丑の刻に噂話
注意:R18,R18G
未成年者の閲覧はご遠慮ください。
後書き終わったらSS
ネタバレがっつり
あくまでIFですから肩の力を抜いて。
捏造オブ捏造オブ捏造
エピローグを先に見るかこれを先に見るか、スッキリしたい人はこれを先に見てください。地獄カモンでしたらエピローグ先で。
まずは噂話から。
〈表題〉
丑の刻、ひそひそと。噂話を始める。やけに真実味を帯びる……ここに来てくれ、全てがある、と。
「夜、女は木に藁人形をあてがった。釘を刺し、カーン、カーン……と、木槌で」
「夜、男は笑いながら人を斬る。素顔を見せることが面を取ることになるのだ」
「それは正に」
「それ正に」
「のっぺらぼう」
「丑の刻」
「野箆坊が丑の刻」
「それが表題」
今回は手短に話します。
キラーはマスクを外さないのが普通だけど、鎌ホ🥗だからこそ、最後にマスクを外して顔合わせができたと思います。そういうところが鎌ホ🥗尊いんです。
この話を作る上で参考にしたのは「少女椿」のアニメ版のみどりと鞭棄の関係性です。あくまで雰囲気をふわっとその話に寄せただけで、結構外れてはいます。でも、ホーキンスちゃんが他の遊女を見下してたり気が大きくなってたりするのは、少女椿の生々しいみどりちゃんを感じながら書きました。
丑の刻参りについてですが、頭突きのシーンがそれっぽいなと思って、丑の刻参りをするホーちゃんの怨念こもった美しい絵面を想像しながら書きました。絵は画力不足で描けないポロッ
性行為の描写ですが、認めますよ私の力不足です。もっと皆さんのようにえちいシーン書きたかったよ…。情念の交錯を書いている間にえっち書くのすっかり忘れてしまいました。
実は、自らネタにしておいてアレですが、自分の作品を「地獄」と自分で呼ぶのは若干違うかな、と思ってはいますね。私は苦しい中でもささやかな幸せを感じ、そうやって「現世」で生きている人達を書いているので。とはいえ皆さんは本気で耳に入れなくても良いんです。読んで感じたものが全てです。見ていただいた、感想をくれた全ての人に大感謝!
アプーは煙管、オロチは扇子、と、悪役は小物をそれぞれ印象的に書きました。
煙管持ったアプーは色気さえある、この作品で1番落ち着いてたんじゃないでしょうか。実は、その設定に加えて、老練で大人っぽく冷たい性格を意識的に足しています。原作でたまーに、このアプー地味にかっこよくね?ってコマがあるじゃないですか。それを寄せ集めたのがこの作品のアプーです。
オロチが扇子を鎌ぞうの肩にペチン、とするシーンは去年放送していた大河ドラマ「鎌倉殿の13人」で源頼朝が主人公の小四郎にやっていたのを、圧をかけるシーンはこうやればいのか!と思って流用させていただきました。オロチのセリフ「誉れと思え」は自作ながら結構気に入ってます。圧倒的かつ絶対的な悪役、そして「男」としての存在感を描写しました。立場を使って女を食い荒らし、愛もないのに執着はするという、ある種の「弱さ」ですらある権威と性の象徴として書きました。
2つの♢と♦︎ですが、白ダイヤが回想、黒ダイヤが敵サイドという機械的な使い分けでした。ただ、悲しいすれ違いを認識させようと思って、中編の最後だけホーキンスに黒ダイヤを使わせていただきました。
当初の予定だとホーキンスはそのまま死んでいましたが、カタルシスは欲しかったので大幅に変更させていただきました。
さて、ここで終わり。
皆様、IFの世界のお時間です。せっかくエピローグで天国まで来て喜んでいた皆様は、これから残念ながら地獄、しかもマジで胸糞悪くなるバッドエンドを見ることになるのですが…どっちを先に見るかはあなた次第です。一緒に楽しみましょう。
注意事項は全てこちらのSSのものです。がっつりR18です、人前で読む時気をつけて。後、人によっては、ホラーです。いや普通にホラーかな?最後とか。
ここだけ「野箆坊が丑の刻」+
アプー→ホーキンス🥗片想いで「狂騒の海」のアプー殺害未遂後の世界観とする
ただし
ドレークはこの世界線では一切アプーと接触しないものとする(読んだ人はこの文言で察してください)
何が何だかわからない方は、私の前作であり処女作の「北海鳴らず」「狂騒の海」を読んでみてください。閲覧は注意してください。下記リンクから、または前スレの182,183からどうぞ。
https://telegra.ph/北海鳴らず-01-06
https://telegra.ph/北海鳴らず-01-06-2
https://telegra.ph/北海鳴らず-01-09
https://telegra.ph/狂騒の海-01-07
はじまりはじまり
一応事前に。
Fineとは、今作では楽譜上の終止記号の一種という意味になります。
言葉を失った。
「……ファッファッ」
丑の刻、夜更けだろう。病棟で、寝込みを襲うつもりだった。アプーは起きていた。しかも、気配に何も返さずに……ただ、窓を見ているだけ。
「おれの女にひでぇこと言ったそうじゃねえか」
鎌ぞうが言って近づくと、眼鏡越しの目がちら、と鎌ぞうを見つめた。鎌ぞうは全身が芯まで冷えるような強い怖気を感じた。何だ、この目は……何かがおかしい、ということをヒシヒシと感じ始める。アプーは、
「何をしに来た」
と、独り言のように呟く。その声は大変しゃがれているので、鎌ぞうは動揺させられた。目の前にいる人物が本当に、自分が「ホーキンスの代わり」に殺しに行ったスクラッチメン・アプーその人なのか、と、信じられなくなりつつある程に、気味の悪い光景だった。話が違うぞホーキンス、と鎌ぞうは心の内で呟きながら、アプーに言い放つ。
「ファッファッファッ!お前を殺しに来たんだよ!」
その言葉を聞いたアプーは、冷たい瞳になにやら光を宿らせた。そして、
「……あはっ」
「アプー……?」
「……あは……あははははハハハッ……ハァ……ハァ……ふふふっ……はははは……」
聞き慣れたものとは全く違う……乾いた、力のない笑い声を上げた。
「何故笑う」
恐怖を感じながらも、鎌ぞうは問う。その時だった。さっきまで布団をかけて座っていたアプーは、徐に立ち上がり、鎌ぞうの方に向かって、おぼつかない足取りで歩いてくる。それはまるで、糸に手繰り寄せられているような動きだ。
「……しいぃ」
「聞こえねえ」
「嬉しい」
アプーは笑顔でそう答える。奴は確かに、いつも笑ってた、だがこの笑いは違う。近づいてくると段々気づく……随分と痩せこけて、顔色も血の気がなくなっている……まるで、幽霊のように。
「嬉しい……嬉しい……嬉しい……嬉しい……うれしい」
「な……お、おい……」
「うれしい……うれしい……うれしい……」
よたよたとしながらそれは来る。幾度も同じことを繰り返しながらそれは来る。そして、鎌ぞうの着物の袖をガッと、掴んだ。
「そうだ」
アプーは言う。骨さえ見えそうな手、ずっと小さく痙攣しているのが尚更不気味だった。
「お前」
「何が……」
「夢」
「何を言っているんだ」
「夢……おれ……なんだ……これ……」
「おい!!」
「すごく……はははは……寝てる……久しぶり……夢……よお……キラー……夢……キラー……」
脈絡のない言葉、その狂気に鎌ぞうは言葉を失う。
「遅かった……ホーキンス……あそこにいる」
指差した先は何もない、壁だ。
「綺麗……楽しいな……遊び……懐かしい……」
いよいよ理解が出来なくなってきたので、鎌ぞうは鎌を手持ち、アプーの首にかける。
「遺言は良いのか、お前はここで死ぬんだぞ」
「……ははは……現実……ならないか」
「これが現実だ」
「違う」
違う……?先程まで途切れだったその口調はハッキリと、断言するようだった。
「夢までおれを否定するな」
「ファッファッ、夢じゃないぞ、目ついてんのか」
「夢らしくしてろ」
「だから夢じゃな」
「お前らちょっと黙ってろって!!!今キラーと話してんだよ!!!」
突然、アプーは後ろを向いて、楽しそうに叫ぶ。鎌ぞうはぞくりとする……そこには、誰もいないだろ。
「ああごめんなぁ、コイツらいつもうるさいんだ」
「ファッファッファッ……お前とおれだけだろ」
「何言ってんだ?ほら、手を叩いて大爆笑だ!今からのことをずっと楽しみにしてたんだとよ。くひひ、良いんじゃねえかぁ?」
「お前……」
遂に、聞かざるを得なくなる。
「誰だ?」
「どうしようもないくらいおれだ」
「お前はアプーなのか!??ファッファッファッファッ!!どう考えてもおれの知ってるお前に見えない!!アプーだったらそう言ってくれないか!」
何だ、その目は……あれほど殺したいと思っていた人間だったのに、鎌ぞうは「この男」がアプーかどうかということの方が気になった。殺す以前の問題だ。
「忘れてた」
どうして、イエスノー形式の質問でそうなる。何だ、それは答えなのか?独り言なのか?思考がぐるぐると回りだす。
「キラーはもっと、静かに来るんだった」
「静かに?ファッファッ……何が言いたい」
「静かに殺しに来る」
「……アプー?」
「あああああ難しいどうすれば」
突然アプーはしゃがみ込んで頭を抱えた。
「アプー」
「うあああああ」
「おい!!!」
いい加減、こんな茶番やってられるか。鎌ぞうはアプーの横腹に蹴りを入れた。
「……あ……あ……」
横たわる、口角が上がる。すると、
「お、お前!!!ファッファッファッ!!」
アプーは過呼吸を起こした。割れんばかりの笑い声を上げながら、ゼーゼー息をして、床をのたうち回っている。
「一体……ファッファッどうしたんだお前は!!」
目をガッと開いているのに、どこを見つめてるのかさえ分からない、どうにか押さえつけすると暴れて、ただでさえ長い手がこちらの顔にガッと襲いかかってくるので洒落にならない。
「……クソ……埒が開かない」
鎌ぞうは、一思い、アプーから離れるとその大鎌を胸に刺した。ゴバッ、と血が溢れ出す。病人のための白い衣服が、鮮血で赤く染まっていく。
「あ……」
アプーは胸を触る。
「温かい……」
なぜか、先ほどまでの彼の過呼吸がゆっくりと落ち着いていく。驚いた顔をしながら、べっとりと血のついた手を見つめ、突然だった。
「待て!何やってんだ!!」
アプーは、血のついた手を口に含んだ。鎌ぞうが急いで手首を握って離す。目が合った。
「……あ……キラー……」
アプーは血がついていない方の手でこちらの輪郭を、確かめるように触っている。鎌ぞうは最早、その様子を黙って見ていることしか出来ない。
「おれだ」
「キラー……キラーだ……」
アプーの目から、雫がぽろぽろとこぼれた。血は広がる。
「何だ?ファッファッ何故泣く」
「おれを殺しに来たんだろ」
「怖いのか?」
「嬉しい……」
そう言ってアプーは背中に、愛おしそうに手を回した……気持ち悪くて仕方がない。
「ファッファッファッファッ……頭大丈夫か」
「感覚だ……体がある……今から……本当に殺される……」
恍惚とした表情、それはホーキンスから聞いていた彼の姿から絶え間なく離れていくだけだ。
「……ホーキンスと何があった。アイツはお前を殺せなかったと泣いていたが、実際は違うのか」
その言葉を聞き、びく、と目の下が痙攣する。笑う唇が震えている。
「殺してもらえなかった」
アプーは声を震わせて絞り出すようにそう言うと、呻きながら泣き出してしまう。
「……ファッファッ」
鎌ぞうは、何が何だかよく分からないとはいえ、ただ、なんとなく哀れに思えてきた。
「おれが代わりに殺しに来た、安心しろ」
その言葉を聞き、泣き声はひときわ大きくなった。アプーが泣いているのも見たことがなかった。人前で、しかも自分の前でここまでみっともない泣き方をする人物とすら思えなかった。鎌ぞうは未だ、目の前の人物の正体を疑っている。
「キラー……嬉しい……キラー……」
「おれは人斬り鎌ぞうだ。何故キラーと呼ぶ、ファッファッファッ」
「殺しに来るのなら、キラーだろ」
アプーは泣きながら笑って起き上がった。そして、座って、顎をかくんと上げた。
「斬れ」
なんだ、この潔さは……。
「ファッファッ、首じゃねえ、胴を切る。流れる血と痛みで苦しみながら野垂れ死ぬのが、おれの獲物だ」
「どんなでもいいから早くやれよ」
訝しむ。
「何も仕込んでないよな」
「仕込んでない」
素直にそう答えるアプーに、鎌ぞうはだんだんとイライラしてくる。
「ファッファッファッ……おれはお前をなぁ、もう信じられないんだ!!ずっと裏切ってきた奴の言葉なんざ出まかせにしか聞こえない!ファッファッ……」
「五月蝿え」
「!」
「頼む、これだけでも……信じろよ」
アプーの目からまた、涙が落ちてゆく。もうやるしかない、今が1番の好機なんだ。鎌を振り下ろした。
「嘘だろ」
思わず、口が滑る。今まで斬ってきた者達よりは頑強ではあった。しかし、アプーは確かに、今までの人間と同じように浴びた。全く、何一つ、抵抗することも避けることも、覇気すら使っていない。大量の血に塗れながら、アプーは、倒れた。
「何故……ファッファッ……何故そうなる!!!」
怒りのまま叫ぶ。こんな味気ない末路であってたまるか。鎌ぞうは、起き上がってこないアプーに駆け寄って"何か"を期待した。
「これ……ホーキンスに……おれの部屋の鍵……聞け……」
「?」
「ホーキンスは……あの日の夜……おれに呼ばれ……強姦された」
「なっ……」
「恨みで……部屋を物色……して……黒炭カン十郎の内通……侍達に伝える計画書……こっち、棚の鍵……6番目……6番目、だ……間違えるな……ホーキンスは……それ……見つけた」
鎌ぞうは気づいた。これは本当のことではないと。この殺しの正当性を示す、脚本を話されている、と。
「ずっと……この時のため……書いてた……筆跡を見れば……おれだと……ふっ……かはっ……」
アプーは吐血した。あゝどうすれば、大きく崩れていく期待を前に何も出来ない。
「決行の日付の候補は複数……今日もある……精神病を装いここから逃げ出して……そうだ、一刻を争う……だから鎌ぞうを使って……殺した……アッパッパ……どうよ」
アプーは、血を口から垂れ流しながら、誇らしげな顔をしている。鎌ぞうは笑う。笑いながら問う。
「ホーキンスのためか」
アプーは頷いた。
「何でそこまで!!」
「愛してるんだ……」
鎌ぞうは、耳を疑った。しかし、何もふざけていない、何の嘘でもない、本心だと分かった。
「アイツには……内緒……な」
「そんな……ファッファッ……ファッファッファッ!!……だったら……最初から……ファッファッファッファッ!!」
「気づいた時……もう……遅すぎた」
「ファッファッファッ……だが死んだら意味がねえ!!」
不思議なまでに、庇うような言葉ばかり出てくる。
「おれの……死は……アイツにとって意味がある……」
「お前、本当に……!ファッファッ……何言ってんだ。お前がわからん」
「アイツは泣いて喜ぶ……」
「そうだとしても!!」
何故か涙が出てくる鎌ぞうを見て、アプーは手の甲で、顔についた返り血ごとそれを拭った。
「なあ……好きなんだろ……おれのダチ」
キラーは、はっとする。
「ファッファッファッ、何の話だ」
「アルバム……レコーディング……終わったって」
「それは」
「グループの方な……半年後に出る」
「そうか……楽しみだ、ファッファッ」
同盟関係にあった時、思えば……アプーとは、色々音楽のことを喋っていた。こんなことをいつも話していた。自分が趣味でやっているものに、当事者として様々な情報をくれたのがアプーだった。
「ホーキンス……を……幸せに……して……やって……くれ……お前は……出来る」
もう、息は絶えようとしている。遺言か……これが遺言?
「ファッファッ!ああ!絶対、おれが幸せに……おい!!ファッファッファッ……こ、この涙、何でっファッファッ!!お前なんかのために!!!おれが泣いてるんだ!!」
「アッパ……パ……知ら……ね……バカ……だか……ら……だろ……バカに……付ける……おん……がく……聴いてけ……スクラ〜ッチ……」
ゴンフィンガーが作られる、攻撃の前動作と掛け声だ。キラーは何が来る、と耳を少し抑え、身構えた。アプーは手を伸ばし、キラーの胸を拳で、軽く叩いた。
「爆♪」
その音は弱く、何も起こらないまま手は力を失って、開かれ、倒れていく。
「……pp(ピアニッシモ)……」
アプーはそう呟いて、動かなくなった。キラーは呆然とした。因縁を果たした喜びは体に感触として残るが、霞んでいく。笑った。涙を流しながら、しばらく笑った。
ホーキンスは、書類を捲る。綿密な書き方が為されていた。これは、普通に見つかったら反逆の意思があると言われてもおかしくない。自分でもギリギリ見て良さそうなレベルの書類とその写し、カン十郎についての細々とした情報が全て彼の字で記されている。
「……これを出すのね」
夜が明けようとしている。ホーキンスは書類を閉じると、裸の体を鎌ぞうの体に添え、元気のない様子で続ける。
「なんだか、せっかく殺してくれたのに……ごめんなさい。良い気分になれなくて」
ホーキンスは何故だか釈然としない。どうやら、あの男はキラーに対しても抵抗せずに、攻撃を浴びて死んだらしい。なんなのよ、最後までそうやって馬鹿にするの……むかつく気持ちを埋めるように、キラーの鎖骨に口づけをする。キラーはホーキンスの柔らかな髪を、飾りを解かせた髪を触る。
「私、どうしちゃったのかしら」
「おれも同じ気分だよ」
ホーキンスの柔らかい背中を愛撫する。
「ん……っ」
手を、胸に移す。
「あ……あっ」
鎌ぞうとしてオロチに使われていること、SMILEで失敗して笑うことしかできなくなったこと、ホーキンスは全て知っている。だから、此処だけでも「キラー」として居られる。ここは安息の地、もう、女を殴る必要も無い。
「はぁ……はぁっ」
アプーがそれを、何もかもホーキンスに教えたからだ。
「キラー……ねえ、私……」
「どうした」
ホーキンスは感情を塗り潰す。心臓の高鳴り、こんなこと忘れてしまおう、と、胸を撫でる手の上に自分の手を重ね、下の方に……自分の恥部に触れさせる。
「我慢……出来ない……」
「今日はもう1回やろうか」
「ふふ……うん」
2人は接吻をし、舌を絡め合い、お互いの性器を愛撫する。ホーキンスは固くなっていくペニスを持ち、その血管の凹凸に気持ちを高めていく。
「はぁ……♡キラーも、我慢してたのね」
「ああ……指、挿れるぞ」
「……んっ……あぁぁ♡」
膣は柔らかくキラーの指を抱き込む。分泌された粘っこい液で、上下させる度に濡らしていく。
「指だけでイッてしまいそうだな」
止めて、また動かす。
「はぁ……はぁ……もう……焦らさないで♡私だって」
仕返しとばかりに亀頭をすりすりと擦ると、キラーは、
「ファッファッファッ……急に触るなよ」
と前屈みになって逃げようとする。
「フフフ、可愛い」
もう一度、舌を絡め合う。糸を引く、唇が離れると、ホーキンスは布団の上に倒れ、手を広げ、微笑む。
「おいで」
キラーは生唾を飲み込んだ。どくどく、と心臓が高鳴り、すっかり勃起しきったペニスを、広がる足の隙間へ、ヴァギナへ挿れていく。
「ん……♡んっ……あ……あっ♡」
「はぁ……はぁ……」
熱い……中でペニスをすり合わせる。息を吸う度にきゅう、と膣が締まる。その感覚に体をぶるりと震わせ、2人は性的な本能と、お互いを惹く、止まない愛に溶けていく。動かすほどに、深みへ。
「あんっ♡や、やだ……キラー……そこ……」
嫌だ、と言う時はいつだって逆、キラーは少し体勢を変える。奥の方までぐっ、とペニスを差し込んだ。
「んっ……く……〜〜〜〜ッ♡♡♡」
「お、ファッファッ!わっ!?」
突然、膣をグッと締め付けてきたので、キラーは驚いて素っ頓狂な声を上げた。
「おいホーキンス」
ホーキンスは肩で息をして、閉じていた目をゆっくり開いて、恥ずかしそうに笑った。
「ごめんなさい……イッちゃって……だって、キラーがすごい、奥まで♡」
「仕方ない、な!」
「ああああん♡ちょっ……と待ってあっ♡まっまだイッて……んうう〜〜〜♡」
ホーキンスはつい、反射的にだめ、待ってと言ってしまうが、キラーは全然、待ってくれない。ずっとこうやって、意地悪してくる……でも、それが嬉しくて。
「ああああっ♡んっああキラーっきらぁぁ♡♡好き……好きいい♡♡」
激しく打ちつけられる、抑えきれない嬌声、キラーはホーキンスの唇に戸を立てた。
「ファッファッ、静かに。そんな大きな声でおれを呼んだらダメだろ」
「はぁ……うふふ♡はぁ……ごめんなさい……」
「お仕置き」
「はぁっ♡はぁっあっあっいやぁぁっ激しい♡き……かま、ぞ……うぅ♡♡」
「ファッファッ……ふーっ……ふっ……危なかったな……」
「ほんとっ……酷い♡」
汗を流しながら2人は笑い、行為を続ける。
キラーの中で溜まっていく射精感は、行為を佳境へと至らせてきた。
「そ、そろそろっ……だ……くっ……」
ホーキンスのことも考えなくてはいけない気持ちは、ずっとあった。だが、全てを知られる前から、鎌ぞうとして彼女を相手した時からそうだ。欲望が高まるにつれて段々なりふり構わなくなってくる。自分勝手になっていく。ただ、射精がしたい、その感情に支配される。なによりも、彼女の中は……本当に、気持ち良かった。
「あぁぁっわ、私もっやばいっかも……イき、そうぅ♡」
全てが支配されても、ただひとつ抗っていることがある。それは……中に出さない、ということ。本当はこの温かい膣の中に自分の、欲という欲を何もかもぶちまけてやりたくて仕方がない。だが、彼女にそれをすれば、彼女の誇りも、彼女の貫き通した意志も全て無駄になってしまう……いずれ……この地獄から解放される時まで「それ」は取っておくと、決めているのだ。
「はあ……出す、ぞ」
キラーはペニスをずるりと抜く。
「ッあ……い……く♡」
「……うっ……」
絶頂に波打つ彼女の腹に、ぴと、ぴと、と、白濁した液がかかる。ホーキンスの顔にちら、と目をやる、満ち足りたような顔で、少し疲れてもいるようで、そんな顔でこっちを、笑って見ている。キラーはぎゅっと、倒れるようにホーキンスを抱きしめた。
「ふふ……ねぇ……重いわ」
ホーキンスもその抱擁に応え、キラーの胸の中に体を埋める。2人は抱き合ったままごろりと布団の上に転がった。
「お前とこうしている時だけが幸せだ、ファッファッファッ……ホーキンス」
キラーは、ホーキンスの額にキスをした。
「私も……キラーがいるから、生きていられるの」
ホーキンスはキラーの胸に顔を寄せ、耳を当てた。まだ冷めやらぬ興奮に心臓がバクバクとしているようだ。少しずつ、その音を聴いて……余韻も、消えていく。
しばらく話していると、ホーキンスは突然、黙り込んだ。考え事をしているように見えた。
「どうした」
ホーキンスは、呟いた。
「酷い女って、思ってもいいわ……キラー……殺すほどじゃなかったかもしれないって、思い始めてるの」
「……え」
キラーは、本能を一瞬にして消された。体が芯から冷えていく感覚に震える。忘れようとしていたものが蘇る。ホーキンスに悪気はない。アプーが何のために死んだのか、ホーキンスに隠すことを望んだのはキラーと、アプーその人である。
「私……自分が殺せないから、あなたにやらせたけれど……今になって、ごめんね……なんだか怖いの」
胸に雫、ホーキンスは泣いているようだ。
「……ファッファッファッ」
「処罰が怖いわけじゃなくて……ただ……終わってしまうと……」
「ファッファッ……もういいんだ、ホーキンス」
「まだ……ちゃんと話したら……分かり合えたんじゃないかって!」
絶望。
「ファッファッファッファッ」
感情を抑えきれずにしきりに涙を流すホーキンスを受け止めながら、自分に笑われる。
「ごめんなさい……ごめんなさい……せっかく……代わりにやって……くれたのに……」
あゝ痛い、口角が引き攣って痛い。
「私が甘い、のよね……あんな奴に……そんなこと、無理なのはわかってる……」
痛い。
「わかってても……知ってる人が死ぬのって……こんなに……」
「心が、痛いのね」
キラーはホーキンスを強く抱きしめた。寒い、温度が欲しい、と、必死に、潰れるくらい強く。ホーキンスも同じだった。この痛み、キラーならわかってくれる、私達は……ひとつになる。
「アイツは……人じゃない」
キラーは言う、言い聞かせる。ホーキンスに、自分に。
「悪魔だ」
プルルルルルルル!!!!
「……私ね、こんな夜中に……」
ガチャ。
「どなた?」
無言。
「あのー」
無言。
「えっと、ねえ、キラー。切った方が良い?……キラー?」
「変わってくれるか」
ホーキンスはキラーに電伝虫を渡す。
「お前……なんだろ」
その瞬間だった。ガタン!!と強い衝撃音がした。何かが落ちる音だ。
「おい!今どこにいる!」
切れていた。
病院の、緊急連絡用の電伝虫が床に落ちている。その部分が血で満たされていく。側で一人の男が倒れていた。
-終-
D.C.(ダ・カーポ)
いたい、きたない、わらってる、みんなに、おれ、わらわれた、すごく、ずっと、さけぶ、
「声……き……けた……も……う……いい……」
うごけ、うごけ、うごけよ、あたま、われる、ずっと、いる、さけぶ、おそう、
「痛い……痛い……」
血、もっと、でろ、くらく、
「ころ……せ……」
あああ、あ、いる、いる、いる、いる、いる、いる、たすけて、
「ころせ……」
たすけて、ホーキンス、たすけて、
「うう」
胸の傷はとても痛い今まで生きるためにおれなりにやるだけのことをやれるだけやってきただからそれでおれが今ここにいておれが今こうやって生きてて同じようにやれるだけやって死にに行ったけどどうしておれは生きてるこれ以上何をすればいい何で死ぬことができない目が沢山ある化け物はこっちを見るだけ男や女や子供は叫ぶだけ頭は痛むだけ視界は暗くなるだけ血は流れるだけ心臓はまだ動いて止まらない体が動かなくて自分で自分を殺すことすらできない殺してやると書かれても書かれても書かれても書くだけだお前は何もできないおれは何もできない何で報いがないんだよおかしいだろおれの何が間違ってたんだよおれは何もかも落とし前つけた完璧だった何が悪いんだ願えばいいか誰に願えばいいんだ自分の体か心かこの世界か死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい
「……あ」
何か足りないと思ってた、やっぱり、
「音楽……流せるか」
死にたくな
。
Fine