夢で見たミチサルの話

夢で見たミチサルの話

ミチサル夢スレ主

・ミッチーとサルがお互いに乗り気

・男と寝ることへのハードルとか葛藤とかない

・サルがノンケではない

・たぶん金ヶ崎後~本能寺前の二人が拗れる前の友好的だった時期の話らしい

・本番描写なし

・なんでも許せる人だけ読んで下さい







触れ合わせた唇が離れた瞬間、くつくつ、と男が笑い出した。


「どうなされた」

「いや、お気になさらず。ふふ、いつも死人のような顔色をしている明智殿から酒の味がするのが……、何やら愉快で」

「……宴の後なのですから当然でしょう」


酒の味がするのもお互い様だ。

宴を共に過ごすのが初めてという訳でもあるまいし、今更なことを言ってくれる。


「そうですな。明智殿の顔色も普段よりようございます」


酒が入っているという以上に、子供のように暖かい手が、する、と自分の頬を撫でる。

常は悪戯っぽく輝いている琥珀色の瞳は、細められると妙に色めいていた。


「……こちらからお誘いしてなんですが、その気になって頂けて安心いたしました」


二人きりだ。声を潜める必要もない。

だが、吐息のように微かな声で囁かれ、同じ程の声で返す。


「……出来ぬようであれば初めから受けておりませぬ」




どうしてこうなったか……、は、成り行きとしか言い様がない。

武士として生きる以上、衆道は当たり前のたしなみだ。

男と男が寝るのは、男と女が寝るのと同じように、いや、家や子供というしがらみがない分、一層気軽に行われている。

光秀も秀吉も、織田家には途中から仕えだした新参だ。どうしても譜代の家臣とは距離が出来る。長く勤めている者を差し置いて、主から特に目をかけられていれば、更にだ。

必然的に、二人で話すことも多くなる。

光秀よりも長く仕えている分、秀吉は織田に馴染んでいるように見えたが、人懐こいという評価の彼は、こうした戦の後の宴の途中では光秀の元に寄ることが多かった。


そうだ。それで、宴が進み、酒に飲まれて潰れる者が何人か出始めた頃……秀吉が光秀に耳打ちしたのだ。場所を変えて飲みませぬか、と。


「羽柴殿は……衆道は好まぬかと思っていましたが」


他の家臣と寝ることを出世の足がかりにする者も珍しくない。

とりわけ秀吉は、武家の生まれでない分他の者以上に出世に貪欲だ。

年齢にしては幼い顔と、伸びた手足に肉が追いついていない、少年のようななりは悪くないと……、秀吉が席を外している間、酒の席で話されているのを遠巻きに聞いたこともある。

その割に、秀吉が誰それと寝たという話は耳にした事がなかった。


「男よりは女の方が好きなのは事実でござるが、それがしも寺にいた身です。心得がない訳ではございませぬ。……ただ、まあ……」


珍しく言葉を濁した後に、秀吉が襦袢に手をかけた。


「見て頂いた方が早うございますな」


軽く目を見張る。

秀吉がはだけた襦袢の下の腹には、成人であれば当然存在しているであろう下生えがなかった。


「……そういう訳で、あまり他の方と寝ると、面倒なことになりますゆえ」

「……なるほど」


光秀からは一回り近くも下とはいえ、秀吉ももういい青年の歳だが、長い戦の後の今でさえその頬はつるりとしていた。

男同士が群れれば多少下衆な話も出るものだ。

秀吉と寝て、その彼が無毛とあれば、他の者であればつい話題に出してしまうこともあるかもしれない。

少人数の酒の場の話の種で済むならばまだよし、己の目でそれを確かめようとする者が現れる可能性もある。


「明智殿ならば口は堅うございましょう?」

「外様で特別親しく話す方もいらっしゃらぬしな」

「嫌ですなあ、そういった意味ではございませぬ。……信頼しておるということです」


こちらの手を取りすり、と頬を寄せる秀吉に吐息をつく。

秀吉が元は農民でありながら破竹の勢いで出世しているのは、単に仕事が出来るだけではなく、相応の強かさも持ち合わせているからだ。

それに痛い目に合わされたことも何度かある、勘違いをする気もない。

だが、そう言われて悪い気持ちにはならないことは確かだ。


「……羽柴殿」

「ん……っ……」


それでもこのまま秀吉の思うままに話させるのは癪で、首の後ろに手をやり、再度唇を重ねてやれば、琥珀色の瞳が閉じられる。

重ねた唇は少しかさついているが、あちらこちらに跳ねた黄金色の髪は、光秀が思っていたよりも柔らかい。

光秀と違い、よく日に焼けて傷だらけの身体は、それでも瑞々しい肌をしていた。

常はやかましい程に口が回る男が、閨では案外に静かなのも初めて知った。

……これから、こういった夜を何度か重ねることになるだろう、という、予感はあった。


いずれその全てを忌々しく思うことになることは、知らなかった。

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