ワンピース Film ForH Part.16

ワンピース Film ForH Part.16

勝つのは家族か、英雄か

セセリはひたすら走る。

この島に海軍の駐屯地があるのはオンエア海賊団の話を盗み聞きしたから知っている。詳しい場所はわからないが、巡回している海兵に会えたら後は知ってることを話せば動いてくれるはずだ。

セセリ「そうだ......ここに来た時点でさっさと降りればよかったんだ」

アプーに連れ回されたのは逃げない為の不利益な行動をしない為の監視だ。保護されたんじゃない。あのまま海賊の船に乗ったって助けは来ないし助けてくれる訳がない。

自分を縛る相手が変わるだけとわかれば、あの時どさくさに紛れて逃げ切ればよかったのに。

セセリ「なんで助けちまったんだ......海賊が俺達に優しい訳がない......信じていい奴らじゃない......っ!」

里を占拠したヴィールの狂気に満ちた笑みが両親の無惨な最期が脳裏に浮かぶ。楽しそうに理不尽を強いる奴らへの怒りで熱を上げながらセセリは足を止めない。

セセリ「海賊に、心を許すなんて......バカのやることなんだからっ!!!」


「そーだね。よくわかってる」


聞こえた声にセセリは足を止めた。なんでどうしてと疑問が頭を占めて、背筋に嫌な汗が伝う。

「そんじゃこれもわかるよね?」

声がしたのは上。

「海賊から逃げられると思ったら大間違い」

見上げた先には建物が一件。

その屋上からは、セセリが恐れてる“敵”の一人である女。

セセリ「......バグ・レディ…...っ!!?」

レディ「やあ」

猫のように笑うレディは両手のサイを弄んでいた。


ボニー「おーい!セセリー?」

ナミ「セセリくんどこー?」

ドレーク「......この辺りにはいないようだな」

セセリを追うのはいいが、見失ってしまったのでボニーとナミが呼びかけドレークが見聞色で周囲を調べる。

しかし出遅れたのかあの少年の足が速いのか、あっという間に見失ってしまった。

ドレーク「やはり海軍のいる駐屯地へいく道を調べた方がいいかも知れんな」

セセリは助けを求めて島を出たと言っていた。ならば海軍基地がある駐屯地へ向かったかもしれない。そこで保護され海軍が動いていれば問題ないとは思うが。

ナミ「でも......あの子そこまでの道わかってるのかしら?そんなに土地勘ないのは一緒だし......」

ボニー「海兵に見つかると厄介だぞ?」

ドレーク「昔だったら俺がここの基地に掛け合って彼の保護に協力してもらったがな......」

どうしたものかと3人が悩んでいると――――


『うわぁっ!!!』


「「「!!!」」」

真夜中に似つかわしくない子供の悲鳴。ナミ達は急いで声がした方へ走った。


夜の路地裏を必死に走るセセリ

しかし速く走るレディの振るうサイを受けてしまう。カバンと服を切り裂く一閃で血に染まりながらセセリはなんとか起き上がるとレディを睨む。

セセリ「なんでここに......」

ログポースはあえて持たずに行った。自滅のリスクも承知でがむしゃらに海を渡ったからいくら島の周囲の海流を知ったって、正確にどこへ行ったかなどわかるはずがないのに。

レディ「保険は大事だもんねー」

レディが見せつけるように出したのは一枚の紙切れ。それを手のひらに乗せてやれば紙はゆっくりそして的確にセセリの方へ向かう。

それを見てセセリは思い出した。捕まった時に、ヴィールは里の住人全てから血液を採っていたことを。

セセリ「ビブルカード......!!」

レディ「ピンポーン」

自分の血で何か作られる可能性を忘れてた悔しさに顔を歪めるセセリに近づき、レディは見下ろしたまま問い質す。

レディ「ねー。君、持ってったでしょ?“あれ”。返してくんない?」

セセリ「......っ」

顔を覗き込まれたセセリは一瞬肩が跳ねたがすぐにレディを睨み返す。決していうものかとその目で訴えながら。

レディ「......強情だよねー。ま、いいか」

レディのサイがセセリの頭上を捉える。

レディ「死体にしてからでも問題ないし」

殺される。そう感じ取ったセセリはせめてと両手で頭を庇って目を閉じる。その瞬間――――――――。


「子供相手に何してんのよっ!!!」

ドォォン

怒りの鉄槌。そう例えるべきかと思える怒声と雷が2人の間に走った。

「「!!!」」

雷から下がる為レディは飛びのき、目を開けたセセリを後ろに庇うように“彼女達”が立つ。

ゼウス「ナミ、この子血が出てるよ!」

ナミ「止血だけでも今するわ!」

ゼウスと呼ばれた雲が叫ぶとナミが着ていた上着を破いてセセリの傷に当てる。

ドレーク「この子を狙ったということは、お前もヴィールのクルーか」

ボニー「ナミ、そのままそいつの手当てしてやれ。こっちは私達がやる」

視線を動かせば、ボニーと彼女の兄だという男の1人がレディを睨み据えている。助けてくれたのか。この3人が。

レディ「ありゃ......X・ドレークとジュエリー・ボニーか。困ったなぁ、まだやっときたいことやってないんだよねー」

めんどくさそうにぼやくレディから目を離さず、ドレークは恐竜へと姿を変える。

ドレーク「こちらはお前に聞きたいことがある。逃げられると思うな!!!」

ギャオオオオオォォォッ!!!

アロサウルスの咆哮が轟く。敵への威圧だけではない。


『なんだ!?』『おい、あれ!!』『恐竜!?』『か、海賊が戦ってるぞ!!!』『キャーッ!!!』『逃げろっ!!!』

周囲にいる者達を逃がし。


ルフィ「......ん?」

キラー「咆哮......ドレークが呼んでるのか?」

弟達を呼ぶ為にドレークは吠えた。

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