ヤンリタSS『前戯』
※注意※
・ヤンマとリタが付き合っている
・初H話
・本番なし…というか服を脱がせる前で終わっている
・キャラ崩壊
・糖度は高め
「裁判長、」
「『リタ』…」
「あ?」
「こういう時くらい名前で呼んでくれ」
ヤンマと付き合って半年、月に一度の逢瀬をしているが未だ彼から名を呼ばれたことはない。…いや、その件に対して凄く不満がある訳ではない。リタの方も彼のことを名前で滅多に呼ばないからどっちもどっちである。ただ…
今日は、初めて、所謂“そーゆーこと”をする。
いまから“一線を越える”のだから、ちょっとはムードというものをだな…――これまで黙っていたけれど<名前、呼んでほしいな…>って気持ちを伝えてみた。
「リタ」
「 …っ、///」
自ら望んだのに、いざ呼ばれると…ドキっとする。
「目ェ瞑れ」
言われた通り瞼を閉じれば、唇が重なった。
啄むようなキスを繰り返しているうちに口の中に‘なに’か入ってきた。
(?!?!!)
なんだこれなんだこれなんだこれ!知らない、知らない!
キスは何度かした。でも、
こんなの、――知らない…!!
リタはヤンマの胸板を押し、止めさせた。
はくはくと口を動かし呼吸を整える。
「こんぐらいで息が上がってっけど、大丈夫か?」
降ってきた問い掛けの言い方にカチンときて、
「ば、馬鹿にするなッ…
仕方ないだろっ…初めてなんだから…っ!」
突き返す。
「別に馬鹿にしてないだろ。悪かったって」
相手は謝ってきたがリタはつーんとそっぽを向いた。
「リータァ」
―――!…ッッ
粗野な男の常と異なる、やわらかな声色に胸が高鳴る。
ヤンマの方を見遣ると、どこか緊張した面持ちの彼と瞳(め)が合った。
「俺だって初めてだから…おあいこな?」
そう言うヤンマは耳まで真っ赤だ。
彼の照れた様子がこちらにも移ったのか“初体験”という事実をこの局面で改めて思い知らされてリタは
「 そうか……///」
視線を落とす。
すると指先で顎を引き上げられ、再び唇づけられた。
角度を変えて何度もキスされる。唇づけがだんだん深くなっていくなか、また‘なにか’がリタの口内に。――それは、舌。つい先刻はわからなかったものが何であるか、いま認識する。
ヤンマの舌と認識した瞬間、リタの鼓動は速くなった。
どうしようわからない…――どうすればいい?どう返せばいいか、どう応じればいいのか、わからない。
「舌、出してみろ」
キスの合間、ヤンマが促す。それに従って舌を出したら…彼の舌に絡め取られた。
「っ、んんーー」
絡み合うふたりの舌がリタの口の中を搔き乱す。リタの心も掻き乱される。
リタはヤンマの上着の裾を掴んで縋りついた。
不意に身体が浮上してすぐ背中に柔らかなものが当たった。それがベッドだと察して、押し倒されたのだと知る。
チュ…ッ――音を立てて、ヤンマは唇を離した。
キスの雨から解放されたリタが瞳を開くと、案の定 天井。…と、真剣な眼差しでこちらを窺っているヤンマの姿があった。
「先刻も言ったけどよ…俺はこういうの初めてなんだ…。だから、加減がわからねぇ。
もし、恐くてまだ心の準備が…ってビビってんなら――いま言え。そしたら今日はここまでだ」
これからする行為は未知のことだ。恐くないと言えば嘘になる。でも、――厭でない…ヤンマが相手なら。それに…知りたいという感情もある。初体験というのがどんなものなのか知るなら、相手はヤンマがいいヤンマでなきゃ厭だ。
恐いけど(ヤンマとするのは)厭じゃない。恐いけど(ヤンマとするなら)恐くない。
―――恐いけど…おまえならいいよ…
なんて、決して言葉にしないけど。
「………シて……」
口にした途端、恥ずかしさが込み上げる。リタはヤンマの顔が見れなくて思わず視線を逸らした。
「ッ、上等…っ!」
首筋をヤンマの指に撫ぞられる。
「ぁ、んっ」
声が、出た。自分でも信じられない程の甘い声。リタは慌てて手で口を抑える。
―――恥ずか死…
そんな、リタの羞恥など知る由もないヤンマが耳を甘噛みしたり舐めたりしてくる。
リタは一所懸命、声を我慢する。
「なぁ…、その手、邪魔」
ヤンマがリタの口に添えた手を剥ごうとする、から、
「だめっ」
首を横に振った。
「なんで?」
「で…出ちゃ、う…、から… 変な声…ッ」
リタは顔を手で覆った。
「隠すな」
ヤンマに両手首を掴まれ顔から外される。――彼の瞳(め)に掴まった。
「出せよ。声」
「(!!) でもっ、だって…!恥ずか… ―― 「聴きたい」
「 ぇ」
言い分を遮り、相手が溢したのは…
「リタの声が聴きたい」
あ、
「初めてだっつってんだろ」
何遍も言わせんな…と拗ねたように吐いてヤンマは続ける。
「巧くできるかわからねーから…ちゃんと気持ちよくさせられるかわかんねェから…。だからッ!」
ヤンマは真っ直ぐこっちを見つめて、こう告げた。
「聴かせろ…お前の、声…!」
うー、そんな必死な表情(かお)でお願いされたら…
「リタ…」
っ!!
ず、ズルい…ここで名前を呼ぶのはズルい…
リタは小さく肯いた。
そうしたら、ヤンマは安堵したように笑みを浮かべて。リタの手の指に自身の指を絡ませた。
ベッドに縫い付けられたかのような体勢でヤンマの顔が近づいてくる。リタはそっと睫毛を伏せた。
リタの右目――氷の封印の力が宿る右目にヤンマの唇が触れる。…瞼越しに感じるぬくもりに、リタは何だかふわふわしてきた。
そのままヤンマは、額・瞼(左)・鼻先・頬…そして唇にキスを落とす。
「あっ、あぁっ、」
唇づけの度に漏れ聞こえる自分の嬌声に羞じらいつつも興奮しているのがわかって
「…はっ、ん、…」
リタは昂揚していく。
ヤンマが首に舌を這わせた。
「…ひゃあっ」
「お前、もしかして…首、弱い?」
「!ち、違…」
否定するもヤンマは、そういやいつも襟で隠してるよな、と勝手に納得している。
違う、というか…知らない。首が弱いだとか、そんな…今まで誰かに触られたことがないからわからないんだ。
「このこと知っているのは俺だけか?」
尋ねられて<あぁ、おまえだけだ…何なら私自身いま知った>と思いながらも言えずにいたら、それを無言の肯定と受け取ったらしく
「だとしたら…――俺しか知らないリタの秘密だな」
彼は嬉しそうに笑った。
きゅん
ヤンマの、少年みたいな屈託のなさを見せられて、リタはキュンとする。
リタがうっかりときめいている間に、ヤンマはシャツのボタンを一つ二つ外していた。
少しはだけて胸元が露になる。
「~~~///」
リタは反射的に腕で隠そうとしたけれど、ヤンマにやんわり制されてしまう。
ヤンマがリタの鎖骨を強く吸い上げた。
「…あ、っ、…や、ん…」
「よしゃ、付いた!」
「ふぇ…」
「キスマーク」
「 きす、まーく…///」
見れば、鎖骨に紅い痕。
「服を着りゃ襟で隠れるから他の奴には見つかんないだろ」
(だからって…キスマーク…///)
「これも俺とお前――“ふたりだけの秘密”な!」
(“ふたりだけの、秘密”…)
リタの心臓がドキンと鳴った。
「さぁて、と。…こっからが本番だぜ?」
ヤンマが服を脱がせ始める。…リタの身体を触りながら。
「…あ、っ、あっ、…ヤ、ン…、マ…」
リタはあられもない声を上げるのだった。
こうして、ふたりの初めての夜は更けていく―――。