不平等な幸せ 平等な不幸せ

不平等な幸せ 平等な不幸せ

稲生・紅衣・メメ・虎屋のスレ主

─霊術院─

「あしわらせんせー さようなら~!」

「はい 気を付けて帰ってくださいね 梨子さん」

いつものように元気な挨拶に手を振って返す芦原先生 だが今日はその近くに見慣れない人物がいた

「おお 確か新聞に載ったりどこぞの貴族の養子になった子じゃったか?」

「こんにちはー!」

「元気でよろしい! 飴でもやろうかのう!」

死覇装から巾着袋を取り出し飴を一つ投げ渡してきた女 少なくとも梨子より40cmはデカいがそれは世間一般では大分小さい部類だろう

「こちらの方は十三番隊五席の稲生ひよ乃さんです 私が受け持ったのはおよそ500年前ほどでしたね」

「あの時は教員によくお世話になったもんじゃ...芦原先生には頭が上がらん 梨子ちゃんじゃったかな?よく教員の指導を聞いて励むんじゃぞ?」

「はーい!」


しかしなぜ霊術院に五席がわざわざ来ているのかと梨子が不思議に思っているとその五席から答えは示された

「吾は割と顔が広いからのう 色んな隊の霊術院向けの勧誘の文書なんかを持って来たんじゃよ...あっそうじゃ!霊術院生徒ならアレを渡したら喜ぶかのう」

正直最近霊術院に来たばかりの梨子にとっては護廷十三隊の話は興味はあまりなかったが持って来たある物の中の一つに目を引くものがあった

「各隊の隊長や副隊長の直筆の色紙じゃ!隊長格以外にも吾と仲が良い者には書いてくれている者もおるがのう 死神を目指す者が多い霊術院じゃと泣いて喜ぶものすらおるから来るときは大概持ってきておるのじゃ!」

「こちらとしても生徒の意欲が向上したりより進路に対して考えを深めてくれることもあっていつも助かってますよ」

隊長格の並んだ色紙の端に見覚えのある名前があった 『藍染惣右介』

思わずそれを手に取った 普通ならもっと他の人物に興味を示すべきなのだろうが取った梨子自身でも驚くほどに咄嗟に手に取ってしまったのだ

「ほう...お目が高いのう それを書いた者は優秀でな 視野が広く俯瞰して物事を見る事が出来るんじゃがちょっと責任感が強いのか自分で全部やりがちな子なんじゃが...」

「もらってもいいですか?」

「良いぞ!藍染は要領も良いしきっと大成するじゃろうから今持っておけば...ええと あれじゃ"ぷれみあ"になるぞ」

「良かったですね 梨子さん 貰ったらお礼を言いましょうか」

「ありがとうございます!」


ホクホク顔で色紙を抱きしめる梨子を見てほくそ笑んでいる教員と稲生だったが

教員は明日の授業の為の準備があるらしく改めて気を付けて帰るようにと言ってその場を後にした

「さて...吾もお暇と行っても良いが 吾まだ仕事のサボりで時間があるし相談があれば乗るぞ!剣禅とか興味があるものでも良いし縛道なら教えられん事もないぞ」

「さぼりは良くない...でも聞きたいことはあるよ

その質問を聞いて稲生は少し目を伏せた...

「流魂街の出身と聞いておったが...きっと色々辛いことがあったんじゃな 人の死は...」

「うーん...そういうわけじゃない」

「ゑっ!?...緊張して損したぞ 単純に戦場で生き残るとか回道などに関してかのう?」

「もっと広いいみで」

どうも漠然とした質問にどう答えたのかとうんうんと唸りつつ稲生は答えた

「簡潔にまとめると...『価値を持て』『他者の価値を見出せ』『価値をうまく扱え』といったところかのう

富・名声・力...分かりやすい価値があるが持つだけじゃダメじゃ持て余すのではなく使って始めて意味がある そして意味のある場所で振わねばならん

『生き残る』には他者に『こいつには存在するだけの価値がある』と思わせて助けてもらう そうすれば自身だけで生き残ろうとするよりもきっと生き残る可能性は高いはずじゃ」

「..."利用価値"...?」

「そうじゃな 悪い言い方になるが『死なれちゃ困る』なら是が非でも助けねばならん 吾なら例えば『従順な"もるもっと"』『希少価値の高い素材』『便利な始解を持つ死神』『会社の社長』とかじゃろうか

そして自身の価値が分かったなら次は『他者の価値』...それを見つけうまく扱う

難しくは考える必要はない

金があるなら才能のある者に融資してやれば良い

名声があるならその者が動きやすい様に下地を作ればよい

力があるならその者が害されぬ様に守れば良い

それが出来るならお主は『価値ある存在を"生かし""活かす"ことが出来る』という『価値』を持つ

少なくともお主には貴族という"名声"を持つことが比較的容易いはずじゃし"力"も申し分ないはずじゃ」

「...ただ生き残るだけじゃなくて世界をよくしたいならどうしたらいいかな?」

更に踏み込む梨子の質問に悪い頭をフル回転させて稲生は答えた

「世界を良くする...難しいが出来事はないはずじゃ

例えば不治の病があったとする 吾がそれに罹っていたおったとしよう

吾は自身の病を治すために『金』『名声』『力』あとなんやかんやを用いて『なんか解決してくれそう』な価値を持つ者を支援して最終的に不治の病の治療法を見つければそれは『世界は良くなった』と言えるはずじゃ

無論吾は健康優良児()じゃしあり得ん想定じゃがな 自身の利益の為でも良いしなんでも良いから皆を良い方向に良い塩梅に歩を進めることが出来て続ける事が出来るのなら世の不幸は減るはずじゃ

ううむ...回答になっとるんじゃろうかこれ」

「...むずかしいね」

「まぁそうじゃな...思ったより時間が過ぎたのう そろそろ互いに帰らねばならんな

梨子ちゃん もし死神になることがあれば吾を頼れ 吾も自らの『価値』を高めるためにお主の『価値』を磨いてやろう」

強者が一人ただ導くのでは無くそれぞれの者が互いに導き合う 無論お互いに利用し合い己の都合で動きながら

そんな理論を聞いて難しい顔をしていた梨子に稲生は考え事をしたときは甘いものが良いと頭の良い奴に聞いたといって持っていた飴...五百個ほどを渡した

「吾は十三番隊五席じゃ もしまた聞きたいことがあれば文でも送れ 読んで返答してやるぞ」

「あ...ありがとうございます」

…この後飴を食べきれそうにないのでまだ霊術院にいた海燕に半分ほど押し付けてから帰ったのは内緒である









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