メダロットが存在する世界線におけるカルバノグの兎
ユキノ「これは……」
カヤ「ふふふ……驚きましたか?
これは連邦生徒会でも連邦生徒会長と彼女に認められた一部の者以外には秘匿されている最重要機密です。
あなたたちにこうしてこれをお見せするのは私からのあなたたちに対する信頼と思ってください」
クルミ「サンクトゥムタワーの地下にこんな巨大なメダロットが隠されていたなんて……」
オトギ「だけど、動いてる様子はないね。
メダルが入れられてないのかな?」
カヤ「いいえ。メダルは搭載されていますよ。
これが動かないのは眠っているからです。
当時の連邦生徒会によって発見された当時から今日までずっと――」
ニコ「もしかしてこのメダロット……」
ユキノ「“マザー”だというのか?
だが、生きているマザーメダロットは……」
カヤ「はい。すでに存在しないとされて言われていました。
――ですが、実際にはこうして生きているマザーが存在していたのですよ」
ユキノ「……連邦生徒会は、連邦生徒会長はなぜこれを今まで隠していたんだ?」
カヤ「残念ですが私にもそこまではわかりません。
これはあくまでも私見ですが、他にも生きているマザーが存在していた場合のカウンターとして生かしているのではないかと……」
クルミ「マザーは他のメダロットを支配できるっていうし、あながちその考えも間違っちゃいないかもね」
カヤ「まあ、連邦生徒会長のことですから単に寝かせてあげたかったからそのままにしているって可能性もありますが……」
オトギ「ええ~……?」
ユキノ「……それで?
これを私たちに見せて、いったい私たちに何をさせようとしているんだ?」
カヤ「理解が早くて助かります。
単刀直入に言ってしまえば、これを目覚めさせるのに協力してほしいんですよ」
ユキノ「……連邦生徒会長代行の座を狙っている真の目的はこれを手に入れるためか?」
カヤ「半分は正解ですね。
これの制御権はSRTの統制権同様連邦生徒会長にしか与えられておりません。
――ですが、私はこれ自体を欲しているわけではないんです。
これが持っている力を欲しているのですよ」
ニコ「マザーが持っている力?
さっき言ってたメダロットを支配する能力のこと?」
カヤ「確かにそれも興味はありますが……
私が求めているのはメダロットーーその魂であるメダルを生み出す力です」
クルミ「……は?
メダルが欲しいなら普通に買えばいいじゃないの?」
カヤ「それでは駄目なのですよ。
私が作り出したいメダルとは私の人格と記憶を複製したもの――
いわば私の分身・コピーとも呼べるメダルなのですから……」
ユキノ「……自分自身の複製を作り出し、キヴォトスを永遠に統治していたいというのか?」
カヤ「まさか。
そのような面倒くさいことをなぜやらなければならないのですか?」
オトギ「違うの?
事実上の不死になってまでやりたいことなんて、正直それくらいしか浮かばないんだけど?」
カヤ「私が私の複製を生み出す理由――
それはひとえにメダロットたちのためです」
クルミ「メダロットたちのため?
どういうことよ?」
カヤ「私たち人と違い、メダロットはメダルが存在する限りはこの世界に永遠に生き続けます。
メダロットは現在人間のパートナーとして存在しておりますが、人間とメダロットの寿命の差は歴然です。
現に持ち主が亡くなられたことで所有権が失われ、野良として扱われることになったメダロットがキヴォトスには大勢います。
連邦生徒会長が失踪したことで邪魔者扱いされてしまったSRTのようにね……」
ユキノ「…………」
ニコ「…………」
クルミ「…………」
オトギ「…………」
カヤ「そんな顔しないでくださいよ?
事実を述べたまでなんですから……
ともかく、私はそんな状況をなんとかしたいのです。
そこで考えたのですよ。
――人間もメダロットになってしまえばこの問題は解決するとね」
ユキノ「――!
まさか、お前の真の目的は……!」
カヤ「はい。
キヴォトスの全ての人間の複製であるメダルをこのマザーに作り出させる――
それが私が連邦生徒会長代行の座を欲する目的です。
その第一歩とテストを兼ねて、まずは私の複製を作らせます」