“世界を変えたい”
──キング・・・おれはジョイボーイが、誰だかわかった。この先おれを、倒した男だ!!!
かつてカイドウさんが話していた言葉を思い出す。
あの人は、そう言っていた。
そして・・・今、おれの前にいるのは・・・まさしくその、"カイドウさんを倒した男"だった。
「・・・どうして、ここに来たんだ」
「そんなの、決まってんだろ!お前を助けにきた!!」
「何故お前がおれを助ける。それに・・・おれはもう逃げる気はないんだ」
目の前の男は、にかっと笑い答える。
だが・・・おれはそれを望んでいない。”こんな場所”の存在を知ってしまったからには・・・終わりにしなければならない。
「なんでだよ!!カイドウだって来てんだぞ?」
「・・・!!カイドウさんは生きているのか!?」
「おう!!だからよ、お前も・・・」
「・・・いや、それでも!!・・・おれにはやらなきゃいけないことがある」
カイドウさんが生きていたことは、嬉しかった。
あれだけの戦いでも死なないなんて、流石はカイドウさんだ・・・そう、思った。
・・・おれがしようとしてることを知ったら、何と言うだろうか。
どうか、許してくれ。
あんたに貰った命・・・ここで使わせてくれ。
「ここは・・・海軍の”兵器”、セラフィムを生み出す工場だ。おれの一族の遺伝子が使われた人造人間が、ここで生み出される」
「・・・・・・」
「おれは・・・世界政府が許せない。だが・・・おれに世界は変えられない。だからせめて・・・この工場を破壊して、おれも死ぬ」
「・・・なんでお前が死ぬんだ」
「そうすれば全部終わるからだ。おれがここで、終わらせなきゃいけないんだ」
かつて・・・おれの身体は、世界政府に利用されていた。
絶滅した一族の生き残りとして、実験体にされた。
日々が苦痛で仕方なかった。
そんな日々から解放してくれたのが、カイドウさんだった。
だが・・・時が経ち。おれはまた、政府の実験施設にいる。
あと何回繰り返せばいい?
しかも・・・実験の末生み出されたのは、おれの遺伝子を利用した兵器だと?
こんな・・・おれだけでなく、先に滅びていったルナーリア族総ての尊厳すら踏みにじる様な真似、許せる訳がない。
もう二度と、そんな兵器を作らせてたまるか。
ならば・・・最後の生き残りであるおれが、この工場ごと散る以外に無いだろう。
腹立たしい事に、奴らの技術で造られたこの工場は簡単には破壊できないし・・・それに、おれの身体も簡単には死なない。
だから・・・おれの身体すら耐えられない程高熱の炎で、纏めて焼き焦がす。
おれも死に・・・忌々しい実験の成果も、全部灰となる。
「・・・終わらせなきゃいけねェ、か」
「そうだ・・・!おれはあの"兵器共"を造るのに利用された、かつて滅んだ一族の生き残りだ!!つまり・・・ここでおれが施設諸共死ねば、それで全部終わる!!そして・・・それは、おれがやらなきゃいけねェことだ!!だから・・・!!」
おれが捕まってしまったばかりに・・・あんな物が造られてしまった。
だからこれは・・・おれがケリをつけなきゃいけないことなんだ。
おれが・・・終止符を──
「──お前はそれでいいのか?」
「!!?」
「命賭けるんなら・・・自分が本当にやりたいことをやれよ!!!」
・・・おれがやりたいこと、だって?
おれがやりたいこと・・・確かに、あるさ。
でも・・・おれには・・・!!
「お前、本当はどうしたいんだよ!!何がしたいんだよ!!しなきゃいけねェことなんかじゃなくて、お前がしたいことを言えよ!!!」
──覚悟は、決めていた筈なんだ。
なのに、目の前の男は・・・おれの心を、揺らした。
おれは・・・諦めていた。
自分には出来ないと、とっくの昔に諦めていた。
でも・・・願いは、心の奥底で燻っていた。
そんな願いを・・・もし、言ってもいいのなら・・・
おれは・・・おれは────!
「自由に、なりたい・・・・・・ッ!!こんな、息も出来ねェような世界を・・・変えたい!!!」
「・・・そうか!わかった!!」
・・・人前で涙を流したのなんて、いつ以来だっただろうか。
そんなおれの、本心の叫びを聞いて・・・あいつは、また笑った。
それを見て、おれは・・・柄にもなく、太陽を思い浮かべていた。
「いこうキング、おれ達もついてる!!世界を一緒に変えてやろう!!!」
「!!」
かつて名を聞いた、ある男の伝説。
その伝説が、目の前の男に重なる。
「──ジョイ・・・ボーイ」
「ん?おれはそんな名前じゃねェぞ??」
「・・・あぁ、知ってる」
涙を拭い、前を向く。
・・・カイドウさん。
きっとあんたもこいつのこと・・・認めてるんだろうな。
「・・・言っておくが、おれはまだお前を『王』と認めた訳じゃねェからな・・・!!あくまで今は、一時的な共闘だ!!」
「ししし!いいよそれで!!まずは・・・ここをブッ壊そう!!!」
その日。
ずっと諦めていた道に・・・光が射した。