ルフィ、17歳
翌朝、女子部屋から響き渡る悲鳴にサンジは飛び起きた。
「レディの悲鳴が聞こえた!待っててね、ナミすわぁーん!ロビンちゅわぁーん!ウタちゅわぁーん!」
風のように走るサンジ。
「漢サンジ!ただいま到着しまし「うるさい!」たぁ…」
ナミの開けたドアにぶつかったサンジはそのまま壁に突っ込んだ。
その後ろからウソップ達が駆けつけ中を覗くとそこにはウタと抱き合った格好で眠る成長したルフィの姿があった。
「この外見はおそらく海兵時代でしょうね…」
ルフィが起きないようにウタを叩き起こし慎重に引き剥がしたあと、甲板で唯一海兵時代のルフィを知っているロビンが説明する。
「私が聞いた噂では…階級詐欺。見つかったら諦めろ。四皇と渡り合えるその実力は大将級。だが本人が起こすトラブルも大将級のため階級が低い。覇気で蒼く輝く背中から付けられた二つ名は“蒼翼”。“英雄”ガープを超える次世代の英雄。その時代の彼のようね。」
「さっすがルフィ!ねぇロビン。その噂に新時代の歌姫の夫って付け加えられないかな?」
「ふふふ…。それはこのあと次第じゃないかしら?」
ウタの質問に微笑みながら答えるロビン。
その時女部屋から物音が聞こえた。
「あ〜よく寝た。ん?ここどこだ?な〜んか見覚えがあるんだよなぁ…?」
ルフィが起きてきて臨戦体制になるウタ以外の一味。その姿を見たルフィは笑顔になると
「お前ウタかぁ〜!久しぶりだな〜!ってことはここは麦わらの一味の船か!」
「ルフィあなた…覚えてるの?」
一味を代表してロビンが聞くと
「当たり前だろ!いや〜目が覚めたらフーシャ村だったから夢かと思ってたけど、その反応だと夢じゃなかったみたいだな。よかった!」
そう言うとルフィはゾロに近づき
「ししし…今度は届くぞ。」
「へェ…面白ェ」
ゾロは刀の鯉口を鳴らしルフィは手に武装色を纏う。それを見たウタが慌てて二人の間に入ると
「待って!船が壊れる!戦うならウタワールドで戦って!」
「?ウタワールド?」
疑問に思ったルフィがウタに聞く前にウタがルフィの耳元で囁くと一瞬でルフィは外にいた。
「!?何だこりゃ!悪魔の実か…?」
「そう!私のウタウタの実の能力だよルフィ!」
ルフィの目の前には戦闘態勢のゾロと少し離れた場所にウタがいた。
「そっか…。なら覇気は使えねぇな。」
「はァ!?何言ってんだ手を抜くつもりか!」
「この世界で覇気を使うと何が起こるか分からねェし、それに…」
「ししし、使わせてみろ。」
「…!舐めやがって…!!」
ゾロが走って向かってくる中ルフィは指を一本立てる。
「“指銃”の速度で撃ち抜く“獣厳”。それにじいちゃん直伝の拳骨を掛け合わせる!これがおれが編み出したオリジナルの技…!」
「…!消えッ?!」
その声と衝撃は背後から響いた。
「“拳銃”」
衝撃と同時にゾロの意識は途絶えた。
「ししし、おれの勝ち〜!」
現実に戻ったゾロを出迎えたのは笑顔でピースする勝者の姿だった。
「おい、朝飯できたぞー!」
「!久々のサンジのメシだ〜!」
久々に会う一味のみんなと楽しく話しながら飯を食べるルフィ。
ウタはそんなルフィを眺めていた。
「朝飯ありがとう!そんじゃおれ帰るよ!」
「「「!?」」」
「ルフィ…その…帰るってどこに?」
「?変なやつだな〜。あっ!心配しなくても大丈夫だぞ!お前らいいやつだし捕まえたりしねーから!」
甲板に向かうルフィの姿に焦るウタ。
「!そうだルフィ!私と結婚の約束したよね!?」
「あー、あれか…。悪いがなしだ!」
「!?どうして!?」
「だって…おれ海兵だし…それにおれお前の船に乗ってねーじゃん」
「ぐぅ…。!そうだここからマリンフォードまで遠いよ!もう少し進んでからでも」
「ししし、そこまで迷惑かけれねぇし月歩で飛んで行くから大丈夫だ!修行になるし、疲れても泳げばいいしな!」
「あわわわわわわ」
焦るウタの姿と対照的に笑顔で歩を進めるルフィ。
「リベンジもできたしまたお前らと会えて楽しかった!それじゃあ…!?」
跳ぼうと足に力を入れた途端ルフィの頭に痛みが走った。
「?何だ…これ…」
『おばえもういらないえ〜』
『なんで!こんなこと許しているんだ!』
『ルフィ大佐…天竜人は…この世界の神に等しい……!』
「はぁっ…はぁ…!!」
『…考え直してはくれないだろうかね』
『…心残りとして、センゴクさん達に色々と聞いて相談したのに結局、おれは“自分の正義”を見つけられませんでした…』
「…!!!」
「大丈夫!?ルフィ!?」
心配してルフィの周りに集まる一味。
「…ししし、心配すんな!大丈夫だ!」
笑顔でそう答えるルフィの前にチョッパーが歩み寄る。
「心配だから診察する。医務室に行こう」
「…ああ。」
「…特に異常はないな。でも万が一があるから休んでてくれ」
「…悪い。少し休む」
「…?」
気がつくととすでに外は真っ暗だった。
眠ると嫌なモノがさらに見える気がしてルフィは眠れなかった。
医務室から外に出るとウタ達一味のメンバーが飲み食いして騒いでいた。
「!ルフィ!」
気づいたウタがルフィに抱きつく。
「…何やってんだ?」
「?何って宴だよ?忘れたの?海賊は歌うんだよ!」
そう言うとウタは机の上に登って足を踏み鳴らす。それを見たブルックがピアノを引き出した。
「この風は〜♪どこから来たのと〜♪」
その歌を聴いてルフィは子供の時、ウタに言われたことを思い出した。
『そして私がこの麦わらの一味船長のウタ!歌で新時代を創る女よ!!』
「新時代…か…」
歌い終わるとルフィに近寄るウタ。
「どうだった?」
「惚れた」
「!?そ、それって…!いやいや!?どうせ私の歌にでしょ!勘違いしないよ!」
「ああ。歌にもウタにも惚れた。」
「!?…歌?ウタ?」
「ししし…でも残念だな。結婚は出来ねぇや」
「!?何で!!!」
「だっておれ、この時代の人間じゃねーだろ?」
「!?」
「不思議だったんだ。いきなり記憶を思い出したり、昔も起きたときにフーシャ村にいたしな。でもようやくわかった。どうやってかは知らねぇけどおれは未来にいる。来ている服も少し大きいしな」
「ルフィ…」
「だから結婚は出来ねぇ。それは未来のおれが決めることだ。寝ると戻るみたいだし、おれ寝るよ。」
「…うん」
男部屋に向かいながらルフィは振り返って
「一つアドバイスするならおれがこの船に乗っている時点でウタの勝ちだ。あとはどう負けを認めさせるかだな」
「…?」
それを言い残してルフィは暗闇に消えていった。
翌朝ウタは目覚めると甲板に向かう。そこには元の年齢に戻ったルフィの姿があった。
「おはようウタ」