モンドール×ロビン

モンドール×ロビン


・謎時空注意



 小さい頃、おれは自分の能力があまり好きではなかった。

 兄貴達の能力と比べたら本なんて食べれないし戦闘向きにも思えない。それでも本は嫌いではなかったから自分なりに調べて研究して研鑽を積んで、本の中に生き物を封じ込められるようになったらママが褒めてくれた。本の世界を通じて広い万国を伝電虫で繋げるようになったら兄弟達も便利だと褒めてくれた。だからそれでいい、家族のサポートがおれの生き方なんだと思っていた。


「あなたの能力はとても素敵ね」


 だから、こんなに純粋な好意を向けられるとどう返していいのか分からなくなる。


「私ね、小さい頃本の世界に入ることができたならどんなに素敵なことだろうと想像したわ。伝説の生き物が飛び回る世界で冒険して本に書かれた偉人と話をしてみたいと何度も思ったの」


 悪魔の二つ名を付けられた女性は知的で落ち着いた雰囲気を纏っていたが、幼い頃の思い出を語る横顔は子供のように無垢で輝いて見えた。彼女は純粋に本が好きなんだろう。一方でおれはどうなんだ……?図書館はおれの領分だから嫌いで司書なんかやってられねェが…彼女のように純粋に読書を楽しむ姿勢は能力を得てから忘れかけてしまったように思う。


「ねえ、あなただけが知る本の世界もあるのかしら?それは一体どんなお話?」

「…見たいのか?」

「ええ、ぜひ」


 参ったな、そんな満面の笑みで期待を委ねられて断る術があったら教えてもらいたいもんだ。コミュニケーション学の本にちゃんと目を通していたら良い案が浮かんだだろうか。

 …いや、今回ばかりは知らなくて良かったかもしれない。


「ああ、いいぜ」


 おれは恭しく白く細い手を取って彼女をエスコートした。目指すは6番の本棚。そこの一番上の右端には家族の誰も知らない、おれがまだ能力を今のように使いこなせなかった頃に面白半分で作った自分だけの物語が眠っている。

 自分でさえ何を入れたか記憶は曖昧だ。だからつまらなかったと文句を言われたところで痛くも痒くもないが…もし万が一、彼女がこの物語を気に入ってくれたのなら、おれはきっとありし日の純粋におとぎ話を楽しんでいた時のことを思い出せる。そんな気がした。


 胸に渦巻く不安を胸に目当ての本を取る。そっと盗み見れば彼女の瞳は期待の色で揺れていた。おれはそれに安堵の息を一つこぼしてから埃を被った本の表紙をめくった。

Report Page