ロシナンテ准将に濡れ衣を着せまくる死の外科医(ドレーク編)
November 21, 2022『ロシナンテとドレークはセンゴクさんちの息子さんなので仲がいい』という俺が嬉しい設定で書いてます
「よォ、久しぶりだなドレーク!」
「ロシナンテ准将、お久しぶりです」
「なんだよ、准将なんて堅いな。いつも通りに呼んでくれよ」
「……久しぶり、ロシー。……はは、流石にこの年でこう呼ぶのは恥ずかしいですね」
「照れんなよ〜ドリィ〜」
照れたように笑うドレークの肩の組む。血のつながりはないが、同じ養い親を持つ家族同然の男だ。
ガシャン!と大きな音がした。
音のした方を振り返ると、青い顔をしたトラファルガー・ローがいた。先程の音は刀を落とした音なのだろう。いつも手に持っている刀が床に落ちている。
「ろ、ろしーって……どりぃって………そんな、親しく……」
「お、おいトラファルガー?」
ショックを受けたように、涙を浮かべて辿々しく言う。その様子にドレークは声をかける。
「くそっ!肉付きのいい男の方が好みなのか!?なあコラさん!!」
「ハア!?!?」
めちゃくちゃな言いがかりに一瞬気が遠くなった。ドレークは驚いてひっくり返った声をあげる。
「どうりで少年趣味じゃないはずだぜ……麦わら屋もおれもどちらかというと華奢だしな……」
「や、やめろ!!」
海賊相手ならまだネタ感あるけど、身内相手だとガチっぽくなって笑えなくなっちゃうだろうが!!あと今日はなぜか顔馴染みになってしまったおれの部下たち以外にもドレークの部下とか上官もいるんだよ!?!?
「おい、ロシナンテ准将はそんな人じゃ……」
「黙れ!体格に恵まれたヤツが!!くそっ、おれも鍛えてはいるがデカくならないんだよ!」
フォローに入ろうとするドレークを無視してローは言葉を続ける。
「筋肉ダルマの野郎をすらっとしたキャプテンがぶった斬るのは世界一かっこいいから!」
「細マッチョの方がモテるって言いますよ!!」
ヤジと言う名の褒めを入れるハートの海賊団のみなさんたち。いや海賊団丸ごと軍艦と並走しているしゾロゾロと乗ってくるこの様はいったい何なんだ。
「おいドレーク屋!この体でコラさんを誑かそうってのか?」
「な、何を言って」
「おい!おれのことを悪く言うのはいいが、ドレークまで巻き込むのはやめろ」
「ロシナンテさん……」
青くなったり赤くなったりしていたドレークを庇う。言いがかりも言いがかりすぎるし、いきなりトラファルガーに絡まれて可哀想すぎる。
「………わかった」
トラファルガー意外にも素直に引き下がる。
「一週間後にまた来る。その時までに胸筋をパンプアップしてドレーク屋よりおれを選ばせてやる!!」
「何言ってんの!?」
ビシッ、とドレークを指差して宣言する。その瞳は決意に燃えていた。
「キャプテンがムキムキに!?」
「そんな……でもムキムキのキャプテンもカッコいいんじゃないか……?」
「世界が惚れちゃうな」
「さすがおれたちのキャプテン」
ハートの海賊団たちもざわざわとする。
お前らキャプテンならなんでもいいのか?
「おい、トラファルガー、ロシナンテさんも困ってるだろ」
「うるせぇ!おれはぜってーー負けないからな!せいぜいオイル塗って待ってろ!!」
「ボディビル大会?」
「すごい敵に塩を送るじゃん」
踵を返し船に戻っていくトラファルガーの背中に海兵たちがツッコミを入れる。
一週間後、筋肉自慢の海兵(とロー)によるボディビル大会が行われ、見事X・ドレークが初代チャンピオンとなった。
「筋肉のバランスが素晴らしい」
「この優勝をバネに女性の裸にも強くなって欲しい」
(ジャッジのみなさんのコメント)
トラファルガー・ローは首から下を体格のいい海賊の体にすげ替えてステージに上がったため問答無用で敗退となった。
「どう頑張っても筋肉が付かなかったが負けたくなかった」
(違反者のT.Lさんのコメント)
「なんだったんだこの大会……」
無理やりステージに上らされて勝手に敗退させられたロシナンテがぼやく。
「准将はちょっと厚みが足りない」「傷だらけなのはカッコいいけど、ボディビル的にはマイナス」などとジャッジから好き勝手言われたし……。
上着を肩に掛けて、騒ぐ海兵たちを離れたところから眺める。たまにはこういう催しを開くのも悪くないかな。ちょっと乱痴気騒ぎの5歩手前くらいになってきてるけど。まあ勤務時間外だからセーフか……?
「ここにいたのか、コラさん」
「トラファルガーか」
もとの体に戻ったローが、照れたように鼻の下を擦りながら体の主である海賊の首と心臓の山を持ってきた。
「この海賊の首やるよ、へへっ。あと手下の心臓もあるぜ。船は軍港につけてある」
「お、おう、ありがとな」
一部だけ持ってこられたのかと思ったらアフターフォローも万全だった。
まあ……海賊を牢にぶち込めたし、なんだかんだ皆楽しそうだったし、いいか……。
ロシナンテ准将は度を超えて優しかった。
こうしてボディビル大会は幕を閉じた。
プルプルプル、と電伝虫が鳴る。
『お・か・きー!』
「あられです。センゴクさん、何かご用ですか?定期連絡はまだのはずですが……」
『ああ、いや、用というわけでもないんだがな……』
「?、どうしたんですか?」
『その、若い海兵たちがロシナンテがムチムチの男が好きだという噂をしておってな……』
リアルにヒュッ、という音が喉から鳴った。センゴクさんの言葉は、おれが謂れもない嗜好持ちであると噂されていて、しかもセンゴクさんの耳に入る程度には広まっているということを意味している。
『ロ、ロシナンテは私よりガープの方が好きなのか!?』
なんでだよーーーー!!!!!なんでセンゴクさんもトラファルガーみたいなこと言ってんだよーーーーーー!!!!!
「違いますよ!センゴクさんの方が好きです!あとそれは根も葉もない作り話です!!」
『本当か……?あと若い男と修羅場になったとも聞いたが、それも嘘か……?』
「イヤ、それは……アノ……トラファルガーがですね……」
『まーーーたアイツか。何度も来よってからに』
「そうなんですよねー、いやー本当に困ったヤツですよ」
いやアイツ何度もどころか毎日来てますよ、とは安心した様子のセンゴクさんには流石に言えない。
『まあ噂もただの噂だということが分かったし、よかったよかった。』
「いや、大丈夫ですよ。心配には及びません」
『そうか、しかし目に余るようなら私に言いなさい。然るべき対処をするからな。じゃあな』
「ええ、良い夜を……」
センゴクさんからの電話が切られる。
無用な心配をかけないためとはいえ、センゴクさんに嘘をついてしまった……。
ロシナンテの心は重かった。
がんばれロシナンテ、全てを思い出す日まで。