メロン妻は夢見心地
その1数日後、私と妻はとある宿泊施設に来ていた。俗に言うラブホテルなのだが、私達夫婦は籍を入れる前から現在まで、事あるごとに"そうした目的"で滞在する馴染み深い場所である。子供達は仕事や合宿、友人宅でのお泊りなどで家を空けており、久しぶりの二人きりだから、ということでここまで来たわけである。
「休みと言ったって、まだ平日だよ?アンタは本当に…お盛んなんだから、全く」
どこか揶揄う調子の妻だが、実に手際よく部屋を選んで入室し、上着を脱いで寛ぐ体勢を整える。妻としても、"お楽しみ"を待ち侘びている証だ。そうして仲良くベッドに並んで座り、私は例の物を取り出す。
「なんだい、コレ?"ゆめの…けむり"?」
イッシュ地方に生息するエスパーポケモンのムシャーナは、人やポケモンの夢を食べ、それを煙として噴出している。それを瓶詰にしたものを、私は購入した。裏の注意書き曰く、
・本製品はポケモンに優しい方法で生産されています。
・用法:不眠改善、リラックス、夜の営みの盛り上げ…
・同意無く使用することは法律で罰せられます。
私の意図を察した妻が、ジトっとした視線を向けてくる。
「要するに…これであたしをトロトロにして、変なコトさせたいんだろう?アンタは昔っからいやらしいね」
責めるような口調だが、そこに本心からの嫌悪はなく、僅かばかり興味があることを察する。どうしても、と必死に頼みこみ、ついに妻が折れた。
「もう、今回だけだからね?ま、あたしにはこういうの効かないとは思うけど。変なことし過ぎたら、流石に怒っちゃうから」
どうにか同意を得て、瓶の蓋をほんの少し開ける。濛々とゆめのけむりが立ち昇って、辺りがモモン色の靄に包まれたようだ。これでも全体の二割ほどである。
「…」
蓋を開けてから、妻は黙ったままその様子を見守っている。少し心配になり、軽く肩を揺すって呼びかけてみると…
「…なんだか暑くなってきたね、アンタ…」
仕掛けた私の方が思わずぎょっとした。妻の美しい瞳は潤み、血色の良い唇はその艶を増し、隙間から吐息が漏れている。情熱的、かつ蠱惑的な目線がこちらを射止めてくる。
まさか、これほど効果があるとは。本人の認識に反して、こうした物にかかりやすい体質だったのか。ともあれ、早速望みを叶える好機だ。私は妻を座らせたまま、スマホロトムを構えて向き直る。
─────メロンさん、インタビューを始めますよ。
「?インタビュー、って…なんの、こと?」
─────今日はメロンさんの独占インタビューじゃないですか。
「ん…ああ、そうだったね。えっと、キルクスタウンのジムリーダー、メロンだよ。こおりつかい、です」
─────本日はたくさんのカメラとスタッフに囲まれてますけど、どうです?緊張しますか?
「カメラ?スタッフ?そんなの…どこにも…ああ、確かに…少し…照れるね」
すっかり催眠状態に入ったようだ。ここからが本番…。
─────それじゃあ手始めに、スリーサイズから教えていただきましょうか。
「えっ…!?うう、そんなの…分かったよ。下からでいいかい?下から…ヒップが♡♡cmの…ウエストが♡♡cm…」
私にとっては既に把握済みの数字だが、しかしこうした形で言われると、やはり興奮度合いが増すというものだ。
「バストが…バストが…」
頬を紅潮させて詰まる妻。成熟した顔と、処女のような表情の差が堪らない。
─────ほら、バストもお願いします。
「急かすんじゃないよ…バストが…♡♡♡cmの…♡カップ…」
改めて数値化されると、やはり大迫力の乳房は規格外である。
─────本当に大きいですね、メロンさん。ガラル中の男子があなたのオッパイに夢中ですよ。
「変なこと言わないどくれ…!重いし、肩は凝るし、人にジロジロ見られるしで、大変なんだから…」
─────そうは言っても、あなたの魅力の一つに違いないですから。そのボリュームだと服に収めたままでは窮屈そうですね。脱いじゃいましょうか。
「!?わ…分かったよ…下着まで、だからね?」
いささか心配になる程だが、妻は架空のインタビュアーとスタッフ達の目の前で、服を脱ぎ始めた…。