ンンンンン!?この羅刹王髑髏烏帽子蘆屋道満がたかが海魔ごときに負けるなどあるはずが!!?

ンンンンン!?この羅刹王髑髏烏帽子蘆屋道満がたかが海魔ごときに負けるなどあるはずが!!?


「ぬぅ、ンンン!!馬鹿な!有り得ぬ!拙僧がこのようなッ…ンン!」

信じられない、という声は人の気を感じられない浜辺で発せられていた。

その声の主である蘆屋道満は、中心で黒と白の二色に分かれた長髪の毛先を砂で汚し、朱に彩られた黒い法師の服も今は無惨に引き裂かされその内側に潜んだ逞しい肉体を無防備に晒して尻餅をつかされている。

そしてその者の前に立っているのは……巨大化したヒトデのような魔。俗に言う海魔一匹。場面だけ見るなら、なんと蘆屋道満が海魔ただ一匹に押し負けた。まさに異常事態というべき状況である。

なにか策略が。なにか裏が。蘆屋道満の性格を考慮すればそのように思われるのが確実だろう状況において当の本人はといえば。

(馬鹿な!馬鹿な!!拙僧の術が何一つ通じぬ!?有り得ぬ!!このような矮小な魔にそのような力があるはずがない!!)

──有り得ないと言う思考に犯されていた。そう、彼は本当に海魔に負かされたのだ。

己が何よりも自信を持っていた術の全ては効かず、肉体に頼っても及ばぬどころかどこから得たのかも不明な力により易々と押し返され、冒頭の無様な発言に至る。

「ぐっ…えぇいたかが海魔ごときが拙僧に何を求める!!」

そして本来起こり得ぬ事態に無意味な思考を費やした代償として既に目前まで迫っていた海魔に気付けず、彼は普段の飄々とした態度も忘れて喚き散らすが海魔はなにも答えない。

「ンンッ!?──まさか、まさか……?」

代わりにとでも言うように、その夥しい数の襞が集まった触手が道満の脚へと滑り始め、彼は困惑したような面構えと変貌する。──有り得ない、と短い間に何度彼は思ったのか、もうわからない。


──そう時間も経たずして、浜辺には嬌声が響き出す。

「ンンンンンッッ♡拙僧が♡このような辱しめなど…ッッ♡なぜェッ♡」

もはや彼を守る衣はなく、全身…特に厚い胸板の先から尻の穴、局部に至るまで彼は粘液にまみれ、犯さていた。もちろんその粘液の正体は海魔の触手から分泌されたものだ。

「ンオオッ!!?♡♡この♡卑劣な魔めがあァッ!!♡」

だがその粘液に催淫の効果は存在しない。蘆屋道満が興奮し、喘がされているのは海魔の攻めと彼の快楽体質が悪い方向で噛み合ってしまったからこそ他にない。

加えて海魔の触手は彼の肉体を理解したかのように攻め立てる。短い時間で彼は矮小と罵った小さな魔に弱きところをすべて知られてしまったのだ。しかしそれを認めたくないのが今の蘆屋道満。

「オォッ♡」

例え、粘液まみれの襞襞の擦りで乳頭が撫でられ、その繊細な快感に頭が茹だりそうでも。

「オゴォッ♡」

例え、無意味な粘液を流し込まれるためだけに触手を喉奥まで突っ込まれ、痛みに苦しめられることに興奮していても。

「おほァっ!?♡」

例え、既に触手一本を容易く受け入れてしまうようになった肛門を執拗に開発されてしまって、内部で襞同士が擦り合うことにえもいわれぬ悦楽を得てしまっていても。

「やめオォォォッ!!?♡♡」

例え、その男根が触手の雑なねぶりのみで精を吐き出されてしまっていても。

「認めぬッ!♡拙僧がこのようなァ!!♡♡ンンン!♡♡♡」

蘆屋道満は認めようとせず、海魔はその態度に苛ついたかのように攻めを更に激しくして蘆屋道満の精魂を尽きさせようと彼に覆い被さって蠢いていき、彼はその両手両足でまるで抱き潰さんとばかりにしがみつく。

その光景は第三者から見れば…まるで愛し合う者のよう。彼は気付いていない。ただ快感のみ与えるだけで、それ以外の効果などない海魔の動きだけならば己の肉体のみで殺すなど造作もない。ではなぜそれができないのか。

「おのれ悦も知らぬ♡海魔めが♡♡必ず、必ず♡拙僧の手で殺しンオッ♡」

できないのではなく、しないのだ。理由はひとつ。そんなことをしてしまえば今味わっているこの快楽はどうなる。失われるのではないか。そんな想いが邪魔をする。

有り得ないと罵ったはずの行為に溺れていることに彼は気付くことができない。海魔が自らに最高の悦楽を喰わせていると本能が誤解して、彼はそれに従う他なく動かされている。

いまだに反抗的な様子を見せているのは。

「ンンンンンン!!!!♡♡」

──その方が、海魔が怒りに震えて更に激化し、過剰なまでに襲ってくるから。

彼はいつまでも宣うだろう。海魔を罵る言葉を、抗うための言葉を。ただこの時の快楽をいつまでも貪るために。いつまでも貶められるために。

それがこの浜辺での幸せなのだとどこかで理解したまま、法師としての自分を打ち捨てるまで、彼はひたすら鳴かされ続けていた。

Report Page