今日はなんだか眠れない

今日はなんだか眠れない



「ふぁ〜あ……やっぱ夜の見張りは退屈だなぁ」


夜の海を行くサニー号。今の見張りはルフィとブルックだ。


「ヨホホホ、私は好きですけどね。風情があって……」


「ふぜーってのもよく分かんねーし……まあいいや、ちゃんとやろ」


その時、ギィ…と戸の開くような音がした。少し遅れて、芝生を踏む足音が聞こえる。


「ん?」


「…………」


「……ウタか?」


女子の寝室から出てきたのはウタだった。


当然普段なら眠っている時間だが……何やら様子がおかしい。黙って俯いたままだ。


「どうしたんだこんな時間に、今日の見張り当番はお前じゃ……」


「……ルフィ……!!」


ぷるぷると震えながら俯いていた顔を上げると、今にも泣き出しそうなウタの顔が見えた。



「……!? おいウタ!どうしたんだよ、何かあったのか!?」


慌てて駆け寄り肩を抱き寄せる。相変わらず震えたままだが、ほんの少し落ち着いたようにも感じた。


「……何もないよ、何もないの……けど……


……ごめん、ちょっと……ちょっとだけでいいから……一緒に寝てくれないかな……?」


「あ?一緒に?」


今にも消え入りそうな声で弱々しく懇願するウタ。先程まではギリギリで踏みとどまっていた涙も、既に溢れ始めていた。


「お、おいウタ……えーっと……」


「……ルフィさん、ウタさんに何があったのかは分かりませんが……


女性の頼みを無碍にしていては、男が廃るというものですよ」


「うーん……」


「何やってんのよアンタ達?」



ウタの後を追うようにナミが寝室から出てきた。


「あれ、ナミ?起きてたのか?」


「アンタ達が騒がしいから起きちゃったのよ。一体何を騒いでるの?」


「いや、ウタがこんなんなっちまってよ……」


「…………」


先程よりもがっしりとルフィにしがみつくウタ。最早巻き付いていると言っても過言ではない。


「あらら、そりゃ大変」


「えっと……どうすりゃいいんだナミ?」


「どうするも何も、アンタそんな状態のウタをほったらかしにすんの?少しぐらいお願い聞いてあげなさい。


見張りが心配なら代わってあげるわよ、ちょうど目も冴えてきたし」


「……ああ、わかった。ありがとな二人とも」



ウタを抱え上げて寝室へ向かうルフィ。ウタの表情は見えないが、幾分かは落ち着いたことだろう。


「……鈍い奴ね、相変わらず」


「ヨホホ、ルフィさん本人も戸惑っているのでしょう。


恐らくウタさんはまだ時間がかかります。ルフィさんだけでなく、我々皆んなで支えていってあげなければ。


それにしても、私はああいう時はてっきりナミさんのところに行くものだと思っていましたが」


「うーん、懐かれてた自信はあるんだけどね……


ま、やっぱりアイツには敵わないんじゃない?」


それは分かっている。一味の誰も敵うわけがない。


そんなことは分かっているんだが──ナミはほんの少しの寂しさを交えた表情を見せる。


そんなナミを気遣ってか。


「ヨホホホ、間違いないですね。どうでしょう、紅茶でも如何ですか?」


「あら、気が効くじゃない。そうね、お願いしようかしら」


夜中のティータイム。これもまたオツなものだ。

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