティエだったっけ?あそこにもまた行きたいなぁ。あそこの料理も食べてみたいよ」
「みんな驚くでしょうね〜、ルフィが連れてた人形がまさかこんな女の子だったなんて」
「それにやっぱり優しいし。特に女の子には優しいよね。
人形だった時も私のこと女の子として扱ってくれてたし、あれもすっごく嬉しかったなぁ」
「サンジくんの女好きには感服するわね。本当は見抜いてたんじゃないかしら?なんてね」
「……ビッグマムのところじゃあんなこと言われたけど……」
「あー……あれはまあ、許せるならアンタは許してあげなさい。許さないのはあたしだけで十分よ」
「それからブルック」
「やっぱり音楽家は外せない?」
「うん、それもあるし……
歌えなくて落ち込んでた私が、それでも歌を好きでいられたの、ブルックのおかげだと思うんだ。踊りとか、楽器とか、色々教えてくれて」
「気がついたらアンタ用のちっちゃい楽器どんどん増えてたもんね。あれもウソップが作ってたんでしょ?」
「うん。ブルックがウソップに頼んで、ウソップが作って、ブルックに教えてもらって。
全部、私の宝物だよ」
「……そ。じゃあ大切にしないとね」
「もちろん。それから……」
「それから?」
「……ううん、これはやっぱりいいや」
「えー、教えなさいよー!」
「教えなーい!」
(……ブルックだけは私がただの人形じゃないことに気がついてたけど……その話はいいかな)
「でもロビンも捨て難いな〜」
「ロビンも可愛がってたものね〜、ああ見えて可愛いもの大好きだし」
「うん、結構好きなものが似てる気がするんだよね。
それに知的なお姉さんって素敵だよね、憧れちゃうなぁ」
「時々難し過ぎてよく分かんないこと言い出すけどね」
「アラバスタで初めて会った時は酷いこともされたけど……」
「あー……その話するとホントに泣きそうな顔しながら謝り続けるようになっちゃうから……
アンタがいいならできるだけ触れないであげて……」
「大丈夫だよ、私はもう気にしてないし。
でもだからかな?人間に戻ってからも何か若干過保護な気がするの」
「十中八九そうね」
「チョッパーも……」
「アンタもうこのまま全員言うつもりでしょ」
「しょうがないじゃん、みんな大好きなんだから」
「はは……ま、そりゃそうよね。いいわ、それでチョッパーはどこが好きなの?」
「何というか、可愛いの」
「可愛い?」
「人形の時も戻ってからも、精一杯お兄ちゃんぶろうとしてるところが」
「あー……分かる」
「まあ、実際お兄ちゃんみたいだと思ってるんだけどね。私まだよくぶつけてケガしちゃうから、その度に治療してもらってるしね」
「気をつけなさいよ?だいぶマシになったとはいえ、アンタまだ人形時代の感覚残ってそうだから」
「後はゾロかな」
「へー、ゾロも。意外ね、アンタだいぶ迷惑かけられてたと思うけど」
「うん。何か分かんないけどいつの間にかゾロの誘導係みたいになってたし。
一度一緒にいた時に、迷子になって行く過程に巻き込まれたんだけど……あーだめだ思い出したくない怖い」
「他者に恐怖を与える迷子って……もう現代の理屈じゃ説明できなさそうね」
「でもゾロもああ見えて優しいんだよ?眠れなかった人形の時もそうだし、今でも時々眠れなくなるんだけど……
そういう時、いっつもゾロが相手してくれてたんだ。人形の時は話を聞いてるだけだったけど、今はもう普通にお話もできるしね」
「へ〜……ちょっと意外。どんな話してたの?」
「それは……ヒミツ」
「えー、何よそれ。もしかしてアンタって、あたし達が知らないみんなの秘密結構知ってたりする?」
「さー、どうかな?例えばナミのへそくりの場所なんかも……」
「ウタ?」
「ウソです知らないですごめんなさい怒らないで」
(念のため変えとくか……)
「ジンベエはどうなの?」
「ジンベエ親分かぁ……正直、まだあんまりよくわかってないんだ」
「あー……まだちゃんと仲間になったばっかりだもんね」
「うん。でも、あの頂上戦争のあと、命懸けでルフィのこと助けてくれたし、そのあと折れそうになったルフィを支えてくれたのもジンベエだし……
そういう意味だと、私にとっても恩人かな。ルフィがあのまま立ち上がれなかったら、私も元に戻れてないしね」
「そうねぇ……すっごく強いし、いざという時はルフィのストッパーにもなってくれるし、ほんと頼もしい限りだわ。
変なところこだわるし、偶にちょっと抜けてるけどね」
「そこもいいところだと思うな、親しみやすくなって」
「間違いないわ」
「あと抱きつくとひんやりしてて気持ちいい」
「そこ気にするのはアンタぐらいよ……」
「あとは……フランキー……」
「……何か複雑そうね」
「そ、そんなことないよ!フランキーだって面白いし、頼もしいしアニキだし好きだよ!
……でも……」
「諸々の改造未遂、その罪は重そうね」
「それは……まあ……
ロケット付けられて海に落とされたのは正直普通にトラウマだし……ああ怖かった……」
「そりゃ怖いわ。怖かったで済ませるアンタも大したもんよ」
「でも、大事な仲間なのには変わりないし。頑張って仲良くなってみるよ」
「そ、頑張んなさい。何か手伝えるならあたしも手伝ってあげるから。フランキーもロビンに負けないぐらい後悔してたしね」
「結局全員言っちゃったわね」
「みんな大好きだし」
「はぁ〜あ、こりゃ2位決定戦は無効試合だわ。ま、それはそれで嬉しいけどね。
…………で」
「え?」
「まだ肝心なこと聞いてないじゃない。1位よ1位」
「い、1位って、何を……?」
「あたしから言った方がいい?」ニヤ
「そ、それは……その……」
「ふふっ、冗談よ冗談。そんな野暮なことしないったら」
「ほっ」
「でもまあ……また気が向いたら聞かせてよ。ウタから見たルフィの話」
「……うん!」
後日、いざウタのルフィ観を聞いてみると、
想像をはるかに超える熱量をぶつけられて少し倒れそうになったナミがいたとかいなかったとか。