メカぐるみぱにっく

メカぐるみぱにっく





 それはいつもの通学路の途中に唐突に表れた、小さな異物だった。

 レバーが付いた小さい白い箱が、道の端にデンと置いてある。

「あれ、なんだろう?」

 帰宅途中のスレッタは興味を惹かれて、そのよく分からない物体を観察してみた。

「えっと、ガシャポン?」

 箱に書かれた説明を見るに、これは小さな小さな販売機らしい。どうやらお金をチャージしてレバーを倒せば商品が出て来るようだ。自動販売機とは違い、中身は選べないようだが。

 商品名は、『ガシャポン:メカぐるみ』。販売機には見本として、モビルスーツのようなパーツを身に着けた小さなお人形のフォトが張り付けてある。

「わぁ、かわいい」

 どれも個性があって可愛らしい。スレッタは少し悩むと、生徒手帳を取り出して1回分のお金をチャージしてみた。

 ガシャン…ッ

 けっこう大ぶりなボールが販売機から転がり落ちてくる。小型のハロのような姿で、これもまた可愛らしい。このボールの中に人形が入っているのだろうか。

 スレッタはわくわくしながら、両手で大事にボールを持って地球寮へ帰宅した。


 さて、中身の開封である。スレッタはボールを両手で挟んでねじるように回してみるが……開かない。何かコツでもあるんだろうか。

 困っていると、ハロの頭の部分がボタンになっていることに気が付いた。試しに指で押し込むとカチリと小さな音がして、商品説明のホログラムが空中にふわっと浮き出てくる。

 それによると、どうやら中身はランダムではなく、自分でパーツを選んで作っていくのだそうだ。3Dプリンターとやらの技術が使われているらしい。

 スレッタは感心しながらも、ハロの案内に進められるままにパーツを1つずつ選んでいった。

 そして現在。

「ど、ど、どうしよう…」

『商品名ガシャポン:メカぐるみ。機体名【ふぁらくと型えらん・けれす】。LP041スレッタ・マーキュリーをますたーとしてとうろくします』

 明らかに誰かを彷彿とさせる人形が、てこてこと歩いてスレッタをマスター認定してきている。

 ただのオモチャだと高をくくって、好きに作ってしまったのだが…。

『ますたー、ぼくにごめいれいを』

 緑の目が、まるで生きているようにスレッタを見上げている。

 ただのお人形だと思ったから、エランさんに似せて作ったというのに…!

 動いて喋って歩いているこの子を、地球寮の皆から隠し通す自信がない。

『ますたー、めいれいはないの…?』

 不安そうにこてりと首をかしげる様子を、スレッタはきゅんとしながらも困ったように見つめるのだった。


 ───同時刻で、御三家とミオリネが同じように頭を抱えていたのだが、それはまた別の話である。







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