ユーヴァース親子丼
「流石に足腰に来るな……。気持ちよかったよ潔世一」
スナッフィーは潔の頬に唇を落とした。見た目の幼さに反して、潔は期待以上の働きを見せた。サッカー以外で、ここまで疲労を心地よく感じるのは随分と久しぶりだった。満足そうな顔でスナッフィーはベッドから降りる。一歩目は少しふらついたものの何とか体勢を持ち直して、スナッフィーは潔とロレンツォを振り返った。
「俺は少し長めにシャワーを浴びてくるから、その間に楽しむと良い。俺に見られていると気不味いだろうしね」
潔は少し興奮を残しているものの、基本的には平常心を保っているようだ。ロレンツォは……少し腰が引けている? まあつい先程までは潔と自分の行為を食い入るように見ていたし、悪いようにはならないだろう。そう判断して、スナッフィーは部屋を出た。あとはお若いお二人で、というやつだ。使う場面は全然違うらしいが。散々噛まれた首が痛い。噛み癖は治す必要があるな、スナッフィーはそう独り言つ。
二人揃ってスナッフィーを見送って、さて、今度はロレンツォの番だとなったところで問題が発生した。
「来いよロレンツォ」
「や、やだ……」
ロレンツォが怖がったのだ。毛を逆立てる猫のように潔の一挙一動にびくついている。そこまでの様子を見せられると潔もまあ今回はいいかな、という気分になる。嫌がる人間に手を出す趣味はないし、そもそも体格的に無理矢理なんてのは不可能だ。リーチが違うし、暴力なんてもってのほかだし。
「あーじゃあなんか話そうぜ。そんな離れたとこにいないでさ」
恐る恐る近づいてくるロレンツォは本当に猫みたいだな、と思った。
「ただいま。お前ら調子はどうだ? ……何してる?」
部屋に戻ったスナッフィーの視界に入ったものは予想した光景ではなく、タブレットを挟んで盛り上がる二人だった。
「あ、スナッフィー!! やっぱこいつ面白いぜ」
「お帰りなさい。話し始めたら止まらなくなっちゃって……」
タブレットで流されているのはサッカーの試合だ。それにしたって二人揃って真っ裸のままでいることはないだろう。空調がしっかりしているから風邪は引きにくいとはいえ、予想外すぎてスナッフィーは一瞬状況が理解できなかった。
「話すのは良いがとりあえず服を着ろ。それとシャワー浴びてこい」
「ロレンツォはしてないから浴びなくて良いですよ。あ、でも体冷えたか……」
ロレンツォも風呂入る? と言う潔にスナッフィーは片眉を吊り上げた。ロレンツォはスナッフィーの視線から逃れるように目を泳がせた。
「何、結局してないのか? 後から後悔しても遅いぞ。お前は妙なところで臆病だな」
「まあ俺も嫌がってる奴の相手する趣味はないんで……」
「こいつは嫌がってるわけじゃない。単にビビってるだけだ」
潔がフォローを入れようとしたが、スナッフィーはため息を一つ。ロレンツォの背を叩いて、ほら、行ってこいと言った。
「怖けりゃ見ててやるから。……行けるか?」
「お、OK……」
「手加減してやってくれ潔世一。見ての通りの状況だからな」
はい。潔の返事を聞いてスナッフィーは頷いた。
「良い返事だ。期待してるよ」