ワンピースFilm ForH Part.15

ワンピースFilm ForH Part.15

勝つのは家族か、英雄か

それぞれの用事が終わった後各船団クルーは一度自分の船へ

兄弟達は一旦サニー号に集まった

ひとまずやらかした3人を叱る為に

ドレーク「お前達......ちゃんと聞いているのか?」

ロー「あれほど飯に行くなら考えて食えって言ったよな......?財布の中身無視して食うなって兄様達みんなから聞いてたよな!?なのになんだこの金額は!!!」

ローが持った請求書を見せながら仁王立ちで見下ろすドレークとロー

正座して2人から説教を食らってるルフィとキッドとボニー

ゾロ達は無駄遣いした彼等に怒るナミを抑えつつ彼らを『あちゃー』といった風に眺めてる

話し合いを終えた後街をぶらぶら歩くことにしたローとそれに付き合うことにしたドレークは通りかかった飲食店が視界に入ったのをそこから聞き覚えのある声が聞こえたのを少し後悔した

覗くとウエイトレスをしているボニー、空いた皿を回収するルフィ、少し奥を見れば厨房で皿洗いをさせられてるキッドが見えたのだ

「「............(よし、船に帰ろう)」」

仮にも船長格それも弟妹のそんな姿を見て他人のふりをしたくなった2人は回れ右をした

瞬間、ルフィに見つかり事情を聞いた上関係者だと判断したオーナーの要求もあった為払えなかった分を立て替える羽目になったのだ

そこまでは『またか』と考えるが食事でやらかしたのは大食いの弟妹3人

残額はもちろんルフィ達が払った分を合わせた金額は財布や旅資金を完全に考えてなかったことがありありとわかり、真面目な2人は一瞬目を点にするもすぐさまそこに怒りを宿した

さっさと払って3人を回収、逃げられないようアロサウルスの姿でドレークが捕まえローの能力で即座に連行したのである

そうしてナミ達が戻ってきた時にはルフィ達は正座させられ叱られていたのだった

くどくどと続く説教を背景にアプーが改めてセセリを紹介する

アプー「......つー訳で、こいつはオラッチの船に乗せたんだ」

ゾロ「なるほど......アプーとボニーが世話になったな」

セセリ「......別に」

礼を言うゾロにもそっけなく返すセセリ

海賊に気を許せというのも難しいがこうも頑ななのもいい気分ではない

ホーキンスはふと思い出したことをたずねてみた

ホーキンス「そういえば......君はこう言ってたな?『海軍の英雄がいないうちに逃げてきた』と」

ゾロ「英雄...だと?」

キラー「ファッファ......そうだ。こいつの話だと、故郷の島を“ヴィール”という奴が率いる海賊団に今支配をうけているそうだ」

ウソップ「どんな奴だ?」

ロビン「“狂者”エイリーク・ヴィール......ゴールド・ロジャーと同じ時代を生きた海賊よ。海賊王の名に興味を持ってないけどその実力は四皇に近いとされている。今なお時代の生き証人として海のどこかにいると聞いていたけど......まだ海賊として活動していたのね」

キラー「ファッファ。問題はそこじゃねぇ......小僧」

セセリ「セセリだ」

キラー「......そいつとうちのジジイが一緒にいたのを確かに見たんだな?」

ルフィ「なんだそいつ、じいちゃんの友達か?」

ドレーク「おい!説教は終わってないぞ!」

あっさりやってきたルフィ達を睨むセセリ

セセリ「だったら孫だっていうお前らが海賊なのも納得だな。あのジジイも所詮クズだったってことだから」

ボニー「一言余計だぞ」

ボニーを無視しセセリは思い返しながら話した


いつもと同じ日常を送っていくのだと信じてた

セセリの故郷は『クスシの里』と呼ばれ名前の通り薬に精通し近辺の島へ輸出することで貿易を行っていた

一方禁断の薬に関する知識も継承している里はそれらを悪用されない為限られた者しか入れない出入口を除き周囲を岩壁で覆われた島で慎ましく生きてたのだ

あの日までは―――――

セセリ「ヴィール海賊団は岩壁に大穴を開けて、里に乗り込んできた......その張本人がガープだ」

本船は海賊旗があったので里の者達は困惑した

ガープが海軍の制服に身を包んでいたのでどうして海兵が海賊と不思議がっているとガープはとんでもないことを言い出したのだ

ガープ『この島にいる者達全員、海賊との内通容疑がかかっとる!大人しくせいっ!!!』

ガープの発言にセセリ達は戸惑うしかなかった

岩壁の影響でかそこまで広くない島、しかも里は顔見知りばかりだし狩りや薬草畑の手入れ以外に里の外に出ることはない

何かの誤解では

そう思いながらも長老は里の潔白を示す為ガープの指示に従い全員を広場に集めた

そこでヴィールの罠にかかってしまったのだ


セセリ「ヴィールは長老を捕まえた後俺達に禁断の薬に関すること全部白状して服従するように言ってきた。長老は逃げろって言ってくれたけど......逃げた人達は3人の幹部やガープの手で痛めつけられた」

ルフィ「いくらじいちゃんでもそんなことしねぇっ!!!じいちゃんは何も悪いことしてない普通の奴を殴るなんてこと、ありえねぇっ!!!」

サンジ「おい、ルフィっ」

ボニー「落ち着けって!!!」

今にも掴みかかりそうなルフィをサンジとボニーがなんとか抑える

セセリ「結局かなわなかった俺達は、ヴィールに捕まって......あいつの研究を手伝わされた。それで知ったんだ......ガープは洗脳されてるって」


禁断の薬は長老の記憶以外だとどこかに隠した秘伝の調合書にしか書かれていないのでどちらも長老が死ねば永遠に失われる

長老を迂闊に殺せなくなったヴィールはその代わり自分達を奴隷にし、独自で禁断の薬を調べることにした

長老や一部の女子供を人質にされたことで従わざるを得なかった自分達

セセリも姉と妹を人質にとられ屈辱に思いながらも働き続けた

そんな日々が始まって数日、偶然セセリはヴィールが何かの薬をガープに投与しているところを見つけた

ロー「その薬でじいさんが操られてるとお前は判断したのか」

セセリ「作らされた薬や材料に、意識の混濁を促すものもあったから......そうじゃないかって。ヴィールが作った薬を調べた後何かして精度を上げてた。多分、あいつも悪魔の実を食ってる」

それから一週間が経ち、セセリにとって忌まわしいことが起きてしまった

セセリ「薬草を集めてる時、ヴィール望む禁断の薬じゃないけど使えると判断したものができたと言ってきたんだ。その実験台に、里の大人が何人か連れてかれて......戻って来なかった」

その中にはセセリの両親もいた

セセリ「不安になって、連れてかれた大人達をこっそり探しにいったんだ......それで......」

セセリに、悲劇が起きた


セセリ「........................」

ドレーク「......君は、何を見たんだ?」

セセリ「......先に言っとく」

セセリはルフィ達を睨んで言い放った

セセリ「お前らのじいちゃんは、もう帰ってこない」

兄弟『!!?』

セセリ「オレは見たんだ......あいつがとんでもないことをしたのを」


両親達を探すセセリは物音がする部屋を見つけて覗いた

そこにあった光景にセセリは理解を拒み悲鳴も上げれなかった

部屋の中では里の大人達が殺し合ってたのだ

薬草の選別を手伝ってくれた人も、時々野菜を分けてくれた人も、祭の宴で一緒に踊った人も

まるで憎しみをぶつけるように剣を、銃を、斧を、武器を互いに向けていた

その中に夫婦で殺し合う両親の姿もあった

セセリ『父ちゃん!!!母ちゃん!!!やめろ!!!』

なんとか止めようと飛び込んだセセリだが異様な力で突き飛ばされ壁に体を打ち付けてしまう

息が止まりながらももう一度止めに入ろうと起きた時、2人の武器は互いの喉と心臓を貫いてた

倒れた両親を悲鳴を上げるように呼びながらセセリは駆け寄った時、母は既に事切れており、心臓を貫かれた父は血を吐きながら震える手で抱き寄せた

『セ...セ、リ......』

父の目にはさっきまでの狂気はなく、セセリのよく知る優しい光があった

しかし父はセセリの名前を最後に力つきた

気づけばセセリと、静かに眺めていたヴィール以外、その部屋で生きている者はいなくなっていた

ヴィール『素晴らしいっ!!!』

ヴィールの歓喜が拍手として響く

ヴィール『まだ試作段階でこれ程とは......それに』

ヴィールはセセリを見下ろす

ヴィール『例え肉親の声でも指示は止まらない......死ぬまで私の人形となると確証もできた。偶然とはいえお前はいいデータを取らせてくれたよ。ありがとう』

ニタニタと笑いながら踵を返すヴィール

ヴィール『これなら望むものができるまでの繋ぎになるだろう。“永遠の英雄”......必ず実現してみせる......!!!』

実験の結果を反芻しながら部屋を出ようとしたヴィールは『ああそうだ、思い出した』とセセリを振り返って言った

ヴィール『そのゴミは全部片付けておいてくれ。次の実験まで綺麗にしておかんとな』

今度こそヴィールは部屋を後にする

足音が遠のき静かになった部屋に、セセリの叫び声が木霊した


セセリ「あいつが満足した結果ならもう薬は使われてる......だから、もうお前らの家族は帰ってこない」

ルフィ達に告げるセセリの声も体も震えてた

セセリ「お前らのじいちゃんはもうっ!!!オレの父ちゃんと母ちゃんみたいに、“殺さない”と正気に戻らないんだよっ!!!」

ルフィ「ふざけんなっ!!!」

とうとうルフィがセセリを殴り飛ばした

ナミ「ルフィ!!!」

ウソップ「よせ!!相手は子供だぞっ!!!」

そのまま殴り続けようとしたルフィだがナミとウソップに止められる

セセリは痛む頬を押さえて立ち上がる

セセリ「オレは本当のことを言っただけだ」

キッド「で、お前はまた仲間がそうされるかも知れねぇと考えながら、仲間を見捨てて逃げてきたのか?」

キッドが口を開く

セセリ「逃げてねぇっ!!!助けを呼びにきたんだっ!!!」

キッド「が、ここは海賊船。んでお前を囲んでる俺達はヴィールと同じ海賊だ。お前をここに乗せると話が纏まってるが、助けを求めるか?ここで」

セセリ「っふざけんな!!!海賊に媚びるくらいなら、の垂れ死んだ方がマシだっ!!」

チョッパー「あっ」

そう吐き捨てたセセリは船を飛び出してしまった

ロー「キッド......やる前から諦めろと言われて腹立ったのはわかるが、手がかりだぞ」

キッド「うっせぇ。うじうじしてたからムカついたんだよ。ガキの頃のルフィでもああじゃなかったぜ」

アプー「けどどうするよ?あいつ行っちまったぜ?」

ボニー「............ちょっと、見てくる」

なんとなく、ほっとけなくなったボニーが船を降りる

ナミ「あ、私も一緒にいい?」

ドレーク「戦えるとはいえ女性だけでは不用心だな......」

ナミとドレークもついていくことにし、3人はセセリを追って真夜中の街へ向かった

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