ライム×モージ

ライム×モージ


・ライムジュース→モージ

・シャンバギ、ベク3要素有

・バギデリ時代

・モージの嫌いな食べ物捏造

ベックマンは愛煙する煙草に火をつけながら、宴のある一角に目を向けた。そこには赤髪海賊団の船員のひとりであるライムジュースと、バギーズデリバリー幹部のモージが揃って座っている。

かと言って彼らは仲良く話を楽しんでいる訳では無い。ライムジュースが一方的に話しているだけだった。


「はぁ……」


思わず重たいため息が口から洩れる。

なんせこれは毎回の事だ。ライムジュースがモージの反応もお構い無しに話しかけ、モージはそれを無視してただ目の前の飯を食べ続ける。

一体なにが楽しいのか。せめてどっちか相手に歩み寄れ。


「どうしたよ、ベック」

「お頭。あー、アレだよ。ライムのことだ」

「ああ……あれなァ……」


アレと言いつつクイッと顎で示せば、シャンクスもまたため息をついた。

赤髪海賊団のなかでライムとモージのやり取り、いや、やり取りとも言えない一方的な交流は有名だった。普通なら毎回無視されれば実力行使にでるだろう。一般的にはわからないが海賊なら手、または鉛玉がでる。

だが、ライムは変わらなかった。

その理由は『恋』だ。

そうライムは恋をしていた。モージに。


「いや、本当になんでアイツなんだろうな?」

「ライムの趣味じゃねーだろー」

「まァ、恋は人を変えるっていうしな」


気づけば赤髪海賊団幹部が集まっていた。各々二人を肴に酒を呷る。


「って言ってもよォ、綺麗な姉ちゃんだっているだろ、ほら」

「アルビダだろ?美人だよなァ」

「男だとしてもカバジの方がまだな」

「バギーは可愛いぞ!!」

「ない」

「無いな」

「なんでだよ!?」

「愛嬌はあるが可愛くはねェ」

「はぁ!?バギーはなァ!」

「や、お頭うるせぇ」

「静かにしろ」

「おれ船長だぞ!?」

「話は変わるけど他に良い奴とかいるか?」

「あ、アイツは?頭が3の……確かギャルディ」

「無い」

「ベック、食い気味で否定するなよ」

「誰も狙ってねェから安心しろ」


やんややんやと騒ぎながらも二人から目を離すことは無い。だって大切な仲間の恋路だ。もちろん出来るなら叶って欲しい。

その時事態は動いた。


「なァ、食いすぎだろ。口の周り汚れてるしよォ……ングッ!?」


モージがライムの口にキッシュを押し込んだ。

残りの二切れもライムが飲み込んだと確認すると、すかさず口へ運ぶ。


「えっ、えっ、あーんしてるんだけど!?」

「あいつ、人に食べ物分けることあるんだ……」

「脈アリってことかァ!?」


密かに盛り上がる赤髪海賊団を余所に、モージはまたテーブルの料理を食べ進めていた。ちなみにライムは赤い顔で呆然としている。


「ついにライムに春が」

「まァた押し付けてんのか、モージのやつ」


不意に頭上から声がした。

見上げればふよりと浮いている上半身。


「バギー!!」

「うるせェ!!触んなハデアホォ!!!」


シャンクスが伸ばした手を払い除け、バギーは腕を組む。つれない態度に落ち込みつつもシャンクスはバギーの言葉に引っかかっていた。


「押し付ける?」

「ああん?あー、そうだよ。ありゃあトマトとナスのキッシュなんだがなァ、あいつナスが嫌いなんだよ」


だから他のやつに押し付けてんだ。好物の漬物だってナスだけは食わねェんだぜ。

その言葉に赤髪海賊団は顔を見合わせた。


「つまり、さっきのあーんは」

「嫌いな食い物を処理してただけってことか?」


一歩進んだと思えばまだスタートラインにも立ってなかったってことか?

ああ、どうやらライムの恋が実るのはまだまだ先の様だと揃って肩を落とす赤髪海賊団なのだった。

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