仙台SS(わりとてきとう)
(キャンプ場で)
一升瓶をあけ、夜風が持ってくる勢いと心持ちのままに飲み干していく。
彼、花崎一樹(はなさきいつき)は、キャンプ場から少し離れた場所で、幾分か気持ちよく月の光を浴びていた。
夏油様術師が持ち出したブートキャンプの一件により、彼はかなりのパワーアップを遂げた。そのせいか、なんだか不思議な高揚感に包まれる。
ここ数日の実力の具合はまさに絶好調そのものであった。
そんな彼が今、何をしようとしているのか、それは・・・
腕を切り落とし、適当な場所に投げ込む。
彼の腕は瞬間、森に轟く轟音と共に、爆散した。
煙が明けていく元彼の腕の周りの地面は、大人二人がのびのびと腰かけられるか、 といった具合の窪みへと形成された。
そう、お風呂である。
なぜ急にお風呂なのか。その理由は昨日のことである。
その日汗だくでトレーニングを終えた彼らを、夏油様術師は追加トレーニング
と称し、近くの滝で体を洗った。無論我々もだ。
ーもうあんなことはごめんだ。いくら初夏の満点の星輝くそんな季節であろうとも、寒いものは寒い。なんなら俺の術式を体を乾かす&暖まるために乱用されるのも、
いやいやというかそもそもー
とりとめのない愚痴を、酒の回った舌で空虚な空に呟く。
もう空っぽになった一升瓶を地面に叩きつけ、時に爪先を爆破し、なんとか外見上は天然風呂と呼べなくもないようななにかができた。
後はお湯だけ。だがそれが問題だった。どうお湯を持ってくるのか。
川までは微妙に遠いし、ちょびちょび入れていれば夜が明ける。開けずとも風呂にはいるような時間では絶対にないだろう。
思考を巡らせながら、キャンプ地へ戻ろうとしたそのときだった。
目の前に、小さいが確かに水の入っている窪みをみつけた。
ただのみずであればよくあることだっただろう。
だが、その水には、湯気が立ち上っていた。
彼はすぐに辺り一体の地面を爆発させた。爆発は連鎖し、どんどんとお湯は沸き上がっていく。間違いなく、ここには真なる温泉があった。
感動冷めやらぬままに、自らが作った風呂場まで、大事に水源をつなぐ。
後は開通させるだけ・・・その一歩手前で彼はいいことを思い付いた。
思い立ったが吉日。彼は足早にキャンプ場へと戻り、仲間の名前をよんだ。
「おーい、構築~!!」