一番想うあなたへ…if

一番想うあなたへ…if

モテパニ作者

ここね「まさか、拓海先輩が…」

ブラックペッパーの正体が判明した夜、ここねは呆けていた。

パムパム「ここね、どうしたパム?」

ここね「パムパム。今日の事、驚いちゃって」

パムパム「ブラペの事パム?」

ここね「うん、前に好きな人の話したよね?実はそれがブラペだったの」

パムパム「そうだったパム〜、…そうだったパム!?」

唐突なカミングアウトに驚愕するパムパム。

ここね「びっくりした?」

パムパム「パム〜、でも言われてみればここねと年が近くてそれなりに付き合いがある男の子なんて拓海かブラペパム。二人が同一人物なら実質一択だったパム。…ここねはブラペが拓海だったと知った今気持ちはどうなったパム?」

ここね「うん、前よりも強くなった気がする。消えるどころかむしろブラックペッパーへ抱いてた気持ちがわたしの中ではっきりと形になったような」

パムパム「でも拓海は…」

ここね「うん。ゆいの事、だよね」

この恋の最も難しいといえる部分。

想い人にはすでに大切な人がおり、その相手は自分にとっても大切な相手である事。

パムパム「ここねはどうするパム?」

恋を取るのか、友情を取るのか、そういった問いだここねはまだ…

ここね「わからない…かな?正直突然でどうしていいかまだわからない。けど諦めるには早いと思ってる」

パムパム「ここね…!ここねは強いパム」

ここね「簡単には諦められないでしょ?だってわたしもプリキュアだもん」

パムパム「パム!パムパムはここねを応援するパム!」

思いがけない事実が判明したが、それでもここねは前を向く事を決めた。

まだ道の歩き方はわからないけれど…

それから時は経ちブンドル団との戦いを終えて、パムパムとも別れてからしばらく。

あれからしばらく拓海と関係を深める方法をいくつか模索し熟考し続けた。

そして一つの方法に辿り着いたのだが…

ここね「(こんな事提案しても、突っぱねられるだけだよね…)」

その方法は冷静に考えるとあまりにバカバカしい。よほどのきっかけでも無ければ話す事も無理だ。

そんなある日だった。ここねはあまねと二人で集まる機会があったのだが、その時あまねが少し難しい表情をしていた。

ここね「あまね、なにか悩んでるの?」

あまね「あ、ああ。私もそろそろ卒業の時期だろう?だからまぁ進路でな」

ここね「あまねでも不安になるんだ」

あまね「まぁ、そちらの心配も無いわけでは無いんだが、どちらかと言えば私自身より品田の事でな」

ここね「拓海先輩?」

あまね「ああ、あいつはA校を志望するようだ」

ここね「A校、悪い評判は聞かないけど、良い事も聞くわけじゃない…」

あまね「言ってしまえば平凡な学校だな。彼の学力ならもっと上を目指せる。品田がそこを選ぼうとしてる理由はおそらく」

ここね「ゆい、だよね?」

あまね「そうだろうな。ゆいの学力で無理なく狙える学校でもあるからな。しかしいくら彼がゆいを想っているとはいえ大事な進路のレベルを落とすのは良いとは思えない。だが、彼にとってそれが一番大事と言われてしまえば、私では止められるほどの理由が無い」

あまねも純粋に拓海を心配して悩んでいる。

しかし余計なお世話と言われれば否定もできない…

その相談を受けここねもふと未来を考える。

一年後には自分達の番になった時ゆいやらんに合わせるべきか否か。いや、きっとそれは良く無いのだろう。

きっとここねも高校からゆい達と離れ離れに…

バタッ!

ここね「これだ…」

何かを閃いたここねはテーブルを叩き立ち上がる。

あまね「こ、ここね?」

ここね「ごめんあまね、わたし今から拓海先輩のところに行ってくる。さっきのことはわたしに任せて!説得してみせるから」

あまね「お、おう…」

一方的に言葉を残してここねは立ち去ってしまう。残されたあまねはしばらく唖然としていた。

〜〜〜

ここねはそれから拓海に連絡を取り、二人になれる場所へ呼んだ。

拓海「芙羽、いきなり何の用だ?」

急な呼び出しでも拓海は応えてくれ、そこにやってきた。

ここね「拓海先輩聞きました。志望校、下のレベルのところ選ぼうとしてるって」

拓海「…菓彩のやつか。ああそうだよ。受験で無理に頑張るよりほどほどのとこがいいと思ったからな」

ここね「ゆいに合わせて、ですよね?」

拓海「ッ、なんのこと…?」

拓海は指摘されて少し息を呑むが、すぐさま誤魔化す。

拓海「いいだろもう。芙羽には関係無いし」

ここね「いえ、関係ならあります。わたしもゆいと同じ学校に行きたい。でも友達だから全部を合わせるんじゃなくて、みんなで頑張って上の学校を目指したいんです」

拓海「そりゃ…それができれば一番だけど」

ここね「先輩、わたしと一つ賭けませんか?」

拓海はその言葉に驚く。まさかここねのような子から賭けるなんて言葉が出てくるなんて。

拓海「賭けってどういう?」

ここね「拓海先輩は自分に合った学校に進学してください。そしたらわたしがゆいを同じ学校に進学させてみせます」

拓海「芙羽が勉強をみるって事か。確か芙羽は成績いいらしいがそれで上手くいくとは限らないし、それに賭けにも…」

ここね「もし、ゆいが合格できなかったら、わたしが拓海先輩のいう事なんでも聞きます」

拓海「はぁっ!?」

突然の爆弾発言。

おそらく年頃の男子なら是非とも美人な女性に言われたい台詞でもトップクラスだろう。

拓海「おい!なに言ってるのかわかってんのか!?なんでも一ついう事聞くって」

ここね「ちがいます。なんでも一つじゃなくて、なんでも、です。回数も期限も決めるつもりはありません」

拓海「〜〜〜」

更なる追い討ち。こんなのもはや奴隷宣言と変わらない。

拓海「いやいやいや!そもそも芙羽がそこまでする必要ないだろ!?結局は俺とゆいの話だぞ!?」

ここね「だから、わたしからも条件があります」

拓海「条件…?」

それを聞いて少し怖くなる。ここねがここまでの物を元にこちらへ要求してくる事は何かと。

ここね「わたしがゆいを合格させられれば、わたしから拓海先輩に一つお願いしてもいいですか?」

拓海「つまり?俺が逆に芙羽のいう事聞けばいいのか?」

ここね「い、いえ。お願いを馬鹿にせず聞いてくれればそれで。その上でなら断られても、構いません…」

拓海「…」

それはあまりに釣り合っていない条件だ。

どう転んでも拓海側に不利益が無いと言ってもいい。

逆に言えば自分のためにここまで言わせて意地を張るのはカッコ悪く思えた。

拓海「わかったよ。そこまで言うならもう一回進路考え直してみる。ただし」

拓海は拳を握りそこから人差し指だけ軽く突き出しそれでここねの額を軽く押した。

拓海「ダメだった時は覚悟しとけよ」

それは、無茶を言ったここねに対する説教のようなもので拓海としては少し脅しつけただけだったのだが、拓海を想うここねからしてみれば普段見せない意地悪な姿にときめいてしまう。

ここね「(一瞬、失敗してもいいかもって思っちゃった…ううんだめ、これをなんとかして拓海先輩にあの事を提案しなくちゃ)」

それから拓海は両親や先生と相談しこの辺りで一番評判の高い学校に進路を決めた。

示し合わせたわけでは無いが、あまねも同じ所を目指すとのことだ。

ゆい「拓海とあまねちゃんはB校目指すのかーあたし合格できるかなー?」

嬉しい誤算だったのはゆいがそれを聞き、誰に言われるまでもなく拓海達の進路を自分の進路先に定めた事だった。

ここね「大丈夫、わたしと一緒に勉強しよう」

ゆい「ありがとう!ここねちゃん!」

ここね「でも、ゆいの成績じゃあ厳しいからびしびしいくね」

ゆい「え!!?」

らん「そろ〜りそろ〜り」

ここね「らんも一緒に勉強するよね?」

らん「はわっ!ら、らんらんは…」

ここね「らんも同じ学校行きたいよね?」

らん「はにゃあ〜わかった〜」

それから三人は勉強に精を出し始める。

ほどなくして拓海とあまねが高校に合格し、三人の道もよりはっきりする。

それから一年しっかりと勉強しつつ思い出も残していきついに…

拓海あまね「「合格おめでとう!」」

ゆいここねらん「「「ありがとう!」」」

ゆい達三人も志望校に合格できたのだ。

あまね「それにしても見事だったな。ゆいとらんは一年前は赤点をとって補習を受けていたというのに」

らん「はにゃ!あれ今思い出してみたらあまねんが仕掛けた事だよね!?」

あまね「おや?そうだったか?」

祝いの席で過去を茶化しながら皆笑顔になる。

拓海「芙羽、本当に頑張ったな。ゆいをB校に合格させるなんて快挙だな。なにか賞を与えてもいいかもな」

ゆい「なにそれー、失礼しちゃう!」

拓海「ははっ事実だろ」

ゆい「失礼だよー、ねえここねちゃん!」

ここね「……」

そんな中一人ここねだけ難しい表情をしている。

沈んでいるわけでは無い、しかし浮かれている周りに比べて少し重い雰囲気だ。

ゆい「ここねちゃん?」

らん「ここぴーどうしたの?」

ここね「あ、うん。あの、拓海先輩」

拓海「………ああ、あの事だろ?」

あまね「あの事だと?」

拓海「芙羽と約束してたんだよ、もしゆいをB校に合格させられたら芙羽から頼みたい事があるって」

ゆい「ここねちゃんから拓海に?」

らん「あれ?らんらんは?」

拓海はここねが言う事を聞くという件は省くが、ここねとの約束を話す。

ここね「だからここで、お願いしてもいいですか?」

拓海「ああ、そういう約束だ。いいよ」

ゆい「…」

二人のやりとりを見てゆいは少し気持ちがざわつく。

ゆい自身もわからない気持ちだ。

ここね「その前に今デリシャストーン持ってるならブラペになってもらえませんか?」

拓海「へ?なんで?」

ここね「えっと…とにかくお願いします」

拓海「…?まあいいけど」

いつも持っているデリシャストーンを光らせブラックペッパーの姿へと変わる。

ブラックペッパー「これでいいか?」

ここね「はい!それじゃあ改めて…」

ここねは大きく息を吸い呼吸を整えしっかり気持ちも整えて意を決して言う。

ここね「ブラックペッパーさん。あなたのことがずっと好きでした。わたしと付き合ってください」

それは告白だった。

その場の皆なんとなく雰囲気で察していたがいざ目の当たりにすると驚く。

ブラックペッパー「…気持ちは嬉しい。だけど…」

ここね「待ってください」

ブラックペッパーは言葉をここねは遮る。

ここね「お願いです。この告白は品田拓海としてではなくブラックペッパーとして答えてくれませんか?」

ブラックペッパー「なに?」

ここね「わたしがお願いしたかったのはこれです。拓海先輩が他の誰かを好きでもいい。だからブラックペッパーという個人としての気持ちを」

その提案はさすがに皆予想していなかった、周りも驚愕する。

ここね「(ずっと考えてた。拓海先輩とゆいの邪魔をせず自分の想いを叶えられるか、それは自分の最初の想いブラックペッパーを好きになった気持ちに従えばよかったって。もちろんバカげた提案なのもわかってる。だから大きな壁を乗り越えてようやく言えた)」

これがここねの覚悟。

分け合う心であった。

そしてここねはブラックペッパーではなくゆいへ向き直る。

ここね「ゆい…ゆいはどう想う…?」

ゆい「え…?」

究極的にはそれだ、ここねがこんな方法をとったのはゆいと争わないためなのが大きな理由だ。

もしゆいが反対するならまた別の方法を考えなければ、とここねは思っている

ゆい「わ」

ここね「わ?」

ゆい「わかんないよ〜!」

そう言ってゆいはその場を駆け出してしまった。

ブラックペッパー「ゆ、ゆい!?」

あまね「待て、きみはここを離れてはいけないだろう。ここねへの返事がまだなんだからな」

ブラックペッパー「でも!」

あまね「ゆいとしても難しい問題だったんだろう。反対しようにもここねは大事な友達。その友達がここまで頑張った結果を無下にはしたくないだろうし、ゆい自身今回世話になっている。しかし素直に賛成もしたくはなかったんだろう。その結果が今の行動だ。賛成も反対もしない。すなわち黙認だ」

ブラックペッパー「も、黙認…」

あまね「つまり後はお前次第だ品田。いや、ブラペ」

らん「男らしくはっきりしてよね!ブラペ!」

ここね「ブラペ…」

拓海は、いやブラックペッパーは悩む。

つまりは拓海としてのゆいを好きな気持ちを隅に置き、ここねという1人の女の子と付き合いたいか否かだけで答えろという事。

ここねはその上でなら断ってもいいと言った。

しかし拓海は知っている。

この一年でここねがどれだけ努力していたか、失敗した時どれだけのリスクを負っていたか。

そして何より拓海にとってここねは…

ブラックペッパー「俺は…」

あまね「俺?」

ブラックペッパー「ッ、私は…」

〜〜〜

それから少し時間が経ち、ゆいが立ち去ってしまったのとここねが酷い状態になったためお祝いは一旦延期となって拓海は自室で思いに耽っていた。

拓海「なんでOKしちゃったんだろうな、俺」

告白の返事はOK。

晴れてここねは拓海、いやブラックペッパーと付き合うことになったのだった。

ブラックペッパー『わかった…お付き合いを了承しよう』

ここね『〜〜〜!』

らん『やったね!ここぴー!』

あまね『ふっ、お祝い事が二つになってしまったな』

OKをもらったここねは感極まり涙を流し、それをらんとあまねは祝福した。

泣きすぎて顔が見せられない状態になってしまったらしくあまねに追い出されてしまった。

拓海「芙羽、ここねか…」

一人の時間ができたため付き合い始める女の子の事を考える。

拓海はゆいから友達として紹介される前から彼女を知っていた。

彼女が有名人だったのもあるが、あれはまだ拓海が中学二年の頃…

友達『なあ品田、今年の新入生ですごい可愛い子がいるって知ってるか?』

同じクラスの友達からそんな話題を出された事があった。

その年の新入生にはゆいもいたため無視は出来なかった。

拓海『誰のこと…?』

友達『知らねーのか。芙羽ここねだよ。すっげー美人でスタイルいいんだぜ』

拓海『ふーん』

ゆいでは無かったのでその時点では興味を無くしたが…

友達『しかもあのレストラン『デュ・ラク』のオーナーの娘なんだってよ』

拓海『マジかよ!』

友達『そっちには興味持つのか…』

この街でも屈指の高級レストラン。

拓海もいずれは足を踏み入れたいと思っている場所だった。

そこの娘という事で興味を持ち、友達の顔を見に行くという誘いにも乗ってしまった。

拓海『どの子?』

友達『ほら、あの本読んでる子』

そして拓海がここねを初めて見た時の第一印象は、キレイな子だと思った。

間違いなくその時目を奪われた。

拓海『行こうぜ』

友達『え?もう?』

だから拓海は彼女を避けた。

この時すでにゆいを好きだった彼にとって心が揺れそうな相手を危険だと思ったのかもしれない。

これも一種の好き避けなのだろうか?

それからゆいに友達として紹介されてからも極力二人にならないようにしていたかもしれない。

拓海「そんな俺のどこを好きになったんだか。いや、俺じゃなくてブラペか」

そんな事を考えていると扉からノック音がする。

そして返事する前に扉が開く。

拓海「ゆい?」

ゆい「拓海、ちょっといいかな?」

ゆいは少し暗い顔で訪ねてきた。

ゆい「さっきの話、拓海は、ううんブラペはここねちゃんの告白どうすることにしたの?」

拓海「……受ける事にした」

ゆい「……そっか」

しばしの沈黙が流れる。

ゆい「(なんだろこの気持ち。ここねちゃんは大事な友達で拓海だって大事な幼馴染。その二人が付き合い始めるのが全然面白く無いって思ってる。そもそもなんでここねちゃんはあたしに聞いてきたの?)」

ゆいの考えがぐるぐると渦巻く、そして一つの答えが出る。

ゆい「拓海、もう一回確認させて、ここねちゃんと付き合うのはブラペなんだよね?拓海じゃなくて」

拓海「…ああそうだ。あくまでブラペとしてだそうだ」

ゆい「そっか…じゃああたし決めた!」

拓海「決めた…?」

ゆい「(あたし、きっと拓海には誰かのものになってほしく無いんだ。だからブラペはここねちゃんに渡しちゃったけど、拓海は誰にも渡さないよ!)」

まだはっきりと自分の気持ちがわかってはいない。

しかしはっきりした部分は貫く。

それが和実ゆいであった。

ゆい「拓海、覚悟しててね!」

拓海「なにが!?」

〜〜〜

それから時間は経ち今日はここねとブラペの初デートであった。

拓海「…本当にこれ被るのか?」

ここね「はい。わたしがデートするのはブラペですから」

言われて拓海はここねから受け取ったカツラを被る。

ブラペの髪の色に合わせて作られた物だ。

ブラックペッパー「こほん。では行くとするか。こ、ここね」

ここね「うん♪」

最初のデートはここねお気に入りのカフェに行って一緒におしゃべりがしたいというものだった。

その話題の一つで。

ここね「このあいだから"拓海先輩"はゆいといる事が多いよね?」

ブラックペッパー「あ、ああそうだな。最近前より一緒な事が増えたように思える。面白くないか?」

ここね「ううん。わたしの彼氏はブラペだから、拓海先輩の事には口出ししない」

ブラックペッパー「…そうか」

ここねはあくまでこの姿勢を貫くつもりだ。

しかし当事者である拓海/ブラペにとってはどうしても二股をかけているような感覚を覚えてしまっている。

ここねも拓海を困らせているのはわかっている。けれどもこれ以外で彼と付き合う方法はまだ思いつかない。

この関係もいつまで破綻せず続くかわからないが、それでも彼女はその時まで彼の一面を愛し愛されたいと思っていた…


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