五暴星・シルヴェストリ
魔名:シルヴェストリ
異名・称号:有毒なる舌、有角公の智嚢、狩人の王、魔弾の支配者、銃と交渉のデーモン・ロード…等々
権能:外交・策略・銃
支配領域:混沌・悪・欺き・ルーン
領土:魔界・象牙色の迷宮内・沈黙の法廷
神聖視する武器:マスケット
神聖視する動物:鷹
神聖視する色:黒・緑
対応する惑星:土星
対応する星座:人馬宮 0~10°(夜間)
爵位:公爵にして総裁
邪印:蛇の舌が絡みついた羽根ペン
属するパンテオン:デーモン・ロード
『敵を殺すに武器など不要。知略と舌で事足りる。』
シルヴェストリ
魔神バフォミトラに仕えるデーモン・ロードたるシルヴェストリは、彼の直属の精鋭部隊「五暴星」の筆頭であり、癖の強い彼らの纏め役を担っている。また、"有毒なる舌"の異名でも知られる彼は、バフォミトラに仕える数あるデーモン達の中において最も古参である。
外交・策略・銃を司るシルヴェストリは、30のデーモン軍団を率いる偉大なる公爵にして総裁として知られ、彼は目に見える暴力と威迫ではなく、巧みな外交と慎重な策略を通じてバフォミトラの帝国に圧倒的な優位性を与え、必要最小限の抗争と犠牲によって"有角公"へと勝利を献上する比類なき策謀家としての側面も有する。
貴族間や宮廷内のルールやマナー、法律学や政治学に長け、弁舌にも優れた彼は取引、交渉、契約の達人でもあり、自分と結んだ契約内容とその真意を理解できない人々や、自身を出し抜くほどに己が賢いと考える愚かで傲慢な人々を餌食にしており、物質界全体で自身と主に有利な契約を頻繁に署名させている。
また、別の伝説によれば彼は銃を発明した最初の人物にして、それを用いて多くの人命を奪った初の人間であるとされており、その大罪ゆえに魔界へ堕とされたと言われているが、伝説の真偽のほどは不明である。
召喚されると彼は大鴉の翼とうねる蛇の舌を生やした、長身の美しいインキュバスとして姿を現すと言われ、愛用の黒の執事服に身を包んだ彼は冷静沈着かつ礼儀正しい態度で、召喚者との取引にテキパキと応じる。他のデーモンと異なり、彼は安易な暴力と脅迫に頼らぬため、その取引と契約自体は極めて容易かつスムーズであり、命懸けで交渉を行おうとした術者を拍子抜けさせてしまう。だが、彼との取引や契約を結び終えた術者は、ふと気付く……交渉時や契約の取り纏めの際には、読んで理解出来たはずの文字や文章が、何故か解読できなくなっていたり、定命の肉眼では絶対に見ることができない霊的な一文が契約書の隅に隠されていたり、取引の裏をかいて踏み倒したはずの契約書が、何故か完璧な保存状態で自身の机に置かれている……等々、どう足掻いても既に自身が「積み」の状態に置かれているという最悪の事実に・・・・・・。
また、バフォミトラの従者としてではなく、独立した一柱のデーモン・ロードとして顕現する場合、シルヴェストリは4体の強力な上級デーモンを従えた、高貴なる狩人の姿で出現するとされ、その手には彼が鋳造した恐るべき魔銃「ニムロド」が絶えず握られている。
だが、彼が愛用の銃以上に最も得意とし、かつ何よりも信頼している最大の武器はその「舌」である。魔界で最も優れた交渉人にして、外交員の一人として知られるシルヴェストリの舌から発せられる言葉の数々は、如何なる名剣よりも遥かに鋭く、相手の肉と心と魂を容易に傷つけ、容赦なく抉る。民間伝承によると、彼との舌戦を挑んだ賢者や論者の悉くは、悪意に満ちた彼の言葉を浴びて憤死したばかりか、その霊魂をも盗み取られたと言われており、この様な犠牲者達の亡霊は今も尚、奴隷として彼に奉仕し続けているという。
◇「愚者」と銃
彼の起源は遥か古の神話時代に遡る。旧き神々とその被造物たる人型種族との間に深刻な亀裂が生じ、物質界に罪と悪が悪疫の様に流行り始めた「錆の時代」において、独裁的な恐怖政治を敷いた恐るべき帝国が存在していた。この悪しき帝国は世界統一に対する飽くなき野心と欲望を抱いていたが、その傲りによって皇帝が神罰を買った結果、妻と娘全員を疫病によって失い、彼自身も五感全てを奪われたばかりか、予期せぬ急速な老化とそれに伴う苦痛の数々に見舞われてしまう。その結果、僅か一代で急速な拡大を遂げたこの帝国は、あまりにも早すぎる後継者問題という最大の爆弾を抱える羽目になった。
この愚かな皇帝には7人の子供がおり、何れも父に勝るとも劣らぬ悪徳の持ち主であったが、末弟である七男はその中でも並外れた知性と野心を秘めていた。だが、彼は祖国が神罰による後継者問題によって、内部分裂を始める遥か以前から、放蕩や狩猟といった娯楽に耽り続け、自身の無能ぶりと愚かさを盛大に見せつけた結果、父王の逆鱗に触れ、辺境伯として島流しに処された。
だが、彼は最初から「無能」の烙印を押されて、辺境の地に飛ばされるその日を虎視眈々と狙っていた。その方が都合がよかったのだ……父や兄達を筆頭とした煩わしい中央の監視体制から逃れられるばかりか、祖国から遠く離れたこの僻地では、どんな策略を巡らし、どんな計画を実行しても「無能」故に決して疑われず、警戒されることも無い……もし、仮に疑われたとしても、その距離ゆえに幾らでも誤魔化せる。
こうして祖国を追放され、自身の真の実力を知る少数の配下や友人を辺境へのお供として引き連れた彼は、自身と同じように辺境の地へと飛ばされていた不穏分子と、この地に住まうドワーフやエルフらを説き伏せ、祖国から遠く離れたこの地で密かに力を蓄え始めた。
とある天使が「錆の時代」に興った国々の栄枯盛衰を記した「バシスの哀歌」、魔神アブラクサスに仕えたデーモンの史家が記したとされる「ウルハルスの嘲笑」といった神話時代の貴重な歴史書を見る限り、彼がこの地で彼が行った政策は多岐に亘るのだが、その中で最も力を注いだのは、新たな武器の開発であった。
上記の参考文献によるとどうやら彼は皇太子時代、お抱えの錬金術師らが偶然発明した「火薬」に興味を抱き、いたく魅了されたらしい。世界が麻のように乱れ、戦禍が絶えぬ、この「錆の時代」において、火薬に秘められた新たな技術と可能性の数々に、誰よりも逸早く気付いてしまった彼はこの発見以降、火薬の存在と情報を徹底的に隠蔽し、その全てを独占し続けた(恐らく彼はこの時から、辺境の地で力を蓄える計画を練り始めたと思われる)。
やがて、辺境に流されてから、およそ3年ほどが経過したある日、遂に彼は最初の「銃」の開発とその量産化に成功する。そして、開発から約6年間、辺境の地に巣食っていた魔物達を狩猟と称して、悉く狩り尽すことに成功した彼が、自身の野望の成就を確信したのは言うまでも無い。やがて、狩猟を終えた彼はそこから9年の間、更なる力と軍備を蓄えつつ、自身の治める辺境国に対する誤った情報や噂を徹底的に流し続けた。
約18年の間に父王は既に没し、かつての祖国は、己こそが正当なる後継者であると自称する愚兄らによって、6つに割れている状態であったが、個々の国々は独自の強みを有しており、その殆どが拮抗状態にあった。6つの国の王……彼の兄達は「無能」である七男に何の警戒心も抱いておらず、歯牙にもかけていなかった。何故なら、他国や商人を介して伝えられた彼の国の現状とその無能ぶりは、王達の想像を絶するほどであったからだ。
「あの愚弟など恐るるどころか、論ずるに値せず」……全ての王達が完全に油断しきってから、36日ほど経過したある日、彼は火薬兵器と最新鋭の銃を装備した精鋭部隊、そして彼に賛同した人型種族や「冥約」を取り結んで召喚した魔界の魔物から成る混成軍を、魔界由来の大規模な転移魔法を用いて中央に送り込んだ。
予期せぬ敵軍の奇襲による大混乱、噂と全くかけ離れた、精強なる部隊と未知の最新鋭兵器と武器の数々、そして、何よりも驚かせたのは軍勢の中に混じる魔界の禍が物ども…‥‥。如何に悪徳を極めた父王や他の兄弟たちですら、魔界の諸力と契約を結ぶのを禁忌として躊躇っていたというのに、七男はその一線すら容易に踏み越えたのだ。
こうして、6つの国々は一夜にして呆気なく滅び、これまでの立場を逆転させた七男は最初に開発した銃を用いて、自ら兄達の公開処刑を執り行った。そして処刑を終え、歓喜に沸く軍勢に囲まれた彼は、己が新たな帝国の王位に就くという明確な勝利宣言をした後、続けざまにこう告げた。
『さあ、我々のための新たな街と塔を作ろう。この塔の先が天に届き、神々に到るまでに高い塔を。そして、我々が神々の手を離れ、更なる自由を手にするために、未来永劫に続く、栄光に満ちた都と塔を建てよう』……と。
今までの事態を静観していたさしもの神々も、天への明確な反逆行為とも取れるこの暴言には耐えかねた。…己が似姿を模して作った被造物が、遂には己が意志によって我等に刃を向ける…。この事実に強い恐れをなした神々は、天より激しい雷火を我先にと言わんばかりに次々と落とし、瞬く間に国全体は一掃されてしまった。
・・・こうして、僅か一夜にして2つの国が滅び、奢れる王は魔界に堕とされたという。
◇王と雄牛
こうして魔界へ堕とされた彼は、未来永劫呪われた。だが、彼は余りにも罪深く、そして堕ちて尚、悔い改める事も屈する事も無い強靭な精神と自我の持ち主であった。本来であれば、哀れな魂蟲(ラルヴァ)として未来永劫、魔界の穢れた地を苦しみながら這いずり回る……はずだった。あろうことか彼は、魂蟲になるどころか生前の記憶と外見の殆どを保った状態で、固有のインキュバスとして生まれ変わっていたのだ。
魔界そのものの大いなる意思による祝福か、あるいは呪いか……彼自身はおろか、神々ですら全く予期せぬ二度目の生を受けた彼は、自身の置かれた状況や環境を理解する間もなく、魔界に蔓延るデーモンと魔界の原住民の大規模な抗争の嵐に瞬く間に吞まれ、筆舌に尽くし難い地獄を味わった結果、ようやく彼はこの地で己が身の程を悟った。
だが、それでも彼の野心の火は消えていなかった。魔界で蠢く圧倒的強者どもの中で王には成れずとも、副王には成れる…。そう確信していた彼は、勝てる相手を選びながら、着実に魔界で力を付けていった。
やがて、下位のデーモンや魔物たちを従えるまでに成長した彼は、傭兵じみた小規模軍を率いながら当てもなく魔界を放浪していたが、ふとある時、魔界の迷宮に潜むミノタウロスの神祖の噂を耳にする。生前の経験から、狩猟には並々ならぬ自信を持っていた彼は、ミノタウロスの神祖を脳筋じみた古株の魔物と思い込み、誤解してしまった……今までに遭遇したミノタウロスどもが、魔界でも比較的狩り易かったが故に。
この獣じみた怪物を討ち取り、その強大な力と安定した拠点を手にできれば、魔界における第2の道が開き始めるかも知れない……。そんな微かに希望に突き動かされた彼は、意を決して迷宮へと乗り込み、そこで7日7晩ほどミノタウロスの神祖との死闘を繰り広げ……そして、敗北する。
彼はミノタウロスの神祖の力と忍耐力、そして、その狡猾さを完璧に見誤っていた。瀕死の重傷を負いながら迷宮の床に倒れ伏した彼は、生前、密かに見下していた兄達の顔を走馬灯として思い浮かべる。
『・・・・・・当てにならぬ噂を真に受けるとは・・・・・・。所詮、血は争えないか。』
そんな事をポツリと呟くとミノタウロスの神祖は、振りかざそうとしたグレイヴの刃をギリギリの位置で留め、興味深そうにこう呟いた。
『・・・・・・貴様は、生前の記憶が残っているのか?』
『・・・・・・あったとして、それが何か問題なのか? ・・・・・・・・・・・・!!』
ミノタウロスとのやり取りの最中で彼は何かを閃き、ニヤリと笑いながら一世一代の賭けに打って出た。
『・・・・・・・・・そうだ、これも何かの縁だ。寛大なる俺は、哀れで愚かな獣に過ぎないお前に最後の機会をくれてやろう。・・・・・・俺を助命して配下として雇え。そうすれば、俺はお前を王の座に据えてやる。』
『だが、殺したければ、さっさと殺すがいい・・・・・・最も、そんな愚かな決断を下せば、貴様は魔界で最も優れた智者を無駄死にさせた、ただの"獣"として詰まらぬ一生を終えるだろうよ・・・!!』
『・・・・・・・・・俺が"獣"だと・・・・・・!!?』
風前の命の灯火に置かれたはずの敵は、何故か自信満々な笑みを浮かべながら、上から目線で自身を盛大に煽り始めたばかりか、事もあろうに助命という選択肢を一方的に突き付けてきた……生殺与奪の権は己が握りしめているはずなのに。
根拠のない謎の自信に満ち溢れた「コイツ」は、ミノタウロスにとって、前代未聞の相手であった。今までに命乞いをする敵は星の数ほどあれど、傲慢に己を煽った挙句、命乞いを自身に強要する輩など、コイツが生まれて初めてであり、彼からすれば全く想像も理解もできない相手であった。
耐え難い激情や怒りの衝動よりも、眼前の死にぞこないに対する好奇心が勝ったミノタウロスは、彼の助命を決断するとこう告げた。
『・・・・・・死にぞこない風情が随分と吠えたな・・・!! いいだろう、その煽りに乗ってやる。・・・だが、口先だけで終わるなら、魔界の地の果てに追い詰めてでも、貴様を殺してやる・・・!!』
後に魔界でも有数の魔神となるバフォミトラと、その最古参の側近たるシルヴェストリは、こうして出会ったという。
◇領土
言うまでも無く、シルヴェストリの領土は象牙色の迷宮内に含まれている。興味深い事に彼の領土は、バフォミトラの居城であるアステリオス宮殿の地下に設けられており、この異常なまでの距離の近さは、狡猾にして疑り深い"獣の大公"が彼に比類なき信頼を寄せている何よりの証となる。
シルヴェストリは自身の軍勢を宮殿の地下深くに掘られた、大陸規模の広大なトンネル網である"沈黙の法廷"から統治しており、そこで彼とデーモンの文官達は多元宇宙全体に亘る自身とバフォミトラの様々な計画や契約に関する全ての機密情報と文書、他の魔神や物質界の国々との間で取り纏めた外交文書や誓約書などから成る、膨大なライブラリーを管理している。また、シルヴェストリは自身と彼の代理人が何年にも亘って変更または置き換えてきた、多くの歴史的記録の真実を戦利品として保管している。
"有毒なる舌"と取引や契約を交わしたり、何らかの形で彼に関与した者は、沈黙の法廷の最下層にある迷路(通称:狩場)を「異邦人」として徘徊し続ける運命にある。こうした「異邦人」たちは、壁などに刻まれた詳細だが意図的に不正確な道順、暗喩に満ちた難解なメッセージ、彼とその配下以外には解読不可能な暗号の数々の解読を強いられ、如何にかして脱出する為に奮闘する。
道順や情報を虚偽だと見抜けなかった者は未来永劫この地を彷徨い、嘘だと見抜いた者は直ぐに監視者のデーモンに狩られるか、彼の文書を補完する奴隷として永遠に酷使され、"他者を害に導くために、誤解を招く道順を自ら示す"といった何らかの「知恵」を示した者は、下位のデーモンへと昇格する。
◇主な崇拝者
通常、彼の崇拝者は外交官、行政官、法廷弁護士、書記官といった司法または政治環境において高い地位にある人々が多くを占めるが、口の上手い詐欺師や論客、悪徳商人や公務員などの安定した地位を求める学生も彼の崇拝に手を染める。この様な信徒達は自尊心やプライドが高く、自身の知力や才能を過信する傾向にあり、シルヴェストリはこういった"賢い馬鹿"達からの一方的な挑戦を楽しんでいる。こうした娯楽の一環として、彼自身も裏切りや失敗とは無縁だと信じている傲慢な貴族や知識人を探し求めており、彼は物質界全体に契約や取引の種を蒔くために、強力で影響力のある定命の者達の前に頻繁に現れる。
その一方で堕落した猟師や狩人、殺傷力の高い手軽な武器を求める武器商人や鍛冶職人、暗殺者、火薬を悪用したい錬金術師などであれば、彼の銃の権能に価値を見出す。契約や取引によって容易に銃を手にした彼らは、人間を筆頭とした人型生物を気軽に狩るようになり、その中で最も卓越した者は、魔界の有害な力や危険物質を採取し取り出す技術を習得し、更にそれを銃器の弾薬に注入する方法を学んだ者もいる。そのような信奉者は「魔弾の射手」として知られており、その実践と手法は同じデーモン・ロードへの信仰を共有していない他の人々の間にも広まりつつある。
◇主な聖域や寺院
シルヴェストリの聖域は動物が潜む森林地帯や狩場に適した草原、図書館や文章の保管室、宮廷や法廷の地下に設けられた隠し部屋、人気のない場所に置かれた武器工房であり、彼のカルトは発展した文明圏や都市圏の周囲に潜んでいる事が多い。
彼らは紙などに自身の血で文字やサインを記した後、それを銃(所持していなければ、ロングボウやハンドクロスボウといった飛び道具)で射貫く儀式を行っており、時に彼らは娯楽的な射撃大会と称して、地元の民衆や暇を持て余した貴族を合法的に儀式に参加させている。
◇他の神格との関係
バフォミトラとその妻アハズ神の最も信頼された側近であり、バフォミトラの最古参の配下として知られるシルヴェストリは、象牙色の迷宮内において絶大な権力と比類なき影響力を有している。
「五暴星」の筆頭として彼は、個性と癖の強い他のデーモン・ロード達を積極的に取り纏めており、「混沌にして悪」の霊性を有する五暴星の面々が、秩序の霊性を有する上級神や天界の軍勢のように完璧に統一された力として機能するように導いている。
シルヴェストリはウェジンダスタラを後輩の同僚として、クインドヴァトスやザルバニドゥを身内同然に扱っているが、妹分であるリスサアエラの異常なまでの狂暴性と殺戮に対する病的なまでの執着は、彼が最も懸念している問題の一つである。
だが、何といってもシルヴェストリを語る際において欠かせぬのは、バフォミトラとの奇妙な主従関係にあろう。"有角公"と彼の関係は、対等な立場の友人であると同時に互いの腹の内を探り合う好敵手同士であり、かの"獣の大公"に容赦のない本音と無礼なため口を交えた進言や献策が行え、かつ無事に生存できる存在など、如何に魔界広し言えども、シルヴェストリのみしか存在しえない。
ある意味において、シルヴェストリはミノタウロス時代の彼に長期的な視野に基づいた計画の達成、策謀といった知略による勝利の重要性を教えた師と言っても過言ではない。一部のデーモン学者や賢者の中には、この"有毒なる舌"との出会いがなければ、魔界における"有角公"の発展と勢力拡大は無しえなかったと見る者もおり、バフォミトラの勢力図を研究する際において、彼の存在と活躍は極めて重要視される傾向にある。