仮面ライダー ニカ1-2

仮面ライダー ニカ1-2



 森の中を駆け抜ける影が二つ。後ろから追いかける形になっている男は静止の声を、ほとんど叫ぶようにかけていた。前を行く男は、そんなこと気にも留めずふらふらあっちに行ったりこっちに行ったり。あまりにも自由に動き回る。


「止まれ!! そこの麦藁帽子!! 止まれ!!」

「なんかちげーんだよな~。あ! こっちか? やっぱちげェ~。 お! こっちは! う~ん?」


 この追いかけっこは、かれこれ五分は続いていた。どちらも大した健脚である。そして肺が強い。


 男たちが動き回るのに合わせて、無造作に伸びていた草が払われ枝が折れていく。まるで速攻で作るけもの道であった。


 だがやがて前を走る男は、ぴっと動きを止める。一か百しかないらしい。


「やっぱそうか。うん」

「ハァッハァッ、アアッやっと止まりやがったなこのサル!!」

「ん? お前誰だ?」


 ずっと追いかけていたのに、気が付かれてさえいなかった。後ろを走っていたローに衝撃が走る。そうしているうちにも自由な男───ルフィはあっちにふらふらそっちにうろうろ。ローがそんな男を追いかけていた理由は、ただ生き残るために手を組みたかったからのハズだった。だが追いかけているうちにこの男を放っておいて大丈夫なのかと不安になり・・・・・・もはやおせっかいで、怪我でもしやしないかと追いかけていた。ローは医者なのだ。


「ふーーーっ、おれの名前はトラファルガー・ロー」

「おれァルフィ! よろしくな!」

「あァよろしく・・・・・・。早速で悪いが、おれと手を組まないか」

「手ェ?」

「繋ごうと言ったわけじゃない、離せ」


 元気ばかりが有り余るルフィとの会話に疲労を感じながら、ローは一会話一ドジよりはマシだと脳内で唱え続けた。


「サバイバルと言っていただろう、それにあの化け物。このゲームはおそらく命懸けだ。なんでも願いが叶う代償ということだろう」

「あァおれ、このゲーム降りる。だから手ェ組むのはナシな!」

「はァ!?」


 言うや否や、男は垂直飛びで上方にあった木に掴まり体を捩る。何度か揺らして勢いをつけると───ローの背後にいたジャマトを落下の勢いを込めて蹴り飛ばした。


「! いつの間に」

「おれよ、誰かに願いを叶えられるなんてゴメンなんだ」


 被っていた麦わら帽子についた埃を払いながら、ルフィはローに、いや、どこかで聞いているかもしれない誰かにこう言った。


「誰かに叶えてもらって喜べるネガイなんて、そんなのただの我儘だろ」


「ただまァ今は、こいつらブッ飛ばすか!!」


 呆然と言葉を聞いていたローは、その言葉に周囲の様子を確認する。たしかに、複数体のジャマトが近づいてきていた。




-*-*-


 野生児のようなルフィは難なく迫りくるジャマトをいなしていたが、追いかけっこによる疲労がたまっているローは次第に限界が近づいてきていた。そこに一つの影が、近づいてくる。


「退け!!」


 大きく振りかぶられる手、その先端には、鋭利な爪の様なものがついていた。


 ルフィとローの周囲にいたジャマトを一閃で薙ぎ払った何者かは、ジャマトが起き上がってくる隙を狙って一度変身を解く。そしてくるりと振り返ったのは、集められた場所でルフィに落とされかけたあの男だった。


「貴様らもそのベルトを使って変身しろ! 死にたいのか!」

「「変身!?」」


 ルフィとローの目がキランと輝く。そして男はもう一度ジャマトに向き直り、二人に変身方法を教えるようにベルトに手を伸ばし───


「変身!!」


「変身したー!!!」

「まさかジェルマ66!? いや形態が全く異なる、しかし影響を受けたような変身ポーズに変身後の初動・・・・・・おいお前話を詳しく聞かせろ!!まさかジェルマの作った新しい改造人間か!?」

「なぜやり方を見せたのに変身しないんだ貴様ら!! いいから戦え!!」

「いいぞ!」


 恐竜のようなマスクに装備し戦う男を前に興奮するルフィと早口で何かまくしたてるロー。しかし戦えと言われたルフィはすぐに表情を切り替え、それが当たり前と言わんばかりに帽子の中から二つの箱を取り出し、一つをローに投げ渡した。


 慌ててキャッチしたローは、まさかこれを使ったらジェルマに改造されるわけじゃねェだろうなといぶかりつつも、恐る恐る箱を開ける。その顔の横を、鋭い爪が背後まで迫っていたジャマトを狙って突き刺した。こうなったらもう、背に腹はかられない。


「いくぞ!」

「おう!」

「「変身!!」」


仮面ライダー ニカ

仮面ライダー パンセラ


 二人の仮面ライダーが、新たに誕生した。


 ルフィが持っていた箱に入っていたのは、近接戦闘特化、殴って殴って殴りまくるモンスターバックル。どうも彼のスタイルに合っていたようで、そのこぶしで次々にジャマトを消滅させていく。


 そしてローが渡されたのはマグナム。その名の通りハンドガンの見た目をしていて、遠距離からの攻撃に向いている・・・・・・と思いきや、接近戦でも敵の攻撃をいなすことに使える便利な武器であった。


「使い方は勘でわかるな?」


 恐竜のマスクがそう問いかける。二人はそろって頷き、ベルトに手をかけた。


『BULLET CHARGE』

「いっくぞー!!」


 ローのマグナムから発射された銃弾で、ルフィの拳でジャマトは宙を舞う。


 二人はジャマトの爆散する爆風を背に、こつんと拳を合わせた。




「いやー助かったよザウルス!」

「もしかしてそれはおれのことか? ・・・・・・自己紹介がまだだったな、おれの名はドレーク」

「そーか! ドレザウルス!」

「まァ、好きに呼んでくれて構わない」

「怒れよそこは」


 急場をしのいだことによって落ち着いた三人は、とりあえず敵のこなそうなところに移ろうと足を進めていた。


 ローは少し、このドレークという男を訝しんでいた。何故初めから変身方法を知っていたのか。そして何故、追いかけっこのせいで開始位置より離れた自分たちの前に現れることができたのか───変身の感動で意識していなかったが、考えてみれば、ドレークは怪しい男だった。


 だが、ローが話を切り出す前にまたどこからかステラの声が聞こえてくる。



『第一回、サバイバルゲーム終了です!』

『みなさん、お疲れ様でした!』






 また一瞬の浮遊感。

 気がつけば、そこは森ではなく集められていた場所───空中のステージだった。


「うォっ!?」


 ローが声のした方を見れば、またドレークがステージから落ちそうになっている。彼は不幸な星のもとにでも生まれたのだろうか。しかしこれで、聞きたいことが聞けなくなってしまった。


 周囲を見れば、再びこのステージに立っているのは───十一人。随分と、減ってしまっている。


「クソッ!!」

「おい、バカ助・・・・・・仕方なかったって、あいつら守ろうとしたのに勝手に・・・・・・」

「守るべき市民みんなが守られてくれるわけじゃねェこたァ知ってる!!それも守ってこそ、警察なんだよ・・・・・・!!」

「でもよ・・・・・・」


 中心近くで床に拳を打ちつけているゾロと、そばで声をかけるボニー。その目の前に、ステラが立った。


「ゾロ様、ボニー様。あなた方はルール違反を犯しました。ですが心配はありません。次のゲームでハンデが科されるだけです!」

「はァ!? ルール違反!? ってかルールってなんだよ!! こいつはただ他のやつを守ろうと」

「このゲームは、サバイバルゲーム。全員で生き残るのは、ルール違反です。画策することもまた同様に」

「こンの!!」

「よせピンク髪、人殺しをさせるようなやつに言っても聞きゃしねェよ」

「バカ助・・・・・・あたしの名前はボニーだ。このマリモ頭」


 一悶着が終わり、ステラが参加者の前に戻っていく。全員の顔にしっかりと視線を合わせてから頷くと、一つ呼吸をし、また口を開いた。


「第一回サバイバルゲーム、生き残りはここにいる、十一人の皆様です!おめでとうございます!」


「それでは皆様、お休みになりたい方はラウンジへ! そうでない方は、次の、第二回でお会いしましょう!」


 その言葉に声をあげたのはキッドだ。


「おいテメェ! 願い叶えるっつったのはどうした!!」


 殴りかかるキッドを止めたのは、緑色の髪をオールバックにし、大きなサングラスを頭上に固定した派手な身なりの男だった。


「困るなァ仮面ライダーの坊主。運営に手を出すなんて、一発退場でもおかしくない・・・・・・願いを叶えるのは、ただ一人だ」

「! ゲームマスター! 出てきて良いのですか?」

「今回は生き残りが多すぎる。おれが直々にゲームを決めてやることにしたのさ」


 片手だけでキッドの拳を固定し、掴んだまま離さない男はニヤリと笑う。


「お前ら、ラウンジに来な。いいこと教えてやる。帰ったら、まァ・・・・・・死ぬ、かな?」


 休めると言ったのはどこにいったのか、デザイアグランプリは、まだまだ終わりそうにない。

Report Page