乖離Ⅲ:デザスターは誰だ?(ChapterⅡ)
名無しの気ぶり🦊


「よう!」
「無事だったんですよね、吾妻トレーナー!」
「! ギーツにキタサン⁉︎」
それからさらに数時間、時刻は深夜帯
あれからしばらく現世を彷徨いて今は夜道を歩く道長に、どこからともなく声をかける英寿とキタサンがいた。
「ジャマトにやられたのに…何で生きてる?」
「あの時、吾妻トレーナーはクラちゃんをラスボスジャマトの攻撃から庇って確かに命を落としたはずでしたよね…?」
そう言いながらコンビニで買った おにぎりを一個ずつ道長に渡したようで、渡されたほうも特に何も言わず食べ始めている。
端的に言って今の道長はとにかく腹が減っていた。2週間近く何も食べていないのだから。普段から気安い仲のキタサンはともかく、どちらかと言えば目を合わせれば道長から一方的に噛み付くほどには仲が悪い英寿からさえ受け取るなんて余程の疲労と空腹である。
「ゾンビの力らしい…俺を助けたやつによれば」
「ゾンビレイズバックル…つまり、アンデッドみたいなものに使用者を徐々に変える力があのバックルにあったってことでしょうか?」
どうやら道長を助けた者によれば、ゾンビレイズバックルの効能によるものらしい。
だからゾンビ映画などをたまに見ているキタサンとしては、そんな感じの理屈がバックルを介して発生したのかなと思いついていた。
「いや、正確には耐久性の向上だろうな。ダメージや毒への耐性を大幅に高める効果がこいつにはある、確かな」
「あっなるほど!」
ただデザイアグランプリに慣れて久しい英寿にしてみれば、ゾンビレイズバックルが持つ耐久性の向上機能が関係しているのだなと察しがついた。
とはいえぶっ飛んだ能力に違いはないが。
「使いまくったからゾンビ化か…はっ!」
「? どうしたんですか?」
それを黙って聞いていた道長はどこか自嘲気味に力無く笑った。
キタサンも少し驚いている。
「…端から見てると滑稽だよな。理想の世界とかいうニンジンぶら下げられて、ろくでもないゲームやらされて」
今さらながら、道長はデザイアグランプリのプレイヤーとして戦うことの愚かさを思い出していたというわけである。
「…それは…そうですけど、でもトレーナーさんもあたしも後悔はしてません!」
「どれだけ滑稽でも、弱々しくても、叶えたい願いがあるから人もウマ娘も奮い立てるんだってこの3年で学びましたから!」
しかし願うことで人は強く前へ踏み出せる。
そしてそれをここまでの3年間でキタサンは強く実感してきている。
ならば今さらこの番組の歪な性質を知ったところで歪もうはずがなかった。
「…成長してんな」
こんな状況で再会したからか、道長もそんなキタサンの反応に純粋に目を見張れていた。
「それに対して変わってなさそうなお前は負け惜しみか?」
「もう、わざとでもそういうのはめっ!ですよ、トレーナーさん!」
「すまんすまん」
英寿はそれを見てつい癖で道長を煽ってしまう。特に理由はなくても相手につっかかる関係性は英寿と道長にかぎって言えば相互なものであり、つまりは同じ。
「…何も分かってない。今まで戦ってきたジャマトがどこから来てるのか?」
「そう言われれば確かに…デザイアグランプリがリアリティーショーだってことはこないだ分かりましたけど」
そんな煽りもやはりこんな状況で再会したからか特に意に介さず、今の自分の疑問を素直に道長は吐露した。ジャマトがどこで生まれているのか、ジャマーガーデンでの光景を見てなお、いや見たからこそ余計にそう感じている。
(…恐らくはデザグラ絡みだろうがな)
「…そうか、お前もとうとうジャマトの仲間入りか」(英寿)
「誰が⁉︎ 生きてるよ!…俺だけはな…」(道長)
英寿はその疑問の答えになんとなく察しはつくが、はたしてそれが合っているかは分からないので口にはしない。
代わりに口をついて出た棘のある挑発に、今度は道長も引っかかっていた。
「…皆さん、やっぱり…ううっ、グスッ!」
「! じゃあ…お前以外はみんな…!」
────そして、彼が思わず口にした一言は2人にショックを齎すには十分だった。
「俺は他のやつらとは違う。ジャマトに利用されてたまるか」
「ヒグッ!……クラちゃんが認めたトレーナーさんですもんね!」
もちろん道長もただで終わってやるつもりはなく、あくまでこの逆境を担当ウマ娘のように乗り越えてやろうという腹づもり。
「…フッ♪ 何にしろ無事でよかったな。お前のIDコア、ご飯粒でもつけて直せばいいじゃないか」
「ああ?」
「たぶんトレーナーさんは煽りたいわけじゃないですよ!」
英寿もどうやら道長の精神性が未だ健在であることを内心嬉しく思い、ゆえにこそ煽る意図はない、しかし結果的に煽る発言をしてしまいキタサンに捕捉されていた。
「…理想の世界、叶えたくないのか?」
「はい、これが言いたかっただけです」
要は未だ願いを叶えたいと望んでいるか、これを道長に問いたかっただけである。
軽口が悪口っぽく聞こえるが、英寿さんなりにデザグラに復帰するように勧める言葉だったというわけだ。
「────俺は俺のやり方で、手に入れてみせる。仮面ライダーをぶっ潰す力を!」

そんな発言がまともに効いたのか、道長は自身のデザイアグランプリにおける願いである仮面ライダーをぶっ潰す力をこんな状況からでもいずれは手に入れてみせると宣言してみせた。
「…クラちゃんには会っていかないんですか?」
「ッ、今はまだだ!」
(昨日までなら違っただろうが…)
それ自体はキタサンも嬉しく思ったが、しかしそれと同じくらいクラウンには会っていかないのかとも感じた。口ぶり的に戻る意図はないように思えたせいだ。
「?まだ?」
(なんかやることがあるってことかな…)
(…気のせいか、人間辞めてないか、あいつ?)
道長がそれにまだと返せば、やはり戻る意図はないのかとキタサンは感じたし、一方で英寿は道長の中のジャマトの存在を漠然とだが感じ取っていた。
そして道長は去った、しっかりおにぎりの袋は持ったまま。
「────ほんとに景和がデザスターなのかな?」
「…別人なんじゃないかなって…」


同じ日の午後、前半戦終了から1時間ほど後。祢音と冴はシュヴァルとタルマエを交えて再び特訓中。
その休憩の最中、祢音とシュヴァルは本当に景和がデザスターなのだろうかと疑問を口に出していた。
「どうしてそう思うの?」
「2人ともそう思うだけの理由があったってことですよね?」
なぜ、そう思うのか冴はもちろん、タルマエも疑問に感じた。景和が疑われている状況だからこそなおのこと。
「景和って…根っからのいい人だから、ジャマトが退場したライダーかもしれないって思って、守ろうとしたんじゃないかなって」
「世界が終わる、そんな時でも自分より他人の命を守ろうとして死にかけてしまう…そんな人なんです、ダイヤさんのトレーナーさんは」
桜井景和という人間の善性をよく知っている祢音とシュヴァルからしてみれば、あの時驚きこそしたけれど景和がデザスターであるという大智の判断にはどこか従えない気持ちがあったのである。
「…だから五十鈴大智を妨害したって言うの?」(
「自分がデザスターと決めつけられることなんて、他人の命を守ることに比べれば安いものってことですか…?」
それを聞いた冴とタルマエはというと、流石に効いたのかはたして景和をデザスターといういいものか言葉にこそ出さないが悩み始めた。
「うん…。景和って、守りたい者にたいしては、まっすぐな人だから…。不器用なぐらい」
そう、景和は自らの大切な存在を守るためであれば命を容易く削ることさえ厭わない。
「あの人の担当であるダイヤさんも、ずっと一族っていう近くて遠い大勢の誰かのために頑張ってる…」
「他人のためにその命を使うことに躊躇いがないトレーナーとウマ娘なんです、あの2人は…」
ダイヤも同様で、自分にとって譲れない何か、それが願いであっても別の何かであってもそのためならこの身一つをいくらでも酷使してやれる、そんな精神性だった。
「2人ともここでも信じてるんだ、彼のこと…」
「それだけ、競争相手としても信じられる人ってことなんですね…」
そんな2人の反応を見ていれば、やはり景和をデザスターと決めるにはまだ早いのではと冴とタルマエは感じ
「…」
((…普段みたいに彼を信じてみてもいいのかもしれない))
景和とダイヤを信じている祢音とシュヴァルの言葉を通してだが、景和のあり方を、デザスターでないという疑問を内心事実として受け入れていたのである。
「オーディエンスの再生数は上々のようです」
「鰻登りってわけじゃないけど、続々と見るやつは増えてるわよ、おっさん」
その頃、とある部屋ではツムリとスイープがデザイアグランプリの配信を視聴する人間が今回も大勢いるという報告をチラミにしていた。
「お・ね・え・さ・んよ、スイープ♪」
「はい…」
(出た、チラミさんの謎のお姉さん推し…スイープちゃん、南無です…)
その際に思わずチラミにとってはNGワードにも近いおっさんという発言をしてしまったからか、顔をぐいと近づけられて矯正されていたのはご愛嬌。
「当然よ。こう言っちゃなんだけど、ギロリのディレクションはちょっと硬派すぎたよねぇ」
「なんか、”押忍!!俺のデザイアグランプリ!”みたいな」(チラミ)
((前時代的な例え…))


とにかく『疑惑と裏切りのシェアハウス』への視聴者からのに反応に、チラミは満足していた。
だから今のツムリの視聴数が上々だという報告にも、当然だと言えていた。
「オーディエンスの皆が皆、世界平和のハッピーエンドだけを願って、見ているだけじゃないんだからさ」
「…そんなことはないと思いますが?」
「御伽話の皆を幸せにする魔法みたいなこと、好きなやつは普通にそこそこいるわよ?」
ツムリとスイープはさながら『?』が出るかのように疑問混じりの反応をそれに返す
2人はやらせはもっての外としても、ギロリの路線のほうが好きだったのである。
番組としてだとか、物語とかということでそういう方針なのには面白くて賛成、それを実際に世界を作り変えられるっていうレベルで期待されると困るというのが今の2人の素直な想いだった。
「ノンノン、オーディエンスが求めているのはスリルと刺激。それこそがエンターテーメントなんだからぁ~ああ~! ああ~ん!」
(…こういう番組制作陣が、出演タレントにケガさせちゃったりするんですかね)
(…アタシ達の世界だと、そうなったら問題視され、炎上して、叩かれ、番組打ち切りなんてことにもなりかねないわよ)

デザグラの場合、オーディエンスに退場者の末路が知らされているかは判らないが
少なくとも2000年以上はまかり通ってる事実がそうであるように、出演者(参加者)が死んでも何してもエンタメでしかないのである。
(……今の私が五十鈴先生によるトレーナーさんへの疑惑を晴らすためにできること…あっ!)
その日の夜、英寿とキタサンが道長と別れてから少し後。ダイヤは大智により仕掛けられた策を突破するために自分に何が為せるかについて頭を悩ませていた。無策では何も変わらない。
さりとて…と思った直後、彼女の脳内にある記憶が蘇り。
(確か、ボイスレコーダーを持ってきてたはず…
ってキタちゃん!」
「あっダイヤちゃんと桜井トレーナー、ただいま!」
それを頼りに鞄のなかを弄っていたところ、目に映ったのは幼馴染とそのトレーナー、つまりキタサンと英寿の帰還した姿。
「ふああ…2人とも、こんな夜中にどこ行ってたの?」
「寝不足ですか、桜井トレーナー?」
そして寝付けていないのか同じタイミングで景和も姿を見せる。目の下には若干クマも伺える。
「うん、ダイヤちゃんも同じみたいだね…」
「流石に疑いをかけられたままおちおち寝付くこともできませんし」
もちろん寝付けていないのはダイヤも同じ。
互いに景和にかけられた疑いを解こうと必死だった。
「殊勝な心がけだな…よし!今度は俺が夜食でも作るか!」
「「…へ?」」
「いいですね、あたしも手伝います!」
そんな2人を見ていて労ってやろうという感情が英寿に湧き上がり、ならばと採った行動は夜食を作ってやろうというもの。キタサンもこれには賛成なようで手をわきわきと動かしている。景和とダイヤは困惑していたが。
「あむ…んぅ〜っ、美味しい♪ 夜食ってこんな楽しいんだ…さいっこう!」
「ああ、やっぱり肉は牛だな」
そうしてお出しされたのはステーキ。
夜食にはあまりに結びつかないハイカロリーな一品を英寿とキタサンはそれこそ夜食という秘密の食事で、かつ牛ステーキということもあって美味しくいただいている。
「うん…けど、夜食の域 越えてない?」
「実家でよく食するA5ランクの牛肉使用のステーキをまさかここでも食べられるなんて…」


ただ景和とダイヤは変わらず困惑しながら一口一口味わっている。
さすがスター・オブ・ザ・スターズ・オブ・ザ・スターズというには深夜帯の体にはキツい代物。体に悪いから寝る前にこんな油の強いものは食べないほうがいいような美味しくもお腹に溜まる一品だった。
ちなみに使われている牛肉はA5ランク、つまり最高級品である。英寿がスター・オブ・ザ・スターズ・オブ・ザ・スターズ特権で密かに入手し今回持ち込んでいた。
「牛といえばバッファに会った」
「ングッ、嘘でしょ⁉︎ 退場した人って元の生活には戻れないんじゃ…?」
そして切り出されたのは先程道長に会ったという事実。こんな夜食を出したのもそのためである。やり方がたまに回りくどいのが浮世英寿という男だった、今回はキタサンも協力しているが。
「…クラちゃんのことはなにか言ってた、キタちゃん?」
「うん…まだ会うわけにはいかないみたいなことを言ってたよ」
ダイヤはというと道長がクラウンのことを気にしていたかどうかを問うていた。親戚で同い年な彼女のことを、その現状を気にかけないような薄情なウマ娘ではなかった。
「そっか…」
(まだやり残したことがあるのかな…)
そしてそれに対するキタサンの反応を見て、先程のキタサンと同じような感想を抱くのだった。
「そして生きていたのは自分だけだとも言ってたな。その言葉を信じるなら、他の退場者はもう…」
「…そうなんだ」
もちろん、退場者は道長以外は軒並みこの世にはいないということも伝えた。
互いに悲しくなってしまうような、そんな内容だというのに。
「…助からない、助けられない…そういうことですか…」
(トレーナーさんの理想を打ち砕くような現実…)
ダイヤもまた、それを聞いて落ち込んでいた。景和の願いに共感し、自らの願いを叶える支えとなってくれた彼の力になれればと思って共に頑張ってきたからこそその願いが叶わない可能性があるという意味で悲しみも景和と同じぐらいにはあった。
「…まっ、どんな悲劇だろうと救えるのがデザグラだ。理想の世界を叶えさえすればな♪」
「そうそう、諦めるには早いです!」
「優勝者がもらえるトロフィーはデザグラにおいてはそのものずばり自分の願いが叶った世界なんですから!」
しかしまだ絶望してしまうには早い。
退場者が生きていようといまいと、デザイアカードに書いて承認された以上は、デザ神になれば叶うということ。
つまり、未だ希望は残されているということなのだから。
「そしてそのためにはデザスターだと思う奴に投票しないとな」
「もちろん、あたし達は桜井トレーナーを信じてます。ダイヤちゃんの次に♪」
「キタちゃん…」
ならば、今乗り越えなくてはならないのはデザスター投票、その1回目
最後まで勝ち抜くためにも、初手で脱落してる場合ではない。
「ダイヤちゃんはいつもそうしてくれてるけど…英寿とキタちゃんも俺のこと信じてくれるんだ?」
「ん?」
けれど、景和にはなぜ2人がここまで自分の助けになってくれるのかが改めてだが疑問だった。
「私達と付き合いの長い2人がトレーナーさんを信じてくれるのが、当たり前だけど嬉しくて…」
ダイヤも同様…ではなく、嬉しさが先にあった。だからこそ気になっていた。
「あたしはダイヤちゃんのことはもちろん、そんなダイヤちゃんが信じる桜井トレーナーのことも信じられる、それだけだよ!」
それに対するキタサンの反応はというと、大好きな幼馴染とその彼女が信頼しているトレーナーであるからというもの。
シンプルだが、それだけでキタサンが2人を助けるには十分すぎる理由だった。
「2人とも…やっぱり俺以外に投票してなかったの、英寿とキタちゃんだったんだね」
それを聞けば、景和は景和以外のプレイヤーに投票していなかった2人が英寿とキタサンなのではという希望も抱いた。
「そうとは言ってないぞ」
「うーむ、どう答えよう…」
しかし返ってきた反応はどこか茶を濁すようなそれ。明らかに暈していた。
「え? そうなの?」
「トレーナーさん、たぶん照れ隠しです」
が、景和はそれを違うと受け取るも、しかしダイヤの助言によりすぐさま考えを修正する。
「…じゃあ、やっぱり俺に投票したの?」
「それは最後の最後に明かしたいですっ!」
ならば今度こそと問えば、今度は先送りにするような反応。
「えっ」
「要は俺達2人に信じてほしかったらお前らの手で証明してみせろ。桜井景和はデザスターじゃない、ってな」
「私達の手で……」
────というのは、今答えを言ってしまうときっとやる気もそこ止まりだろうと英寿とキタサンが判断したがゆえの先程からの挙動だった。景和とダイヤの可能性を信じていればこその反応である。
「うん…やろう、ダイヤちゃん!」
「はい、トレーナーさん!貴方がデザスターでないと誰の目にも証明してみせましょう!」
「「俺達(私達)2人で!!」」
そしてそれを察せられたからこそ、景和とダイヤの反応もシンプルなもの。
1人ではなく2人で絶対に景和がデザスターでないと証明してやろうと、堅く心に誓ったのだった。
「差し当たってはゴニョゴニョ…」
「な、なるほど…! 確かにそれは探してみる価値ありかも!」
なので差し当たってはダイヤが先程攻略の鍵として思い出したあるものを使ってみることを提案、景和もそれに納得しダイヤに以降の扱いを一任していた。
「余計なこと言ってくれちゃって…」
(ダイヤちゃん、桜井トレーナー…頑張れ!)

残りの女子5人は英寿と景和の話を聞いてたようである。もちろん大智も聞いていたようで、彼ら彼女ら4人のやり取りを忌々しく感じていたのだった。
【なぜ「桜井景和」がデザスターであると?】
時間は少し遡り、景和とダイヤへのインタビューと同時刻。
別の部屋で大智とリッキーへのインタビューも行われていた。
「たとえデザスターじゃなくても全員から疑われたプレイヤーは脱落する。 それがこのルールの肝だ。ちょろい奴を疑わせて脱落させちゃえば、数を絞れるからね」
「先生の言い方は悪いけど、要は数や数字は力ってことです! 」

要はデザスターであろうとそうでなかろうと、投票の時点で1番多くデザスターだという支持を得てしまった者を脱落させられる。
それが今回のゲームのメリットだと大智とリッキーは理解していた。だというのに景和を罠にかけるためにリッキーに嘘をついていることを大智は打ち明けてはいなかったが。
「あッ────?」
英寿とキタサン、景和をダイヤが夜食を肴にちょっとした会議をしていたころ、道長は路地裏にて倒れてしまっていた。
ジャマトバックルによる負荷の後遺症から来るものだった。
「死してなお生きるとは…」
「…どう対処する、トレーナー?」
「そうだな、2人で搬送しろ」
そんな折に運悪くというべきかそこへ現れたのは、ニラムとサマス、そしてドゥラメンテだった。
目の前のルームメイトのトレーナーへの対処を問うたドゥラメンテに対し、ニラムは道長を搬送するようにサマスに命じた。
「どちらへ?」
「…死とは、リアルでなければならない」


死んだはずの男が生きていては死んだと触れ込んでいる現状の番組展開への差し障りになり得る。それをプロデューサーとして考慮したニラムは至ってシンプルな処置を考えているのだった。

