一護vsグリムジョー② 東仙登場

一護vsグリムジョー② 東仙登場


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空座町


⦅虚の力を使っても、すぐに動作に不具合が起きるわけじゃないのか。ダメージ量によって変わる? それとも敵の霊圧か?⦆


 いくつもの仮説を並べる。考察にのめり込むカワキの視界に、一護がばっと手で顔を覆う姿が見えた。先程までは負けん気の強い笑顔を浮かべていた顔が、今は焦燥に染まって見える。


「…待てよ…もうちょっとだからよ…」


 独白にも聞こえる言葉は誰にかけられたものなのか。


⦅条件はまだはっきりしないけどやっぱり時間差か。強力なのに、使い勝手の悪い技だ……連発は厳しいだろうな⦆


 暗がりから獲物の様子を窺う獣のような瞳で、じっと一護を見据える。そしてふとある事に気が付いた。

――もし仮に、一護が虚に肉体の主導権を奪われた場合はどうなる?

 しなやかな手が口を覆う。思い悩むように眉を寄せて考えた。


⦅……死なせないって中身の話か? 肉体が生きていればいい? ダメかな……⦆


 どんな状態でも、生きてさえいれば護衛の役目は果たしたと言えるんじゃないか? そんなカワキの悩みは、響く哄笑によってかき消された。


「はっ! はははははっ!!!」


 グリムジョーの笑い声。一護の黒い月牙天衝の威力に闘争心が湧いたようだった。カワキが眉を顰める。


「上等じゃねえか死神!! これでようやく殺し甲斐が出て来るってモンだぜ!!」


 戦闘を楽しむ余裕があるグリムジョーの様子に一護がギリギリと歯噛みした。顔を覆った指の隙間、本来白い筈の眼球は半分ほど黒く染まっている。

――侵食の進み具合は要確認……そろそろ戦闘続行は無理かな。出るか……?


「…オイ」


 肉食獣のように獰猛な笑みを浮かべて、グリムジョーの手が斬魄刀を掴んだ。鯉口を切る音。凍りついた湖のようなカワキの瞳が、月光に照らされてギラギラと輝く。

 先程まで子供のようだった雰囲気は途端に張り詰めたものに変わった。音もなく銃を握り直す。


「ボサッとしてんなよ死神。次はこっちの番だぜ」


 徐々に引き抜かれていく刀身。カワキが引き金に指をかけた。

――今の一護は虚の侵食を防ぐことに必死だ……身動きが取れない状態で、斬魄刀を解放した破面とは戦えない。


⦅まして相手は十刃……さっきの破面より強い筈。一護を守って戦うのは厳しい……解放は気になるけど――…⦆


 リスクとリターンを考え、カワキは一護の護衛を優先した。狙うのは斬魄刀を解放する寸前――…最も隙ができるタイミングだ。銃を構える。

 しかしその瞬間が訪れる事はなかった。


「刀を納めろ。グリムジョー」


 刀身が半ばまで引き抜かれたその時――グリムジョーの肩が背後から掴まれた。

 現れた男の姿に一同が驚愕で目を瞠る。


「東仙…!」

(東仙…!? カワキが倒したって言う…藍染達と消えた隊長か!!)


 苦虫を噛み潰したような顔をして、肩に置かれた手をグリムジョーが振り払った。カワキも苦い顔をして内心で呟く。


⦅観戦に夢中になって、接近されている事に気付かなかった…しくじったな……⦆


 「油断した」と反省するのは一瞬。今は戦場だ。すぐに思考を切り替える。


⦅相手は隊長格――例の“虚化による限界突破”とやらを行っている可能性もある⦆


 藍染の語った崩玉の使い途がその脳裏を掠める。冷たい目、悩ましげな長い吐息を吐いた後、カワキは次の動きを決めた。


***

カワキ…情報は欲しい。でも、これ以上はヤバいと思ってたら東仙が来てびっくり。ここでもやはり観戦に夢中になって接近に気付かなかった。急にポンコツ化するな。


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