丑の刻は過ぎていった

丑の刻は過ぎていった


注意:R18,R18G

未成年者の閲覧はご遠慮ください。

■人斬り鎌ぞう(キラー)×🥗ホーキンス

■キッド×🥗ホーキンス要素あり

■暴力

■性行為

■欠損

■その他、文章力・理解度不足の問題で起こるキャラ崩壊等ご理解いただき、皆様の閲覧と感想をお待ちしてます。


文字数が足りなかったため分割しました。

「野箆坊が丑の刻」のエピローグです。今回に関しては注意書きはほとんど機能しておりませんので、地獄終了後のハッピーな雰囲気をゆったりお楽しみください。

相変わらず皆様概念も流用してます、どうぞよろしくお願いします。

出回想になりますのでお間違えのないように。


 目の前で、どんな目に遭おうと立場を貫き倒した忠臣が倒れていくのに、ただ薄れゆく意識の中でそれを見ているだけ……それでいいのか。ドレークは敵対者とはいえ、この女性に、哀れみを感じずにはいられなかった。何か出来ないものか。体をどうにか動かそうと、力を込める。その時だった。

「ボロッボロだなァ!!だから逃げときゃ良かったってぇのによ……まあテメーらが死のうがそんなの些末なこと、此処にはもっと金になる情報がごろごろ落ちてんだ!!よーし取引しようぜ」

ぼやけた視界だが、この、全てを小馬鹿にしているのが見て取れる口ぶりの主……よく知っている。

「そうだなぁ……9万ベリーでいい!!2人の命にしちゃあ安いモンだろ?」

「……何なんだお前は」

声の主は笑う。

「テメーらは生きてた方が使い勝手が良くてな!後でちゃあんと恩は返してもらう」

ドレークは睨む、図々しい奴だ。

「お前なんかの恩を着るくらいならおれは死ぬ」

「はぁー??本当にバカだなァ〜生きてこそだ人生は!一美!!怪我人だ、運べ!」

「イビ!!」

「な、何を!!」

2人はナンバーズに持ち上げられた。男はしたり顔で煙管を吹かしながら、鬼ヶ島を練り歩く。

「医者なら心配無しだ、寝込み襲うような奴にゃ任せねえよォ!襲う前に死んじまったら話にならねぇがな〜!!」

「……なぜ助ける」

「使い勝手の良い駒は、易々と捨てるもんじゃないってこと!!」

「お前らしい……な……」

ドレークは意識を失った。オンエア海賊団船長スクラッチメン・アプー。その辺にいる人間が死んでいようと別にどうでも良い話、ビッグネームが死んでいればスクープだ、と写真を撮る。しかし、この2人は絶妙なところ、ギリギリだが、死んでいるよりも生きている方が有益である、と判断され、救助されている。要するにこの不思議な光景は、彼の気まぐれでしかない。

「フーーッ……オラッチ優し〜」

アプーは何の含みも無くふざけたことを言い放ち、煙をふわふわと燻らせる。

「やりきった後の煙草ってのはうめーもんだ!!なあ一美!」

「イビ?」

「あーよそ見すんな!!人乗せてんだぞ!!」

「イビビィ……」

一美と呼ばれたナンバーズの1人は、不服そうな顔で歩を進めた。

「ホーキンス!!!」

「……ッ……2人とも……会いたかった!!」

共々、抱きしめられる。

「お、おれだってえ」

キッドの顔は決壊寸前だ。

「どうやってあの怪我から……それに、医者は……」

キラーは疑念の方が増している。

「えっと……」

ホーキンスは言い淀む。

「とにかく生きてただけでいいじゃねえか!!ホーキンスゥ……色々酷いこと言ってごめんなァ!!お前のことも知らないで!!ごめんなあああ!!」

キッドは普段の口調も表情もかなぐり捨てて、自分を抱きしめるホーキンスにぐちゃぐちゃの顔で謝る。

「ファッファッファッ……おれも……左腕、顔の傷も、それに今までのことも、本当に……すまない!!」

誘われたか、キラーも涙声だ。大の男2人が女性に抱かれながらおんおんと泣いている姿は、港にいるクルー、仲間達を大変驚かせている。

「もう良いのよ」

ホーキンスはキッドの頭を撫で、クスッと笑う。

「すごい顔」

「だっで!!!コイツが死んだとが言っできでよおおお!!!」

キッドは泣きながらキラーを指差すと、ホーキンスは笑顔でキラーに言う。

「ごめんなさい、死ねなかったわ」

「それで良いんだ……ファッファッファッ……」

3人は喜びを噛み締める。

「……すーーッ……おい、キラーあっち行け!!ホーキンスと……は、話がある!!」

キッドはまだ涙も晴れない真っ赤な目でキラーを追い払った。

「どうしたのキッド、せっかく会えたのよ?みんなで話しましょうよ」

「だーー!!そ、その、な、2人じゃ、ない、と、話せないこと!!」

キッドはドギマギしながら大袈裟に身振り手振りをして話している。妙に可笑しな様子、とホーキンスは笑う。

「どんな話?」

「……ッ!!……ぐぬうぅぅ……」

「大丈夫??頭が痛いの!?も、もう藁人形は使ってないけれど!」

告白というものが苦手だ、と頭を抑えるキッドに、ホーキンスは声をかける。

「え?まさかあの頭痛って……おいキラー!!聞いてねぇぞー!!」

「ごめんね……どうしてもしなくちゃいけなくて……」

「ファッファッファッ!!許してやってくれ!」

「お、おれはあの時ビッグマムと戦ってたんだぞ!!マジで終わったかと思ったんだからな!!」

「ごめんなさい……」

「い、いや、そんなしんみりすんな!ただ、おお、落とし前だけは……付けさせてもらう!!」

キッドはもうなるようになれ!と、ホーキンスの頬に右手を置き、くいと持ち上げる。

「え?キッ……」

瞬間だった。キッドはホーキンスの言葉が言い終わらない内に、唇を包み込むようにして接吻をした。当然、衆目の中である。

「「「えーーーーーッ!!??」」」

港の者達は一斉に叫んだ。

「うわァァァァ!!!!」

「キッドの頭ァァァ!!!」

「キャプテン見てよおおおお!!!すごいことしてるうう!!!」

つ……と唇を離す。ヤベェ、手汗まみれだ、とホーキンスの頬に触れていた手を即座に離す。

「キッド……」

目を丸くして真っ赤な顔になったホーキンスを、じっと見て、汗を垂らしながらキッドは叫んだ。

「お前が好きだッ!!!」

「「「えーーーーーッ!!??」」」

港の者達は一斉に叫んだ。

「頭ァァ!!ィやったあああ!!!」

キッド海賊団のクルー達は歓声を上げている。

ホーキンスは口を抑え、

「あ……えっ……えと」

と、どきまぎする。

「き、気持ちは、今伝えなくていい。それに、お前が好きなのはアイツ……なんだろ」

「そうね」

彼女は言った……やっぱり、そうか。

「キラーに遅れは取らねえ!絶対に追いついてみせる」

キッドは真っ直ぐな眼差しで伝える。

「……良いわ、待ってあげる」

その瞳の輝きに、ホーキンスはしょうがない人ね、と思う。ただ、今結論を出すのは確かに早すぎるかもしれない、と、少し、キッドに譲ることにした。

「相棒!!これで引き分けだろ!!」

キッドは満面の笑みで、少し離れたところで見ていたキラーに向かって声を上げる。

「ファッファッファッ!まだ遠いぜ!」

腕を組んでいるキラーはキッドを軽く煽る。

「ほんと、面白い2人……フフッ」

ホーキンスは笑いながら、落ちる涙を指で拭う……占いはこの先の運命を全て決めているものだと、1パーセントは99パーセントだと、信じていた。ホーキンスの思いは、自分の生存によって確かに否定されたのだが……生き方を否定されたとは思えないくらいに、今感じているのは、ただ、嬉しいという気持ちだけだ。

「船長ォォォォォ!!!」

「えっ!」

出国させたはずのホーキンス海賊団の船員達だ。ドヤドヤと港に押し寄せる。

「うわあああ良かったああああ!!!船長がいるよおおお!!!」

「ずっと心配してたんです!!!」

「みんな……出て行くように言ったじゃない」

船員達に抱きしめられ、ホーキンスは困惑しながらも笑顔で言う。

「そんなこと出来るはずないでしょお!!」

船員の1人が目を潤ませながら言う。

「おれ達はいつだって船長ファースト!」

「船長が笑ってる……良かっだ……久しぶりに見た……うおおおおん!!」

「天国だろうが地獄だろうがどうだっていい、何処へでも共について行くと決めているんです!」

静かにファウストが近づき、頬擦りをする。

「私もみんなが残ってくれて……嬉じい!!!」

ホーキンスは滝のように大粒の、今まで苦しみながら流したものとは違う、喜びの涙を流す。ずっと、一縷の可能性を見出してでも自分のことを信じてくれた船員達を受け止め、全てからの解放の味にしばらくの間、浸った。

「それで……みんな、一体どこにいたの?」

「それは……」

船員達は言い淀む。何やら言いづらい事情があるようだ。

「ねえ、もしかして……私もあなた達も……」

「アッパッパッパ〜〜!!」

忌々しい笑い声と共に巨人が現れる。

「アプー!!!」

「ナンバーズ!!?」

ナンバーズの手の上に、新聞を持って機嫌良く笑うアプーが鎮座していた。

「テメー!!!何しに来やがった!!」

「この期に及んで、お前は……!!!」

キッドとキラーはホーキンスの目の前に颯爽と立ち、一触即発の雰囲気になりつつある。

「おいおい!!今はそれより大事なことがあるんだ!だからオラッチが来てやった!まだわかんねーの??」

「何だと!!やるかぁ!!!」

キッドは恨みを込め、拳をぐっと握りしめた。

「ごめんキッド!!キラー!!!」

「……あ?」

ホーキンスがそれを制止する。

「今は、やめてあげて!あの日、鬼ヶ島で私を助けてくれたのは……アプーなの!」

「はあああああ!?」

キッドは、頬杖をついて呆れた表情でこっちを見てくるアプーと、申し訳なさそうな顔でこっちを見ているホーキンスとを見比べた。

「船長もでしたか……すみません……私達もこの男に……」

「はあああああ!?」

愛する女性の頼み……仕方ねえ、キッドは渋々、拳を収める。

「まァ聞けよバカ集団!」

「誰がバカだ!!」

「Tone down〜新聞屋から、見事四皇を倒したテメーらへのお知らせってやつだ!!どこからどう伝わったのか知らね〜〜が」

「お前だろうっとうしい野郎だ!!」

「出たぜ気になる"懸賞金"♫アッパッパッパ!!見るか?」

アプーはひょいと新聞を投げる。

「全部書いてある!!お前らの"懸賞金額"と……新しく「海の皇帝」と呼ばれる者達の名前が!!!」

キッドはそれを手に取ってまじまじと見た。

「頭!!!懸賞金額は……」

「麦わら……!!」

握りしめた紙には、新しい「四皇」の名前が刻まれている。

「行ってくる」

新聞をキラーに投げ渡すと、キッドは目にも止まらぬ速さで走り去っていった。

「キラー……何が書かれているの?」

「これは!!みんな聞け!!キッドの懸賞金!!30億ベリーだ!!!」

「「「えーーーーーッ!!??」」」

「うおおおおおお!!!やった!!!頭がやったぞおおおお!!!」

「今日は最高の日だァァァァ!!!」

ホーキンスは言葉も出ないくらい驚いている。

「キャプテンのも聞いて良いですか!」

期待に目をキラキラさせ、キラーの元へ近づいてくる者がいた。

「見ろ」

「!!!キャプテン!!!キャプテーーーン!!!」

ベポは新聞を持ったまま、ロー達の所へ急ぎ走っていった。キラーは、ホーキンスの傍らに座り込んだ。

「……本当に倒せたのね」

「ファッファッ……キッドだからな」

「ごめんね。私、あなた達みたいに立ち向かうことができなかった。羨ましいわ」

キラーは下を向くホーキンスの頭を撫でる。

「そんなことを言うな。お前だってやるだけのことはやったんだ」

「キラー……」

ホーキンスはキラーの背中に腕を回す。

「誰にも文句は言わせない」

キラーもホーキンスの背中に触れ、顔を寄せて抱き合った。

「うちの船長に何やってるんです?」

いつのまにかホーキンス海賊団のクルー達に取り囲まれる。ホーキンスは照れながら、伝えた。

「みんな怒らないで。大丈夫よ、だって私……キラーのこと、愛してるから」

クルー達は一瞬、石像のように固まった。動き出したと思ったら全員離れて何か話し合い、そして、げっそりした様子で戻ってくる。

「キラーさん」

その中でも、クルーの1人は引き締まった顔で言った。

「認めましょう……ただし!!船長泣かしたら許しませんからね」

「絶対にそんなことはしない。約束しよう!ファッファッファッ!」

それを聞くと、そのクルーの顔はみるみるうちに元気を失っていった。

「そうか……遂に船長も……」

「ああ……良いことかもしれないけれど……心配だろ……」

「心配だ……」

クルー達は項垂れた様子でとぼとぼと去っていく。見かねたアプーがナンバーズの手から飛び降りると、クルーの背中をばしばしと叩き、ニヤニヤしながらその姿を煽った。

「アッパッパ!!!男出来たくれー何だってんだよ!!ほんっと、テメーんとこの船長がダメになる理由が見て取れるなァァ!!」

「アプーさん……」

「あなただけが!!頼りです!!!」

反応が思い通りに行くとは限らないものだ。

「は?」

「あなたは船長の命を救った!!」

「あなたはホーキンスさんを裏切ったゴミ屑野郎で未だに許し難いですが!!ケダモノではありませんでした!!!あなたは私達の、ただ1人の聖域です!!!」

「ありがたや!!!ありがたや!!」

クルー達が希望に目を輝かせながら縋りつこうとするので、悪魔はむず痒くなってホーキンスの所に逃げてきた。

「何なんだよアイツら!!気持ち悪ィなァ藪から棒に!」

「フフフ、みんな……感謝してるのよ、あなたに」

「感謝みてーな生優しいもんに見えるかアレがァ!!!拝んできたぞ!?……ったく同盟ん時から思ってたがよォ、テメーもテメーの海賊団も頭おかしすぎるだろ、調子狂うわ」

「でも、そんな私達を助けてくれたんでしょ?」

「まあな!」

「ありがとう」

アプーは驚き、ホーキンスの顔を見た。ホーキンスがニコリと屈託のない笑顔を向けるので、バツが悪そうに目を逸らし煙管を持つ、ような動作を取る。風が吹く。

「情報屋はな……騙して、騙されて、そういう姿しか見ねぇ」

「そうみたいね」

「礼なんて言えば、また罠にかけられるだけだ」

ホーキンスは、その言葉の静けさに、どこか意味ありげで物悲しいものを感じた。

「心配しないで」

「してねーよ」

「じゃあこれからちょっとだけ心配してくれる?」

「しない」

「頭の隅にでも」

「もう満員だ」

アプーはホーキンスの言葉を、一つずつ丁寧に否定していく。

「ねえキラー。今日ね、宴があるんですって!一緒に行きましょう」

「ファッファッ、勿論だ!キッドも今は"花の都"だろう。おまえ達も行くぞ!!!」

「うおおおお!!ちょうどいい!!お祝いだァーーー!!ふぁっふぁっふぁー!!」

キッド海賊団が湧く中、ホーキンスはちら、と隣を見て笑いかけた。

「あなたもよ、アプー。キッドには私が言っておくから……ね?」

「嫌だよ」

「どうしてよー!久しぶりに同盟で集まれるのに!こんな日もう無いかもしれないのにー!!」

ホーキンスは頬を膨らませる。

「おれ達が同盟なんて組んだか?アッパッパ〜」

「……またそうやって逃げる。ずるい」

アプーは溜息をひとつつくと、立ち上がって、さっさと何処かへ歩いていく……、

「ちょ、ちょっと待って!」

「しつけー!!」

「忘れない内に言っておきたいの!……部屋に行った時、私、あなたのこと悪く言いすぎたと思ってる。確かにあなたは酷い人よ。けれど、それでも……あそこまで言うことはなかったんじゃないかって!だって、あなたも!どんな理由かはわからないけれど、こうして私を助けてくれた!それだけは本当でしょう!!だから……だから!」

風が吹く……甘ったるいな。

「ごめんなさい!!」

アプーは何も言わず、振り向きもせずに歩いていく。

「ホーキンス」

キラーは、下唇をぎゅっと噛み締めて涙を堪えている彼女の顔を見た。

「あ……アプー……!!」

表情はすぐに明るくなった。アプーの方に目をやると、後ろを向いたまま、その長い腕を上げ、指でゴンフィンガーを作って小さく振る姿が見える。

「あれは……許すってことで、いいの?」

キラーに訊ねる。

「アイツなら、悪いとすら思ってないだろう」

「そうよね」

「行くか」

2人は笑って立ち上がり、花の都へ。

「今日はなんでもタダらしいわ」

「それは良い」

「千本引きっていう、一本の線を選んでそこに繋がれた景品を貰う遊びがあるんですって」

「一緒にやろう」

「本当?嬉しい!何が当たるかしら……私が狙い通りの景品を引く確率は45パーセント、どちらに転んでもおかしくないわ」

「占ったのか」

「あんまり楽しみだったから……」

「見ればわかる、さっきから顔がにやつきっぱなしだ」

「えっ!そんなに!?分からなかったぁ……そ、そういうキラーは、どうなると思う?」

「ファッファッファッ!やるまでわからないが、良いものが当たれば嬉しいよ」

「そうね」

「ああ」

-おわり-

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