二人は特に分からない

二人は特に分からない


アナタは何者か?


疑問は何時も好奇心を刺激する。

しかし、側面を切り取って再定義したような精度で低くは無いが明らかに片面印刷だ。まぁ裏には何が書かれているのかなんて知る必要も無いだろうが。


なぜそんな事をするのか?


不安という精神的な害は看過出来ない事がある。一時的なものはまだスパイスに成る、しかし結局のところ何事にも適量がある適切な距離感がある。だがそれが理解出来ないものもいるのだ、こちらからしたらそれこそ理解が出来ないのだが。


違和感を確信した日の夜


ロウジはタブレットとハロを机に置く

「……やっぱり、アレおかしいよね」


そして、一方 朝の出勤少し前の時間


セセリアから届いた連絡にまゆをしかめたエランは少し考えた後。彼に電話を繋いだ。

「なぁロウジ、ドッペルゲンガーって知ってるか」

「急に何ですか?エラン・ケレスさん」

「ちょいと調べ事をしようと思ってな」

「意味が分かりませんね」

「ま、取りあえず一時的にアクセスの権限を引き上げといたから有効に使ってくれや、じゃ頼むぜ暫くしたらまた連絡する」

「え?」

プツ……

「切れた、何だったんだろ」


 再びタブレットに向き合い操作しどういう事か確認する。


「ブリオン社関連全体にアクセス出来るように成ってる……」


『発見しました、セセリア・ドートは以下の店にて買い物やサービスを受けていたようです』


ハロに提示されたデータを閲覧する買った物すら把握出来るのは少し後ろめたさを感じたが、今はプライバシーよりも知りたい情報あるので粛々と調査に戻る。


しかし、進展は無かった


見える範囲は広がった筈なのだが妙にピントが合わない何かズレている、いや逸らされているような感覚。


それと言いようもない感覚が有った


今、自身が調べているのは


一体誰なのかという  


 時計の針が進んで行く


――電話の着信音


「はい、ロウジ・チャンテです」

「どうだ仕事は進んだか?」

「今日は有給申請した筈ですけど」

「そうじゃなくて、セセリアの身辺調査だよしてたんじゃないのか?」

「……エラン・ケレスさん何か知ってます?」

「さぁな、ま、そっちは何処まで進んだんだ?」

「えぇと、最近のセセリアの行動履歴の買ったものの記録、利用したサービス」


「成る程、着眼点としては悪くないな、けどハロに確認させてんじゃねぇの?」


「そう……ですが」


「現場をしっかり確認するのも大事だと思うぜ、じゃぁな」


プツッ―――

しばらくの沈黙、しかしその後間もなく部屋には手を忙しくなく動かし始めた彼が居た。


ブリオン社 エラン・ケレス


トイレと言い休憩から戻った彼は椅子に眼の前いる同僚らしき誰かに話しかける。


「なぁ、え〜と面倒だなセセリアで良いか」


「人の名前は呼ぶのに面倒だなんて失礼じゃないですかぁ?エラン・ケレスさん?」


「ハッならハッキリとお名前を呼んでやろうか?」


数秒いやそれにすら満たない静止の後

セセリア擬きは何時ものセセリアがする表情に戻る


「私の名前はずっとセセリアで変えたつもりはないんですけどねぇ何か変な妄想とかしてますぅ?」


(成る程な大したもんだペイルのバイオテクノロジーの整形が見た目の到達点ならさしずめ精神の到達点か……ま、それは良いロウジにはあんな事を言ったが俺も、ことの70いや60%程度しか推測デキてねぇ、何か俺から見えてないものが……しかし犯人からこんなにも見られてちゃ)


「面倒だなお前」


「アナタには言われたく無いですよ〜」


他の同僚はテキパキと業務を行っているし、このまま喋っていても、周りからの視線が冷ややかに成るだけと思い彼は眼の前資料に渋々、手を伸ばした。


セセリア宅?


目が覚める、拭えない不信感

何かが違う、直感がそう告げる


 しかし、何も違ってないのだ

家具の配置も冷蔵庫に入ったモノも

全て全て全て……


そして、何よりナンダ?ナニモノ?


アレはワタシ?


考えると思考が纏らない有り得ないと思う理性が考える事を拒んでしまう、異常に侵略されている日常を理解しようとすることを放棄してしまう。


分からない、分かりたくない


少しずつ溜まっていた不安が全てを縛ろうと五感を絡め取ってくる。

 しかしながら、僅かに残った動く脳味噌でエラン・ケレスに今日は休むという連絡を入れる。


そして、体は精神を守るため

一時的に電源を落とした。

 意識は沈みやがて休むために微睡みへと移り変わる。


ロウジ宅

 セセリアの情報と何者かは分からないがそっくりの女についての情報を洗い出す。

「見つけた」


とそう呟いた、確かに見つけたセセリアに化けて彼と会話したコイツをハロで調べるだけじゃ何故見つからなかったのか。


理由は主に3つだった。

 一つはコイツが改造品なのかセセリアと同一のナンバーを持った電子端末を使用していた事、二つはセセリアの予定を完全に把握してるのか絶妙に矛盾点を作っていない事。コイツの言動や服装は90〜93という高数値でセセリアと一致していたコトだ。


そもそも彼のハロは人物調査用に高度な改造が施された代物ではない、自身が気づいたのだから当然ハロもという自己認識が甘かった。


そう思うと同時に発見したコイツへの興味が抜けていく別に裏にミミズやナメクジがいるのに底が湿った岩をひっくり返したいとは思わないのだ。


コイツの違法性の証明の証拠は揃った

居場所も分かる…………


それ以外に知りたい事はもう無かった。


ブリオン社 エラン・ケレス


予想通りとまではいかないが

期待通りでは有った見事ロウジは眼の前のセセリア擬きの尻尾を掴んだらしい。


犯人はアッサリと捕まった

しかもセセリアに化けた事では無く違法な物品の所持等である。しかもお昼の為に会社を出た時にであったためブリオン社とは無関係として処理される可能性すらある。 


あっけない幕引き。


しかし、これにて一件落着とは行かない


先程ロウジと再び連絡を取った彼エランは一つの意見が一致した。

(この事件をコイツ(セセリア擬き)だけの犯行と仮定するならば情報の欠落が多過ぎる)


しかし、ロウジはセセリアが心配なのか既に事件の外で動いている。

動いていないのはエラン・ケレス彼のみだった。勿論動く気は更々に無いのだが


「ま、俺が誰かを動かさなきゃハッピーエンドにゃ成らなそうだからな、バットやノーマルつまらん」

 ふっと解放された感覚に浸りつつ

 現状を把握するために頭を動かす。


「さてと、おおよそロウジの家から、セセリアの自宅までは最速で40分程度だったか?」

その一時間にも満たない時間が事件の

タイムリミットだ。


ところが、彼の態度は余裕綽々であった


何故?セセリア・ドートは休んだのか

何故、彼女の周りにセセリア擬きは溶け込めたのか……方法は有るしかし手数が足りないと言える。あの煽り女を自身の都合で仕事を休むまでに追い詰める状況が……


「一つずつ整理するか、ロウジの集めた情報も含めて使わせて貰おうかねぇ」


ロウジの調査ルートは以下のものだったセセリアに化ける過程の犯人を唯ひたすらに洗い出すという方法。何時から同じ服、装飾、化粧品、顔し始めたのか境目を見つけて調べ上げる。


アナタは何者か?(Who done it?)と


何者であるかが犯行であったからだ。まぁアッチのことは今は良い、ならば彼の今回の推理の焦点はと言うと


「セセリア擬き以外に今の俺やロウジの見えないところに何がいるのかだな、フッ化け物でも出なけりゃ良いがね」


「ふむ、しかし何かロウジに精査されてない情報ねぇ…………まぁセセリア擬き側から見た情報だな」


購入履歴……■■・■■■と購入したものと同様のものが購入された件数


◯月☓日 □曜日

食料品 同日11件

家具  同日4件

化粧品 同日6件

 :

 : 

「わりといるな……さて手早く行こう」 


被った奴等の現在の住所や過去の行動を掘り起こす。


◯◯◯◯◯◯マンションの賃貸帳簿

807号室 借用者■■■・■■

806号室 借用者セセリア・ドート

808号室 借用者 無し

「ビンゴ、しかしコイツ何でセセリア擬きと似たようなことしたと思ったらセセリアの部屋と同じもの買い始めてんだ?気持ち悪いなコイツ」


まぁ、理解の出来ない奴に頭を割くのは無駄だなと考え電話を取り出し動けそうな人物と通話を始める。


―――「おぅ働いてるか?ん?まぁロウジも忙しいんだよ有給取ったがね。というわけで本題に入るが……………………………あぁ頼んだ移動費に関しては、セセリアに頼めば良いから気にしなくて良い」

プツ―――


「何というか……あのババア共思い出して気分悪いぜ全く」


椅子に深く座り直し天井を仰ぎみる

あの頃は……


「あ〜あやだやだ、本当にうんざりって奴だ、セセリアの分の仕事もしてやるかね。んで俺の手柄にしよ」


セセリア宅前


「ハァハァ……着いた鍵は……確か此処ブリオン系列だからハロで開ければ……」


息を整えエレベーターに乗り込む

最近はモビルクラフトに乗るように成り体力がついたと思ったがそうは直ぐに体は変わらないらしい。


「1、2、3、4、5、5、6、7、8

高いなクソっ」


8階に到着する「着いた」 


確かセセリアの部屋は806号室だ

ハロに解錠を任せる、とにかくこの部屋にセセリアとセセリアが休まざる得なかった何かがある筈だ。


ガチャッ


――セセリア宅――


暗い部屋だしかし生活観は有りつい昨日まで人がいた事が分かる。暗闇に目が慣れてくると部屋の全体を見回す事が出来た。


そして、発見した


「誰?」


誰だ、本当に分からない、そして何故セセリアの姿が見当たらないしかし眼の前知らない誰かがいる。


誰だ、体が動かないしかし誰かはコチラの存在に気付いたのかゆっくりと、だが慎重に距離を詰めてくる。


ついに、足に力が入らなくなりいよいよ立つことが出来そうにないと成ったその時だった。


「おい、ロウジィ!!頭下げろぉ!!」


最近に成ってよく聞くように成った怒声と共にロウジの足の力は限界を迎え床にへたりこんだ。

その瞬間

ヒュンッ!という音を立てて何かが飛び

目の前の人物に直撃し仰向けに倒れた


「ガッ……」


「チッ、クソスペーシアンがカラーボール位で大層な倒れ方すんなよ」


「チュ、チュアチュリーさん、どうして此処に?」


「嗚呼?聞いてなかったのかよ。あのいけすかねぇ面のエランに頼まれたんだよ、というかクソスペギークんな事を聞く暇あんなら目の前の野郎をふん縛れッ!」 


「あ、うんハロ」

『了解しました、対象を不法侵入の疑いで拘束します』

ハロの口からテープのようなものが伸びて瞬く間、目の前の不法侵入者は拘束される。


「……後は警察を呼んで、そう言えばセセリアは何処に……」

「あ〜そういや、エランの野郎曰く隣の部屋だとよ、あーしはコイツ見張っとくから」 


「……分かった」


■■■・■■宅


『解錠しました』


ハロによって扉を開け中に入る


…………同じ配置、同じ匂い、同じ、同じ

しかし、そんな事を気にしている暇はなかった


「セセリア」


そう呼びかけるも、反応は無い

部屋を一つ一つ見ていくとついに


「見つけた、良かった……」


そんな彼女は仕事の時の服装のまま寝ており静かに少し震えながら寝息をたてていた。


「起こした、方が良いよねセセリア、セセリア」

『起きて下さい、起きて下さい』


「んッ……」


目が覚める、意識が沈んでから幾ばくの時間が立ったのかは分からないが何か聞き心地の悪くない音が頭の中でこだまし意識が浮上する。


「起きた……大丈夫?セセリア」

「ロウ…ジ?」


其処には珍しく作業着でも定期報告用の似合わないスーツでも無く、何なら制服ですら無いシンプルな私服の彼が居た。お世辞にも眠り姫を起こす王子様とは言い難いが……緊張を解くには十分であった。


セセリアが落ち着いていることを認識したのかロウジは淡々と現状を彼女に伝える。すると彼女は段々と落ち着きが無くなってきたのである。その理由は……


「え、ウソ私、昨日からお風呂も入ってないし服も、何なら化粧も落として無いのに今から警察の事情聴取受けなきゃ行けないの?」


「……今、それ気にするところ?」

「バカ!今そこが一番重要でしょ!」

「えぇ……でも」

「な、何よ」

「現場あんまり荒らしたら不味いから無理だと思うよ……着替えとかお風呂とかホラ犯人がアッチ側の部屋使ってた可能性が有るし何なら変な人いたし」

(チュアチュリーさん思いっきりセセリアの部屋でカラーボール投げてたけど)

「そ、そんな終わりじゃん」

「そんな簡単に終わらないでよ」

「女の子には色んなプライドとか乙女の事情とかがあるんですゥ!」

「でももう20歳だし、どっちかと言うとgirlよりladyじゃない?セセリアは」

「もう!良いわよ!理屈ばっかり!」

「そういうセセリアは体面気にし過ぎだよ。そんなに気にしないって警察の人も」

「………もう、ロウジ嫌い!」

「ハイハイ」

『仲良し、仲良し』


セセリア宅


「警察くるからしゃねぇがドア閉めさせるべきだったか?うっせぇぞ、あいつら」


終わり というわけで一件落着?

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