五条戦の日に宿儺の身支度を手伝う小僧の話一歩手前版

五条戦の日に宿儺の身支度を手伝う小僧の話一歩手前版

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■ここだけ宿儺から小僧への好感度が https://bbs.animanch.com/board/2589332/ で伏黒宿儺に掻っ攫われて手元に置かれて五条戦当日に身支度を整えるのを手伝わさせられる話のまだまだ心は折れてないけど限界が近いバージョンです


※該当スレの内容からちょくちょく良いですね……それ……となった箇所の要素をお借りしたりしています

※具体的に記載すると「虎杖が受肉宿儺の服を着させられている」「五条が獄門疆から解放後羂索の所飛んでった時に虎杖の奪還を試みる」「生中継で心が折れる(作中では折れる手前)」等の要素があります

※以上の事が大丈夫な方はどうぞ

※問題があれば消します


「小僧、手伝え」

鼓膜を揺らす断られる筈がない、と言わんばかりの声色の言葉に反吐が出そうだった。

冷たい床から体を起こす、気絶する前に受けただろう傷も痛みもない、きっとまた反転術式で直されたのだろう。

情け容赦なく嬲る癖に、それを長引かせるような事はあまりしない、そこにどんな意図があるのか俺には分からない。

分かるのはコイツがどうしようもなく邪悪な物だと言う事実だけだった。

だからこそ、もしも、視線で人が殺せるのであれば、きっと殺せるだろうと言う位の殺意を乗せて、その姿を見上げた。

何が可笑しいのか、ソイツはにやにやと楽し気にこちらを見下ろしている。

その体の本来の持ち主、伏黒だったら絶対にしないだろう表情に、怒りこそ湧くがその言葉に従おうなんて気持ちはほんの僅かも浮かばなかった。

「伏黒の身体、返せよ」

「返さん、この身体は俺の物だ、それより出掛けの支度を手伝え」

「違う、伏黒の身体だ、宿儺、お前のじゃない」

コイツの身体なんてもうどこにもない、大昔に死んで、指だけになっていたのに、コイツの物と言える身体なんてこの世界どこにもないのに他人の身体を我が物顔で使う姿に腹立たしくてたまらなかった。

なにより、そんな相手に手も足も出ない自分が嫌だった。

コイツを祓う術があるならば、その手段があるならば、俺は何だってするだろう、命だって投げ捨てたって良い。

「お前は本当に愚かで愛いな、小僧、よいよい、お前のその見当違いを正すのもまた楽しいものだ」

楽し気に笑う姿に思わず奥歯を噛みしめる、こちらの言葉など、聞くに値しないとばかりに、けれどそれを聞く事自体が譲歩してやっていると言いたげな姿勢が嫌いだった。

岩の上から飛び降りて、宿儺が目の前に着地する、手を伸ばせば届く位置にいて尚、いや、だからこそ、自分自身の力の無さが悔しい。

「兎も角、手伝え小僧、今日がどういう日か忘れた訳ではあるまい?」

「お前のせいで日付感覚があやふやなんだよ」

「12月24日だ」

「24日……五条先生との」

俺が待ちわびていた戦いの日だった。

先生なら、きっと宿儺に勝てる、そう信じている、あぁ、だったらさっさと送り出した方が良いだろう。

俺にもっと何かしらの知識があれば、コイツに戦いの不利になるような何か仕込みを出来たかもしれないが、生憎とそう言う方向の知識を身に着ける時間は無かった。

「疾く済ませて帰ってくる、小僧、お前はここで待っていろ」

当然のように告げられる言葉に従う義理は少しも無かった、俺がここに居る事で先生が不利になるとは全く思わないけれど、ただ単にこの場所に居たく無かった。

何が気に入ったのか分からないが、ここではそれなりの日数過ごしていた、ここの床の感触だって何かあれば転がされてそのまま気絶する事もあって慣れてしまっている。

だからこそ、離れたい。

正直、外に出て皆と合流できる確証は殆どないけれど、それでも、コイツとの記憶が濃い場所にいるよりはずっとましだった。

そう言う意味でも、コイツをさっさと送り出した方が良いのは事実だった、身支度を手伝えと言うのは気が進まないを通り越して嫌ではあるけれども。

「いつもみたく裏梅って奴に着せて貰えばいいだろ」

「お前がするから意味がある、駄々を捏ねてないでさっさとしろ」

「……はぁ、さっさと行ってさっさと負けてきてくれ、それで伏黒の身体を返せ」

手を伸ばす、正直コイツの身支度の手伝いなんかはした事もないけど、今着ている服とそんなに差はないだろう。

無理矢理着せられた服はどちらかと言うと和服に近いと言うか、俺の中に居た時の宿儺が着ているものと同じだった。

どうやって用意したのか、なんて事はどうでも良いが、他に服もないので嫌々ながら適当に来ていたら懇切丁寧に着付けを教え込まされたので、本当に不本意ながら、それを応用すればどうにか出来る筈である。

機嫌が酷くよさげな様子の宿儺を無視しながら、さっさとと服を着せていく。

白い和服の帯を解いて黒いインナー、白い和服の腕を通して、帯を結ぶ、黒い和服も同じように腕と通させて、はい、終わり。

「ほら、さっさと行って負けてこいよ」

「……小僧」

手を伸ばされて、反射的に身構えてしまう。

折檻、躾、そんな名目で受けた所業の記憶は簡単に消えるようなものではない、自分が情けなくなるが、怖い、と思う事もない訳じゃない。

それでも、前を向いていられるのは、皆が居るからだ。

「安心しろ、帰ったら構ってやるから大人しく待っていろ」

こちらをまるで宥めるように頬を撫でる手を弾き落とす、触れられたくない、殴られたり痛めつけられる方がまだマシだった。

人でなしの癖に、時折まるでこちらに情があるように振る舞うのが、気持ち悪い。

そんな俺が出来る目一杯の拒絶をまるで小動物がじゃれつくのを見るような目でこちらを見て来る事も、怒りよりも諦めのような気持ちで受け止める事鹿出来なかった。

「それほどまでに気になるなら、裏梅にお前が戦いの様子を観戦できるように整えさせるか」

「……は?」

「流石に俺もお前を庇いながら五条悟の相手をするのは骨が折れる、それに小僧、お前もあの男の死に様は見たいだろう?」

「…………五条先生はお前に負けたりしない」

そうだ、先生は宿儺になんか負けない、きっと勝つ、それを疑った事はない、俺が知って居る中で最強は誰かと言われれば間違いなく五条先生だ。

けれど、こちらを見る、宿儺の目にその視線に含まれる何かしらの意図に不安が無い訳ではない。

薄い氷の上に立たされているような感覚がする、少しでも不安を口にしたらそれが事実になってしまいそうで恐ろしかった。

吐き気がする位機嫌の良さそうな笑みがこちらに向けられている。

「あぁ、随分と良い顔をするようになったな、その瞬間が見れない事は惜しいが、何、時間ならばこれから幾らでもある、全て、みせてみろ、"悠仁"」


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