ワニは一日にして成らず

ワニは一日にして成らず




好きな動物は何かと聞かれたら、僕は必ずワニと答える。

昔そのことを話した時、育ての親であるエンポリオのおばさん(おじさん?)が意味ありげに笑うので、何が面白いんだと喧嘩になったことを覚えている。無論ボロ負けしたし、なんなら鍛え方が足りないと魚人空手の訓練を増やされた。


「参謀総長殿、ワニは好きですか?」

「昔兄弟でよくワニ飯を食ったんだが」

「いえ、食べ物としてではなく生き物としてなんですが…」


 まだ幼かった頃、外で遊んでいると、牛が池に引きずり込まれるのを見たことがある。その時ふと、海はシャチ、陸には猫科の猛獣や狼、哺乳類はこの世の中の全ての空間を支配するに至ったが、唯一ワニが治める水中だけは征服することが敵わなかったのだと思った。

ワニはただ獰猛なだけではない。爬虫類ながら子を育てるなど、しっかり情を持ち合わせている。

その、力も情も狡猾さも持ち合わせて初めて生まれる王の貫禄に魅せられない男はいない。

だから僕はワニが好きだし、そんな男になりたいと思うのだ。


「まぁなんだ。もしゾオン系のワニの実が手に入ったら知らせるよ」

「俺まで食べないでくださいよ?」

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