中指モブ末弟×末兄様

中指モブ末弟×末兄様


胸ポケットにしまった端末が震えてから13分後、俺は息を切らしてマカジキ漁港のホテルの一つに駆け込んだ。

「あっ…そのっ…」

「はい、うかがっております。部屋はいつもと同じく」

「あっ、はい…」

もはや慣れた様子のフロント係から受け取った鍵を握りしめ、エレベーターのボタンを操作する。最上階の広い部屋。俺と末兄様が「逢う」ときに必ず使用されるそこは、初めて足を踏み入れたときはひどく場違いに感じられたものだ。フロント係と同じ。慣れってのは、怖いもんだ。

「お待たせっ、しました…!」

「ん…ああ…」

広々としたベッドに気だるげに横たわる末兄様は、風呂から上がったばかりなのかゆったりとしたガウンを纏っている。艶のある髪はホテルのアメニティで手入れをした証だろう。質のいいアメニティも、末兄様がこのホテルを気に入っている理由だった。

「来な」

「はいっ」

まだ少し荒い呼吸をなんとか落ち着かせながらベッドの横に立つ。起き上がった末兄様が向ける視線はいつものような強さと雄大さを湛えてはいたが、矛盾する、どこか扇情的で熱に溶けるアイスクリームみたいな色も含んでいるように見える。

「上がれ。ああ、立ってろよ」

「はいっ」

早く、しかし失礼にならない仕草で靴を脱ぎ、スプリングを軋ませてベッドの上に立つ。末兄様の上背はかなりあるが、それでも座っているのと立っているのではさすがに高さに差が出てくる。俺をチラッと上目遣いで見た末兄様は、そのままベルトに手をかけてズボンをずり下ろした。

「っ……!」

息を呑む、が、声もあげなければ抵抗もしない。中指に入って「家族」になってそれなりの月日が過ぎたが、未だにアットホームな空気に馴染みきることができないでいる。兄とはいうが要は先輩であり、上役であり、俺の生殺与奪権を握っているのだ。叩ける軽口などあるわけもなくきゅっと唇を結ぶ俺に、いつものように末兄様は薄く笑う。

「ったく、緊張しいだなお前は」

「すみませっ、ん…」

「謝るな。そういう慎重で不躾に線を越えない性質は悪いモンじゃない」

そりゃそうだ。臆病でなくては都市では生きていけやしない。ビクビクしている俺に構うことなく末兄様の唇がボクサーパンツ越しに俺の息子に口づけをして、そのまま口だけでパンツをずり下ろす。なんだかんだ言ってすでに半勃ちのモノがぺちんっと頬を叩いて、それに末兄様の目がどろっとした光を宿した。

「ははっ…♡相変わらずデカい、な…♡んッ、ぶ…!♡」

「うおっ…」

腰を抱き寄せられ、ちぢれた梢に鼻まで突っ込む勢いでくわえこまれる。口の中はあったかくてとろとろで、先ほどまで飲んでたんだろうか、ベッドサイドのウィスキーが彼の口から回ったのかくらりと熱くなる。根元まで収められ、喉奥で先端を締めつけて、幹を肉厚な舌が這いまわって、もうどうにかなりそうというタイミングで口が離される。

「はあっ、はあっ…!♡」

興奮しきった末兄様がタシタシとベッドを叩く。意図を理解して横たわると、彼は上に乗って自分で解かしていたアナルを割り開き俺のモノを埋め込んでいく。

「あッ、お゛…♡あ゛〜…♡きっ、くぅ…♡」

「うぐぅっ…すご、きもち…」

「だろぉ♡ぅあっ…♡お前の、も、いいところッ、奥、あたるっ…♡」

たしんっ、たしんっ、と最初は控えめだった肌の当たる音は、どんどん激しさを増していく。それに合わせて末兄様のデカい息子がぶるんっと揺れるのも、彼の喉から低く艶のある嬌声が押し出されるのも、表情から余裕が消えてヨダレが垂れてくのも、なにもかもがエロくて可愛くてしょうがない。

「ひッ、ひィッ…!♡あ、う゛…♡」

「あに、き、大丈夫ですか…?」

「も、動けね…な、奥、もっとついて…♡」

快楽のあまり腰を抜かした末兄様が、俺の手を握りながら甘すぎる声で懇願する。あの、強くて、余裕ある笑みで、あらゆる敵を蹂躙する末兄様が。普段とのギャップに頭がおかしくなりそうになりながら馬鹿みたいにうなずいて、ばちゅんっと腰を叩きつける。

「お゛ッ!?♡♡」

何度も受けてきた刺激だというのに彼は未だに慣れていないようで、背を反らし喉を晒して無様に喘ぐ。かわいくて、もっと聞きたくて、マーキングするように押しつけると、今度は上半身がくたりとして背を丸めてしまった。

「ぁ゛〜〜〜っ♡つよ、つよいっ、ちゅよしゅぎりゅちんぽつよいっ♡」

「あっ、すっ、すみませっ」

「イイっ、からぁ♡やめるなっ、もっとしろぉ♡」

「はいっ」

苦しそうにしてると咄嗟にやめそうになるのだが、そのたびに命じられるので必死に腰を動かす。もし痔とかになったりナカをぶち抜いたりしてしまったら、俺、死なせてもらえるんだろうか。

「おいっ、なまえっ♡なまえ、呼べっ、呼んでぇ♡」

「えっ、あっ、り、リカルド…様」

「様はいらねえよッ♡名前だけ、で…♡」

「はっはい!りか、るど、リカルド…?」

「ッ〜〜〜!!♡♡」

「うああっ…!?」

名前を呼んだ途端強く締めつけられ、耐えるまもなく吐き出してしまう。どうしよう、許可なく中出ししやがってとか言われて殴られたら。そうなる前にめちゃくちゃに犯して前後不覚にしたほうがいいだろうか。青ざめながらも相変わらず息子はそそり立っていて、それに末兄様は荒く息をつきながら色情に染まった表情で笑った。

「っんとに、元気だな、お前のは…♡」

「きょ、恐縮、です」

「んッ!♡」

「ん、ふ…」

倒れこんできた末兄様をキスで迎える。深く交えるキスも好きだが、末兄様は唇だけ触れ合わせるものを特に好んでいるようだった。

「ふ、ははっ…なあ、おい」

「は、い」

「ホテルでヤるのもいいが、そろそろ俺の家に来ないか」

「へっ!?」

「なあ、いいだろぉ…♡」

「そっ、それはもちろん嬉しいというか光栄っ、なんですがッ。お、俺みたいな若輩が、末兄様の家に」

「お前なら構わねえよ。お前は中指の家族で、大事な弟で、俺の………言わせんな、まったく」

俺の、なんだったのだろう。当然聞くことなどできず、末兄様が続きを催促しだしたのでその日はそのまま流してしまい、セックスに没頭していった。

末兄様から婚姻届を見せられ、そのままなし崩し的に同居が始まるのは、二ヶ月後のことである。

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