三つ子と羽根つき
ルフィ「これか?これはな!羽子板ってんだぞ!」
暖かい室内で荷を整理する海賊王一家
新年が明け、挨拶に来た客人達を見送りながら三つ子の父が説明する
古い兄弟分という客人からの頂き物らしい
ムジカ「はごいた?」
ルフィ「おう!ワノ国って所にあるおもちゃだ!おれも遊んだ事はねェけどな」
ララ「…どうやって遊ぶの…?」
ルフィ「この羽根が付いたボールを板持った奴で落ちないように打ち続けるんだ」
ライト「テニス…みたいなの?」
ルフィ「あ!そんな感じだな!」
ムジカ「へー…」
見慣れないおもちゃを三人共まじまじと見つめる
物心着く前に行った事があるとは言え、みなワノ国の玩具という代物に興味津々である
ルフィ「でも、これ…面白ェルールがあんだぞ。負けた奴は顔に墨で落書きされんだ!」
ライト「らくがき?」
ルフィ「そうだ!墨つけた筆とかでな!顔にバツとかマルとか書いたりすんだ!」
ララ「顔に…」
ルフィ「しっしっし!面白ェだろ!」
ムジカ「…ライトにぃ!ララねぇ!ちょっとこれやってみようよ!」
ライト「羽根つきを?」
ララ「…顔にイタズラ書きしたいだけでしょ…」
ムジカ「そ、そんな事ないよ!ただちょっと興味があるだけで…」
ルフィ「にしし!いいじゃねェか!三人で遊んで来いよ!」
ムジカ「それじゃ行くよライトにぃ!それ!」
ライト「いつでもいいよ!」
風もないため、弱々しいが陽の当たるテラスで羽根つきを始める三つ子達
まずはテニスの要領で二人体制で始めていた
ムジカ(む…ライトにぃ…やっぱり強い…)
すでにルフィやコビー達から格闘術の手ほどきを受けつつあるライトの身体能力は妹達にとって脅威だった
ムジカ(このままじゃ負けちゃう…仕方ない!)
ムジカ「う、うわあ!風で目に砂が…!」ゴシゴシ
ライト「え!?だいじょう……あ」
すっかり気を取られて羽根を落とすライト
ライト「落ちちゃった…でも今のって…」
ムジカ「は、ハンデだよ!ライトにぃ男の子でぼく達より強いもん!だから卑怯じゃない!」
兄の優心につけ込んだ作戦を堂々と口にする
ライト「た、確かに…それなら仕方ないよね…」
ムジカ「……にっしっし…じゃあ罰ゲームだよね!ライトにぃ♪」
ライト「あ、あんまり変な事書かないでね…」
ムジカ「それは楽しみにしててね…♪」

ララ「にへへ…次はララのばん…」
ライト「よーし来い!」
もう一人の三つ子とゲームを再開するライト
さすがにまた妹相手に格好悪い所は見せられないと少々真剣になる
しかし妹の戦略の方が上を行かれてしまう
ララ「わ!着物…足で踏んじゃった…」
ライト「だ、大丈夫!?ララ…あれ」
ララ「にへへ…ララの勝ち…」
ライト「あの…ララ……」
ララ「ハンデ…でしょ…?ララもいいよね…?」
ライト「…変な事は書かないでね…」
ララ「にへへ…♪」

以降のゲームではすっかりライトに不利が働いていた
「あ!目に埃が…」
「わ!眩しくて見れない…」
「何かつまずいちゃった…」
ライト「……」
顔中にイタズラ書きをされたライト
しかし上機嫌な妹達に強く言う事もできず、ただ淡々とイタズラ書きの餌食になっていた
このまま自分が妹達の遊び相手で終われば良いと思っていた矢先…
ムジカ「今ズルしたでしょ!ララねぇ!」
三つ子の末っ子が声を荒らげた
ララ「む…ズルなんてしてない…」
ムジカ「ウソだ!今目に何か入ったもん!砂か何か飛ばしたでしょ!」
ララ「そんな事ないもん…ムジカこそ変な石置いたでしょ…!ちょっとつまずいたもん…!!」
ムジカ「し、知らないよ!そんなの!」
口喧嘩では収まらず、互いに髪や着物を引っ張り合いを始める妹達
ライト「や、やめなよ二人共…」
ララ・ムジカ「らいとにぃは黙ってて(…)!」

オロオロとした対応ですっかり追い出されてしまう
二人の取っ組み合いを止めようにも実力行使に出る事もできずに固まってしまうが…
ルフィ「こら!何やってんだお前ら!?」
ライト「あ…パパ…」
ララ「パパ…」
ムジカ「パ、パパ…」
喧嘩声に反応していち早く父が飛び出してくる
ルフィ「仲良く羽根つきしてるはずじゃ…あれ、ライトだけ墨だらけだな。お前達は喧嘩して…何があったんだ?」
ララ「えっと…これは…」
ムジカ「ラ、ララねぇがズルしてきて…」
ララ「ズルはそっちが…」
ルフィ「もう止めろお前ら!」
二人の娘の止まらぬ言い合いを一喝させる
ルフィ「父ちゃん、こういうのは正直に言って欲しいぞ。どっちが先かは良い。ズルはしたのか?してねェのか?」
ララ・ムジカ「……」
ルフィ「どうなんだ?」
ララ「ちょっとだけ…」
ムジカ「しました…」
ルフィ「そっか…父ちゃんいつも言ってるからな。海賊の勝負に卑怯はねェ。二人共、その言葉の通りにしちまったか?」
ララ・ムジカ「……」
ルフィ「でも今回は違ェよな。二人は海賊じゃねェだろ?それにその言葉はよ、ズルしてでも勝てば良いって意味じゃねェんだ。ズルされても文句は言えねェって意味だ。ズルするんなら自分がズルされても文句なんて言っちゃダメだ」
ララ・ムジカ「……」
ルフィ「だから本当は正々堂々とするのが一番いいんだ!父ちゃんはいつもそうだぞ!相手にバレねェように悪巧みしてやるような息が詰まるゲームはよ…楽しくねェだろ?」
ララ・ムジカ「ごめんなさい…」
ルフィ「謝るんならおれじゃなくてお互いにな!…それとライトも!お前もだぞ!」
ライト「え…」
ルフィ「兄ちゃんが妹達の喧嘩をオロオロして見てんのはダメだろ!それにその顔の墨…ララ達がズルしたの分かって勝ちを譲ってたんだろ?」
ライト「えっと…」
ルフィ「お前の良いとこでもあんだけどな~…でもちょっと優しすぎるぞ?おれも兄ちゃんとよく遊んだけどよ…勝負じゃ一度も手なんか抜かれた事なかったし、勝たせて貰った事もなかった」
ライト「……」
ルフィ「どっちが良い兄ちゃんかなんて言わねェ!どっちも良い兄ちゃんだとおれは思う!でも、少しは厳しくしねェとな?こういう時、どうしたらいいか分かるよな?」
ライト「…はい……」
ララ「あ…」
ムジカ「ラ、ライトにぃ…」
ライト「ふ、二人とも!」
ララ・ムジカ「ご、ごめんなさ…」
ライト「ず、ズルした事は怒ってないよ…ハンデだからね!喧嘩しちゃうのも仕方ないよ…でも手まで出すのはダメだよ!怪我でもしたら…大変だよ!?」
ララ・ムジカ「あうう……」
ライト「仲良く遊ばなきゃダメだよ!も、もし次またやったら…ぼくだって全力で止めるからね!二人がかりだってぼくはまけな…」
ララ・ムジカ「ひっ…」
ライト「あ…ほ、本当にはしないよ!?だ、だからそんな怖がらないで…」オロオロ
ルフィ「しっしっし…優しい兄ちゃんだな!」ワシワシ
ライト「わっ…パパ…」
ルフィ「でもこういう奴は怒ると怖ェぞ!母ちゃんみてェにな!だからもう取っ組み合いなんてすんなよお前ら!」
ララ・ムジカ「はーい……」
ルフィ「ライトも妹達にちょっと弱いのはいいけどよ…いざって時は二人を守れるくらい強くなんなきゃだめだぞ?ミライやマストを見習ってな!お前だって強ェ兄ちゃんになんなきゃな!」
ライト「はい…!」
ルフィ「そんじゃ中入って顔洗うぞ!顔中墨だらけだぞお前!しっしっし!」

父と一緒に、何とか場を収めたライト
ほんの少しだけ、二人の兄としての責任感のような物を学んだ
しかしこの後、せっかく着飾ったのに喧嘩してほつれた着物や墨だらけになった顔を母に見られて叱られるのはまた別のお話
おしまい