本日一番のビッグニュース!!
「ん…」
朝になり目を覚ますと、まず最初に隣で寝ているルフィの姿を確認する、きちんと隣にいてくれる事に今日も安心する
次にルフィの胸に耳を当てて鼓動を確認する。どくん、どくんとルフィが生きている証を示すドラムはわたしに安心と幸福感を与える
そうしてルフィの鼓動を感じながら顔を眺めていると、しばらくしてルフィの目がパチりと開き、視線が合う
「おはよう、ルフィ」
「おう!おはようウタ!」
こうしてわたしたちの一日が始まった
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この島に上陸して、もう一週間になる
航海中に食べ物や物品が尽き、近くの島で補給しようというのがきっかけだった
上陸してなるべく人目を避ける様にし、次の出航の為に必要な物を集めていた。そんな最中、ふとルフィが足を止め町にある食事所を見つめていた
その視線の先には客であろう人物が食べているお肉料理があった
わたしがその様子を見ていた事に気づくと慌てて首を振り、なんでもないように先へと進もうとするが口元から出てたヨダレを私は見逃さない
「ねえルフィ」
「な、なんだよ
おれは肉なんて見てねェぞー」
ぴゅーぴゅーと吹けていない口笛とヘタな嘘に思わず笑ってしまった
「あはは、最近は魚ばっかりでお肉は食べれてなかったもんね」
船の上では基本的に魚を釣り上げて食べていたし、海の上ではお肉を得る手段はあまりないのだ
「な、なぁもういいだろ?
これ以上肉の話してると食いたくなっちまうよォ…」
ルフィにしては珍しくお肉を我慢している、逃亡中のためあまり悪目立ちしたくないという思いがあるのだろう
自分のせいでそんな事をさせてしまっている事実に罪悪感が湧く
「…いいよ、ルフィ
アンタじゃ目立っちゃうし、わたしが買ってきてあげる。待ち合わせはあんまり無いし多くは買えないけどね」
え!?とルフィが顔を輝かせる
「本当かウタ!?
いや、でもよ…お前も歌姫やってたから知ってるやつも多いし目立つだろ?」
「それでもルフィよりも穏便に済ませられるって」
アンタじゃお肉100個買うとか言ってすぐバレるし、と言うとルフィは図星を突かれた様でぐぎぎと呻く
「心配しなくても買い物するだけだって、終わったらすぐに戻ってくるし」
「…わかった、何かあればすぐに呼べよ」
この時、わたしは追われていた疲労とルフィの為に何かしてあげられるという幸福感で冷静な判断ができていなかった
「プリンセス・ウタですね?」
「え…?」
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「いやー、あの時はビックリしたよねー」
「ししし、あのオッサンが良いやつでよかったなー!」
〇〇と名乗った男は以前海軍に居た頃の私たちに命を助けられた事があるという
その恩返しとして私たちを匿ってくれるという事らしい
そう言われた時はまず警戒した
そうやって自分達を助けるフリをして海軍に売り飛ばそうとした輩は一人や二人ではない
そう思い、断って早々にこの島を出ようとルフィに相談してみると
『いーんじゃねェか?
あのオッサンがおれたちを売ろうとしてもぶっ飛ばせばいいしな!』
『でもルフィ!』
『それにウタ、お前休めてないだろ?
オッサンが海軍におれ達の事を言ったとしても近くの軍艦がこの島に来るまで数日はかかるだろうし、それまで体力を回復しとけって』
『!…もう!』
ずるい、昔からルフィはいつもこうだ
自分の事だけなら適当に決める事が多いのに、私の事になると真剣に考えて物事を決め出す
私としてもそれは嬉しいのだが、ルフィ自身の事も大切にしてほしい
ルフィがいない人生なら私は生きる意味も理由もないのだから
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このまま匿われている生活にも限界はある。そろそろここを経たなければならないのだが中々言い出せずにいる
〇〇さんは本当に私たちの味方をしている様で、この数日間海軍や海賊に私たちを売ろうとする様子など見受けられない
それどころか私たちが出航する為に必要な物を聞き、用意してくれてまでいる
しかも必要に迫られる時まではここに居てくれていいとまで言ってくれて、何から何までお世話になりっぱなしだ
「いつまでもここに居候するわけにもいかないよね…」
「そうだな、オッサンにも世話になったし、いつまでも迷惑はかけられねェ。
オッサンにも言って明日にはここを出よう」
「うん、何も恩返し出来ずにいるのは心苦しけど、ずっと居るのはダメだよね」
そう思い、出航の為の準備をする、食べ物以外の腐らないような物は既に船に積んである
荷物を纏めて、〇〇さんに出る事を伝えよう
そう思った時、外から叫び声が聞こえた
「海賊が来たぞォォォォ!!」
聞こえた瞬間、外に飛び出ようとするルフィの腕を掴む
「ウタ!!」
「ルフィの言いたい事もわかる
でもこのまま飛び出して行って私たちの存在がバレたら〇〇さんが匿ってくれた意味がないよ!」
「けどよ!!」
「大丈夫、私に作戦がある」
そう言い、まとめていた荷物の中からとある物を取り出し、ルフィに見せる
「!!それって」
「これを使えばきっと上手くいく
…一緒に行こう!ルフィ!」
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「もう海賊たちは近づいている、上陸するのも時間の問題だろう」
「…戦える人間はこの街には居ない、海軍も呼んだが来るまでに時間がかかりすぎる。
やっぱりあの二人に頼むしか…」
「それはしないと最初に決めただろう!?例えどんな事が起きようとあの二人の存在を隠して守り抜く、それがおれ達が命を救ってくれたあの人たちにできる恩返しだって!」
あの日の事を思い出す、商業船に乗っていたおれ達の船に、海賊たちが乗り込んできやがった
「積荷や食い物、酒や金を寄越せ
人はいらねェ、テメェら全員死んでいいぜ」
今まさに惨劇が起きようとした瞬間
おれはあの日、二つの太陽を見たんだ
「それはわかってる!!
わかっているけど…おれは、やっぱり家族やみんなの命も大事なんだよ…!」
コイツの言うこともわかる、例え命を救われた程の恩人相手だろうと、いざ自分や家族の命をかかっている状況だと藁にも縋りたくなるだろう
ましてや相手は海賊、奴らは命や財産だけでなく人の尊厳まで奪う事に躊躇しないクズ供だ
「…わかった、お前達だけでも逃げてあの人達にもここを離れる様に伝えてくれ
おれは戦う」
「戦うって、一人でか?!無理だ!!
殺されちまう!」
「それでも構わない、お前らやあの人達が少しでも逃げる時間を稼げるなら────」
「その必要はないよ」
「ああ、海賊が相手ならおれたちに任せろ」
声が届く
聞き間違える筈もない恩人達、その声に思わず振り向くと
「なぜなら私たち、ウタクイーンと!」
「おれはル「ゴムキング!」ゴムキングがいるからだ!!」
「「「「「ええええぇぇ〜〜〜〜!!!??」」」」」
そこには祭りなどで付けるような仮面を付けたウタとルフィの姿があった
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後日、世界経済新聞にとある一面が載ることになる
その内容はある者は歓喜し、ある者はあまりの喜びに涙を流し、またある者はこの一面自体に激怒した
その内容とは──────
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ルフィとウタの消息が掴めないままニ週間が経過し、世界では様々な推測がされた
もう既に二人は死んでいるのでは?
誰も分からない地図にも載っていない島に行き、そこで暮らしているのでは?
あるいはもう既に誰かに殺されており、それが公にされていないだけでは?
馬鹿馬鹿しい、とガープは思う
あの二人がそう簡単にくたばるものか
それはルフィとウタの成長を間近で見てきた祖父としての言葉か、あるいは生きていて欲しいという強がりか
そう思いながら海を見つめる、
あの海の先に二人が生きていると信じて
「ガープ中将ッ!ガープ中将ォォォ!」
しばらくそうしていると突如耳を突く様な絶叫が聞こえた
「なんじゃ!喧しい!
人が珍しくゆっくり海を眺めていたというのに!!」
「それどころじゃないんですよガープ中将〜〜ッ!とにかく新聞!これを見てください!!」
「全く騒々しいのぉ
今更新聞に何が載って…」
部下から渡された新聞に目を通すと、その一面に目を奪われた
「…く、ぶわっはっはっはっはっ!!!や、やりおったあやつら!!」
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その一面にはデカデカと
『謎のヒーロー、ゴムキングとウタクイーン!海賊達を倒す!』
という記事が写真とともに載っていた