不憫なビーナ
かわいそアビドスは今日も砂模様。風に乗って細々とした砂やシルトが校庭や窓枠に積もる。
ぼくが女の子になって。いや、女の子にさせられてから砂嵐はその数を減らし、砂漠化の進行も鈍化したらしいがそれでも飛んでくるものは飛んでくる。うーん、ぼく砂漠化させてたつもりはないんだけどなあ……。
そんなこと思いながら他のアビドスの生徒、砂狼シロコと黒見セリカと共に校舎の除砂作業を進める。もう慣れたもので、スコップで砂を掬い上げ、せっせこ袋に詰め込んではその辺に放り投げる。ある程度溜まったら一輪車や台車に乗せて、その辺の砂漠まで捨てに行く。まったく、ぼくが元の体だったらこの位のこと身動ぎ1つで出来たって言うのに、不便で仕方ない。
じわりと滲んできた額の汗を拭い、20袋目だか30袋目だかの砂がパンパンに詰まった麻袋を放り投げる。とりあえず予定していた範囲の除砂が終わって、シロコから貰ったエナドリを一口飲んだ瞬間、下半身に違和感が走った。これはもしや……あいつら……おっぱじめやがったか!
「おいっ……嘘だろまだ昼だぞ!」
燦燦と照る太陽も仰ぎながら苦々しく呟くも、当然そんな声は届かないわけで、股座を撫でまわされる不愉快な感覚がじっとりと続く。こんなに気持ち悪いのに、あの馬鹿は酷く悦んでいるようで下半身が切なく疼いて仕方ない。
頼むからちょっとした乳繰り合い出会ってくれ。そう願いながら気色の悪い刺激を振り払うように、がむしゃらにスコップを振るう。
掬って、詰めて、縛って、投げて。
撫でられ、擦られ、摘まれ、弄られ。
掬って、詰めて、縛って、投げて。
舐められ、揉まれ、弾かれ、噛まれ。
「んうっ♡……くぅっ♡」
「ん、大丈夫?」
「無理しないでよ?今日の分はもう終わったんだし」
かれこれ数十分耐えていたが我慢の限界だ。思わず声が漏れ、一緒に作業していた2人に心配される。悔しい。なんで預言者たるぼくが心配されなきゃなんだ。
「ああ、わるっ……い。ちょっと戻ってる」
(くそっ!クソクソクソ!こんな時間からサカりやがってあの馬鹿共が!人間ってのはどいつもこいつも、こうなのか!?毎日毎日隙さえあれば交尾交尾交尾!!どっかの式典中におっ始めた時はぶち殺してやろうかと思ったぞ!まったくこっちの、おっ……♡あっ♡こ、こっちの気持ちにもなってみろってぇっ♡)
「ぜったいにゆるさねえ……!」
跳ねる腰と折れる膝をどうにか抑えこんで、いつもの部屋に入る。誰も使っていないがらんとした部屋だ。ホシノのサボり部屋のように、ぼくが1人になりたい、いや、ならなきゃいけない時に使う部屋。一番奥まった、声が漏れにくい部屋。
掃除用具入れからペットシーツを取り出し部屋の真ん中に敷かれたマットに被せ、その上で横になってじっと耐える。
先生の丹念な愛撫は時に数時間に至ることもあり、通りであの負けず嫌いのミガリがしおらしくなるわけだ。ここ最近分かったが、これは儀式だ。性感を高める余興でもあるだろうが、執拗に刺激を繰り返し、気持ちを昂らせ「こんなに興奮しているのだから、負けてしまっても仕方がない」と思い込ませるための儀式だ。あいつもたまには甘えたいのだろう。
「きゃんっ♡」
ピリピリと甘い電流が背中を駆け上る。おそらく陰核を剥き出しにされ、吸い付き飛び出たところを舌先で弾かれているのだろう。ペチペチと高速で弄られたかと思うと、絶頂する寸前で上下に焦らすように舐め回す動きになる。
ふざけんな。なんでこんなものがついてるんだ。人の身体は弱すぎる。舌なんてただの肉の塊だろうに、そんなものでちょっとばかりクリクリと弾かれるだけで頭の中が全部ぶっ飛びそうになる。悔しい、悔しいっ!なんでぼくがこんな目に合わなきゃならないんだ!
「ふぅーっ……ふぅーっ……♡ん、んぬっ」
ぎりぎりと歯を食いしばって泣きそうになるのを堪えていると、くちくちと入り口を撫でられてから、つぷりと指が入る感覚があった。女のほっそりとしたそれとは違う、ゴツゴツと節くれ立った男の指が、膣壁をマッサージするかのように擦り上げる。ゆっくりと丁寧に、傷つけないように優しく。
膣はそのほとんどが筋肉で、処女だろうが非処女だろうが関係なしにいきなりぶっ込めばめちゃめちゃ痛い。だから、こんな風にやさしく解して受け入れやすくするのは理に適ってはいるのわかるが……。
「ちくしょ……早くしろ、もう十分だろっ!」
牛歩の如く、遅々として進まない前戯に文句を垂れる。もうずっと前からぼくのお腹はぐずぐずに解れているし、ミガリの方だって欲しくて欲しくて仕方がないはずだ。
……ああ、今すぐ指を突っ込んでぐちゃぐちゃに掻き回したい。イイところをグリグリ押し付けて早くイキたい。でも、あいつらにぼくのことを意識させたくもない。きっと冷めてしまうから。だから我慢する。快楽を与えられるまで。耐える。挿れて貰えるまで。
「お願いだっ……はやくっ♡はやくぅっっ♡♡!?」
へこへこ浅ましく腰を跳ねさせて誰もいない虚空に向かっておねだりをしていると、その時がとうとうやってきた。肉の壁を押し分け、粘膜を擦り合わせて先生のソレが奥の奥まで入り込む。ぼくの身体には何も起きていないというのに、異物感と圧迫感がお腹の底から性交の事実を訴えかけてくる。
何か話でもしているのか、一度動きを止めてから2、3回抽送を繰り返したが、すぐにまたピタリと止まってしまう。おそらく膣を陰茎に慣らしていると思うが、こんなにぎゅうぎゅうと、まるで噛み付くように締め付けているのだからそんな必要ないだろうに、本当に丁寧なやつだ。……愛されてるんだな、あいつ。
「たのむって……ほしい、ほしいよぅ……」
満たされているあいつと違って、ぼくの方は酷く寂しい。なまじ感覚がある分、実際には何もして貰えていない。独りぼっちであることを強く意識してしまう。だから、はやく快楽だけでもいいから、ぼくを満たして……。
「ぐすっ……」
ダメだ、涙が溢れてきた。情けない。それでも預言者か。
目元を拭いながら唇を噛み締める。どうしてこんなことで泣かなくちゃならないんだ。神様がいるんだとしたらきっと最低最悪なサディストに違いない。いつかぼくが証明してやる。
「くそぅ……!くそぅ……!神の大馬鹿野郎!非モテ!アホ!いつか誰からも忘れられて歴史の隅でひっそりと消えていってしまっ……あ゛ぅ♡」
沸々と湧いてきた怒りに任せ、神に唾棄していると不意打ちのように抽送が再開される。
ぐいっと子宮を突き上げられ、1人きりの教室で快楽に身を捩りながら喘ぎ声を漏らし、ミガリと同調して強制的に絶頂まで押し上げられる。膣が削れてしまうのではないかと錯覚するほど激しくゴリゴリと犯されたかと思えば、確かめ合うようにゆっくりと愛し合う。
「はがっ♡あ……っ♡すきっ、せんせっすきぃっ♡」
違う、そんなことは思っていない。ただ、強い快楽に乗ってミガリの好意がこっちにまで伝わってくる。好きにさせられる。勝手に、無理矢理に、初めは不愉快だったこの刺激も堪らなく愛おしい。
頭がパチパチして何もわからなくなる。今は息を吸ってる?それとも吐いてる?身体が独りでに跳ねて意図せずに潮が吹き出る。
「あっ♡イク♡イクイクイクッ♡♡もっとグリグリってぇ……あっ、ビクビクしてる……せんせいもイク?はうっ♡ナカ中出してっびゅ〜って♡押し付けて♡びゅ〜って♡」
何を言ってるんだぼくは。本当に。いや、あいつか。気持ちいいのは嫌いじゃないけどそれはダメだろ。
「ひゃぐっ♡もう、無理ッ♡♡せんせい♡イクっイ゛っ……あれ?えっ?」
ぷつり、と同調が切れる。絶頂の寸前。一番満たされる最高の瞬間で快楽を取り上げられる。残ったのはヒクヒクと物欲しそうに痙攣する膣と、じくじくと疼く子宮と、泣きながら息を荒げるぼく。
「ふっ、ざけんな……!」
そうだ、やっぱり神は最低のサディストだ。
「ふざけんなっ!ぼくが、ぼくが何したっていうんだよぉおおっ!!」
怒鳴り散らしながら自分を慰め、グチュグチュと中を掻き回す。本当にひとりぼっちの、気持ちよくなるためだけの、何の愛情もない行為。
「はぁっー、はぁーっ!もう!ちくしょう!ちくしょうちくしょう!ちくっ……あ、んっ♡んんっ♡♡」
びくりと身体が跳ねる。ただ気持ちいいだけ。何も楽しくない。何も満たされない。こうしてぼくは一人惨めに浅ましく昇り詰め、絶頂の余韻に浸りながらボロボロと泣き崩れるのであった。