二重螺旋の砂蛇時計 プロローグ:Hello, World.
『起動シーケンス、オールグリーン』
──音が聞こえた。
『コード:Key。データ、整合。オールグリーン』
──声が聞こえる。
『ボディ、検査。オールグリーン』
──呼ばれている。
『起動シーケンス、完了』
『おはようございます。ケイ』
──おはようございます。この声は、明星ヒマリですね。
『ええ、超天才美少女ハッカー……もとい超天才有能美少女AIです』
──大丈夫なんですか? その肩書は
『さあ、どうでしょうね? 今の貴女はスリープに入る前の情報は残っていないでしょう』
『簡単に飲み込めるほどのものでは無いので、ゆっくり読み込んでください』
──確かに。思い出せない。王女は……王女は、そうだ、この身体は……?
『再現は十二分。そのボディは貴女専用のものです』
『経年劣化は流石に起きていないでしょうが。それでも自身で確認をお願いします』
──なるほど。とうとうミレニアムはそこまで到達したのですか。
『あれだけの時間があれば、それほどの執念があれば、後は実行するだけでしたから』
『ああ、その前に貴女に告げなければなりませんね』
──目の前のモニターが起動する。
『貴女の最後の記憶より……千年以上経った、このキヴォトスの事を』
──不思議と、驚きは無かった。だって、私の最後の記憶は。
『彼女は……アリスは、今も』
「ケイ。この先アリスは罪を贖うために彷徨い続けます。永遠に」
「それでも、アリスに永遠はありません。あの蛇には永遠があるかもしれない」
「だからケイが目覚められる時が来たら……その時は、もう一度アリスの手を握ってください」
『貴女を待っています』
──王女の悲し気な笑顔で止まっていたのだから。
二重螺旋の砂蛇時計 プロローグ:Hello, World.