人助け

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スヨーダナ時空

ビーマとドゥフシャーサナを名乗る人物の話

「大変だビーマ様!魔獣が出た!」

「分かった、案内してくれ。すぐに向かう!」



少し前までこの世界は平和だった。

だがある日、巨大な肉塊のような怪物が現れた。

その怪物は人に襲いかかり、俺たちが向かう頃には沢山の人たちを殺してどこかに消えていた。

それ以来、怪物は唐突に現れて人を襲撃することを続けている。

そして怪物に影響されたのか魔獣の動きも活発化していた。



「……大丈夫そうだな?」

「そのようですね……」

呼ばれてやってきた村は少し家が壊れているところがあったが活気溢れる平和そうな村だった。

「なあちょっといいか?」

「はいなんでしょう……ビーマ様!?」

「そう畏まらなくていい。魔獣の救援要請が届いたから来たんだが、大丈夫だったのか?」

「ええ、親切な旅の人が助けてくれたんです」

「旅の人?」

「はい。ドゥフシャーサナと名乗る人です」

「……ドゥフシャーサナ?」


「ドゥフシャーサナお兄ちゃん本当に大丈夫?怪我はない?」

「おう大丈夫だ。あんなやつ相手に負けねえよ」

「そうなの?」

「そうだよ。だからほら気にするな。ガキは向こうで遊んでな」

「むう。パドミニーはガキじゃないもん。もうすぐお姉ちゃんになるんだから!」

「そうか。弟か妹か分かんねえが無事に生まれるといいな」

「うん!」

少女がフードを被った男と話していた。

「お前がこの村を助けてくれたやつか?」

「え?王子様!?」

「……」

「初めまして、俺はビーマ。この国の王子だ。お前がドゥフシャーサナでいいんだな?」

「……ああ、そうだ。初めまして、オウジサマ」



「わー凄い料理!」

「こんなに立派な料理を頂いていいのですか?」

「おう。あのまま魔獣を置いといたら、その血の臭いに釣られて違う魔獣がやってくるからな。燃やすか料理するかした方がいい。さあみんなで食べるとしようか!」

「ありがとうございます」

「いやいいさ。趣味みたいなものだしな」


「よう食ってるか?」

「……ああ」

「お?ちゃんと減ってるな。美味いか?」

「……美味いんじゃないかと思うぞ。いい匂いがするし」

「そうか美味いなら良かったぜ。……ありがとうな、この村を助けてくれて」

「別に礼なんて……」

「ここら辺は遠いからなかなか手が回りにくいところなんだ。あんな強い魔獣を倒せるやつなんてそうそういない。お前がいなかったらこの村の人たちは死んでいた。この国の王子として言わなきゃ気が済まない」

「そうか。……なら受け取っておく」

「そうしてくれ。ドゥフシャーサナはしばらくここにいるのか?」

「ああ。身内と合流するまではこの村にいるつもりだ」

「そうか。……なあお前はこの国にずっと居る気とかってあるか?最近怪物が出て人手不足でな。あの魔獣を倒せるお前なら即戦力になりそうなんだが……」

「悪いけど俺は他に仕事があるから手伝えない」

「そうか……残念だ。じゃあなドゥフシャーサナ。俺は今日はもう戻らなくちゃいけねえが、もしまた会ったらゆっくり話でもしようぜ」

「……時間があったらな」

ドゥフシャーサナとそんな話をして俺は村を去った。



「まあ俺が調べたところによると怪物の正体はほぼ間違いないでしょうが……。もう少しだけ待っていて貰えますか?」

「いいぜ。どれくらいかかりそうだ?」

「次の週が始まるまでには」

「おー、分かった」


「……やっぱり礼なんて言われる筋合い無かったな」



ドゥフシャーサナと出会って数日が経った。

あの怪物は未だ見つからず、魔獣の動きも活発化したままだ。

いつ領地に魔獣が現れるか分からない。今日も俺は見回りを続けていた。

「助けてくださいビーマ様!」

見覚えのある人物が俺に話しかけてこた。

「お前はあの村の……どうした?何かあったのか!?」

「む、村が大変なことに!」

「なに?どんな魔獣だ!ドゥフシャーサナはもう去ったのか!?」

「それが……」



「嫌だ、やめ」

「ひっ誰か助け」

「痛い、どうして……」

「やめて、お腹の子とこの子を殺さないで」

「……なんで、なの?ドゥフシャーサナお兄ちゃん」


「……無駄な時間を過ごした」



全速力で村に向かう。

血まみれのドゥフシャーサナと村人たちの死体がそこにあった。

いつも被っていたフードを脱いでドゥフシャーサナは俺に言った。

「遅かったな英雄」

「……ドゥフシャーサナ!」

フードの下にはまるでカリのような角があった。


「おい、コレは本当に……本当にお前がやったのか!?」

「ああ、逃げたやつがお前に言ったのか……そうだが?」

「なぜ……なぜだ!」

俺は思わず槍をドゥフシャーサナに向けて振るう。

ドゥフシャーサナはその槍を異形と化した左腕で弾いた。

「痛いな。でも本気じゃねえ。動揺しているのか?」

「うるせえ!なんでこんな事をした!お前はここの人たちを助けただろうが!?あの女の子のことだって可愛がっていた!」

「女の子?……パドミニーのことか。俺の妹に似た真面目で優しい子だったな……。あの子ならお前が来るすぐ前に殺したよ。もう少し早く来たら止められたのにな」

「ふざけるなよ……殺した理由を話せと言ってるんだ!お前はこんな」

「現行犯を説得しようとするなんて。こちらのアナタは優しいですねビーマ」

ドスッ

「は?」

腹部に激痛が走る。

腹を見ると剣が飛びてていた。

ドゥフシャーサナが俺の背後にいた人物に声をかける。

「ありがとうなヴィカルナ」

「どういたしまして。流石にこの人の相手は一人だとキツいですしね。あ、そうそうこの剣には毒が塗ってあるので。アナタは毒耐性無いんでしょう?早く手当てしないと死にますよビーマ」

剣が抜き取られて俺は倒れるように崩れ落ちた。



「悪いな。俺らも時間が無いから質問には答えられない」

「タイムリミットが迫ってまして。まあ俺らのことや君らが怪物と呼んでいる彼のことはクリシュナに聞いてください。彼は多分、全部分かってて黙っていると思うので」

「それじゃあまたな。……それとコレは個人的なことなんだけど。俺って何か食べても味を感じないんだよ。黙っててごめんなビーマ」

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