一護vsグリムジョー① 虚の力の謎に迫る

一護vsグリムジョー① 虚の力の謎に迫る


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空座町


――良かった。何とか間に合った。

 カワキは目の前で破面に蹴り落とされる一護を見て「急いだ甲斐があったな」と、ほっと一息をついた。

 これまでの経験からわかる。一護はあの程度の攻撃で死ぬ事はない。むしろ思っていたより元気そうで安心した。


⦅せっかくだからもう少しこの戦いを見ていたいな。貴重な破面の追加情報……一護もまだ戦う余裕がありそうだし……⦆


――よし。死にかけるまでは見ていよう。

 目先の情報に飛びついて、カワキはこの戦いの行く末を見守る事に決めた。カワキの任務は一護の護衛だったが……。


⦅死にさえしなければ、私と井上さんで何とでもなる筈。……うん、多分大丈夫⦆


 カワキは井上の能力をそれだけ高く評価していた。そして目の前に転がる値千金の情報に夢中になっていたとも言える。


「…ちっ…こんなモンが卍解かよ…」


 地面に激突した一護。街中に高く粉塵が舞い上がる。派手に落下したものだな、とカワキはその様子を眺めていた。

 破面の男が舌打ちをして空から叫んだ。


「ガッカリさせんじゃねえよ、死神!! 卍解になってマトモになったのはスピードだけか!! あァ!?」


 男は土埃の中の一護を見極めるように、じっと青い目を凝らしている。その男の姿に、カワキは日番谷に倒された男が語っていた言葉を思い出した。


――「我々と共に現世に来ている者の中に1体。その“十刃”が居るのですよ」

――「藍染様に第6の数字を与えられし者――…“第6十刃”グリムジョー・ジャガージャック」


⦅――…この男が第6十刃……序列6番目の破面――。あぁ…本当だ、背中に数字が書いてある。わかりやすくて助かるな⦆


 風に捲れた白い上着の下、腰の辺りに刻まれた“6”の数字。カワキは心の中で確信に頷いた。

 つい先程得たばかりの情報の答え合わせができる。新しいおもちゃと出会った幼児のように胸が弾んだ。新たな情報源の登場に喜ぶカワキの視界で、土埃の中に異変が起きた。


⦅…黒い――…あれは…虚の力か……? 何だ、一体――…⦆


 土埃に黒い力の奔流が混じっていた。舞い上がった粉塵が渦を巻くように晴れて、現れたのは中心で天鎖斬月を構える一護。グリムジョーが微かに目を見開く。カワキも初めて見る技に驚いていた。


「――月牙……天 衝!!」


 放たれたのは黒い月牙天衝。咄嗟に両手で頭を庇うグリムジョー。辺りに音と衝撃が響いて、黒い月牙天衝は正面からグリムジョーに炸裂した。

――前の戦いで撃とうとしていたのはこれか? それにしても――…。


⦅回避ではなく防御を選ぶとは――…それだけ防御力に自信があるんだな。……あのヤミーという破面も相当な硬さだった⦆


――破面に共通する防御の能力……私達で言うところの静血装のようなもの……?

 カワキは夢中になって二人の戦いを観察していた。まるで映画に見入る観客のように、他の事が目に入らない様子だった。


「…何だ、今のは…?」


 息を切らせた一護が見上げる視線の先、黒い靄が晴れた夜空にグリムジョーが立っていた。頭を庇った腕、腹、膝近くまで袈裟懸けに太刀傷を負っている。庇いきれなかった頭部から血を流し、汗しながらも、高揚を隠せない様子で口角を上げ、一護を見下ろした。


⦅防御を選ぶだけはある。正面から受けてこの傷なら弾の威力を上げないと……⦆


 破面達が一護を狙い続けるのなら、そう遠くないうちに戦う事になる。狙わなくても、侵攻が始まれば虚圏も対象だ。どちらにせよ敵になる。破面の強度確認はカワキには必須事項だった。


「そんな技…ウルキオラからの報告にゃ入ってなかったぜ、死神…!」

「…ガッカリせずに済みそうか? 破面」


 勝ち気な笑みを浮かべた一護に、以前の戦いで見せた不自然さは見られない。


⦅――虚の力が異常の原因? なら、あの時と今……何が違う? 条件は――…⦆


 ぐるぐると思考が駆け巡る。知りたい。もっと知りたい。尽きぬ欲望にギラギラと煌めく碧眼が二人を捉える。

 戦いは次の局面へ移ろうとしていた。


***

カワキ…「知らない技! 破面の情報!」と夢中になっていて、たつきも近くに居る事に気付いていない。思わぬタイミングでポンコツを発揮するな。混乱する。


一護&グリムジョー…すぐ傍に観客が二人も来ているなんて全く知らない。熱い激闘を繰り広げている。


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