一護vsグリムジョー③ カワキと東仙のレスバ

一護vsグリムジョー③ カワキと東仙のレスバ


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空座町


 東仙要。カワキはその強さも清虫の能力も知っている。崩玉で強化された可能性も考えられる以上、無視はできない。


⦅不意打ちできるのはどちらか片方――…両方は仕留められない。残った方が一護を狙ったら?⦆


 起こり得る事象とその結果を予測する。

――この位置じゃ一護を守りきれない……万が一、なんて考えたくもないな。

 任務失敗はそのままカワキの死に繋がるのだ。そう考えて、暗闇から姿を現した。


『こんばんは。私も混ぜて貰えるかな?』

「カワキ! 無事だったんだな……!」

『ああ。十番隊の二人が助けてくれてね。戦いを観ている事しかできなかったよ』


 カワキの無事を喜んで一護が安堵の息を吐く。対して、グリムジョーはシャウロンと同様、カワキに見覚えがあったらしい。威嚇するように唸る。


「! てめえ…ヤミーをやった奴か…!」

『うん? あぁ……さっきも言われたよ、それ。君達は随分と詳細な情報共有をしてるんだね』


 グリムジョーは現れたカワキを見て微かに目を瞠ったが、東仙に驚く様子はない。カワキの存在に気が付いていたのだろう。

 当然、カワキが一護に加勢もせずに戦いを眺めていた事だって知っている。


――やはりそうだ……この滅却師からは、何か異質なものを感じる。

――底のない穴を覗いたような――…暗くて、恐ろしい何かを。


 尸魂界で戦ったあの時、東仙はカワキに強烈な違和感を覚えた。背筋がぞっとするような感覚。暗闇に慣れた東仙でも、胸騒ぎが抑えられない程の何かを。

 滲み出た嫌悪が皮肉の形となって、東仙の口を衝いて出た。


「“戦いを観ている事しかできなかった”、か。物は言い様とはこの事だ。貴様は最初から仲間を助ける気など無かっただろう」


 刺々しい皮肉。

 それは日番谷達の戦いの事であり、一護の戦いも含む言葉だった。前者は直接目にした訳ではないが容易に想像がつく。

――この滅却師は、加勢できる戦いもただ眺めるばかりだっただろう、と。


『突然、酷い事を言うね。一護を助ける気はあったよ。それが、私がしなければいけないと決めた事だ』


 返されるのは涼やかな声。

 けれど、東仙にはやはり、怪物の囁きにしか聴こえない。聞く者によっては好意的に聞こえる言葉が余計に恐ろしく感じた。

 しかし平静を保てない程ではなかった。続く言葉を聴くまでは。


『――正義を語って仲間を裏切ったのは、私じゃなくて君だろう? 今回の侵攻――殺戮目的のこれも……君の正義?』


――中央四十六室を殺したように、現世で罪の無い人間達まで殺して回るつもりか?

 言外にそう訊ねたカワキの言葉。東仙の顔が黒い感情に歪む。それは憤怒、拒絶、嫌悪、殺意……そのどれにも当て嵌まって見えたし、どれでもないようにも見えた。


「黙れ」


 ただ一言。

 静かで、怖気がする程に冷たい。殺気と霊圧が重くのしかかる。豹変した東仙に、一護も、グリムジョーさえも息を飲んだ。場が凍りついたような沈黙に包まれる。


「……貴様に何が解る? 貴様のような者が軽々しく“正義”を口にするな――!」


 怒りに震える声。刺すような言葉。重圧の中で、カワキだけが別のこと――東仙の霊圧に気を取られていた。


⦅……藍染の言った話は本当だったのか。魂魄の限界を超える力――新しい力だ……知りたい。欲しい。もっと――…⦆


 カワキだけが、真正面からぶつけられた激情など素知らぬ顔で沈黙を破った。好奇心を帯びた瞳が月光にあやしく煌めく。


『君の霊圧……』

「黙れ、と言っているのが解らないのか」


 東仙はカワキの言葉を断ち切った。

 カワキは煩わしそうな顔をして一度は口を閉じた。しかし腑に落ちないという態度で軽く肩を竦め、すぐにまた言葉を紡ぐ。


『解らないね。私は君の部下じゃない。命令は聞かないよ』


 言葉を区切る。そして東仙の言葉に肯定を返した。


『確かに。正義も、大義も……君の思想は私には解らないし、興味もない』


――生憎と思想の話には興味が無いんだ。

 尸魂界で東仙と戦った際に交わしたその言葉をなぞるように繰り返す。鮮やかな瞳が見定めるように東仙に向けられた。口の端を小さく上げて、人形のような顔に蠱惑的な微笑みを浮かべる。


『だけど――…今の君自身には興味があるな』


 見る者の目を捕えて離さない微笑みも、盲目の東仙には意味を成さない。不愉快だと口に出さずとも伝わった。東仙は強引に話を終わらせる。


「貴様に話す事など何もない――…魔物に正義の何たるかを語ったところで理解などできまい」


 これ以上、目の前に居る悍ましい何かとしか思えない女と会話していると、嫌悪で気が狂いそうだった。

 無理矢理カワキから意識を逸らす。盲目の瞳が捉えた影は……。


「私が用があるのは――…グリムジョー、お前だ」


***

カワキ…「何か知らんが突然キレられた」と思っている。嫌味を言ったつもりはなく普通に事実を言っただけだと思ってそう。思想とかどうでもいいけど、新しい力には興味がある。それ滅却師にもできるやつ?


東仙…前々から「あの滅却師はヤバい」と思ってたし観戦してる事に気付いてたから皮肉を言ったら云百倍で返された。今回のことでカワキへの感情は「こいつ、本当に無理。地雷です」に進化。カワキがマジで嫌い。


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