ミクトランのテスデイ
軽ーくそういう行為に誘ってみたら、
「おまえは今人間だろう。どんな病原菌がいるのかわからない状況で、スキンもなしに励むのはリスクが高い。悪いが無理だな」
と言われてしまったテスカトリポカ。
なんつー合理的な、色気のない断り方だと一瞬思ったが、ふと
「用意できりゃ抱いてもいいのか?」
と聞いてみると、デイビットは
「……そういうわけではない」
と微妙な反応。
流石にそう都合良くはいかないか、と潔く諦めて、この話は辞めにしようとする。
しかしデイビットが
「だが、おまえに迫られたら断りきれない気がするよ」
なんて続けるので、テスカトリポカはおいおい聞き捨てならんぞ相棒、と笑顔で背中を叩く。
「オレがその気もない奴を無理に手篭めにするような男に見えるか?」
「見えない。が、その気にさせるのは上手そうだ」
「ありがとよ。けどなあ、んなこと言われちまうとオマエで実践してやりたくなっちまうぜ?」
「必要ない」
ピシャリと一言。キッツいねえ。その端的さはある意味美徳だな、と思いながら、テスカトリポカは冗談だよ、と笑い飛ばそうとする。
ところが、直後の
「先程も言ったが、ほとんど結果は見えている。お試しでやるなら時間の無駄だぞ」
という言葉を聞いて、そんな気は失せてしまった。
「……オレは、喰えそうなら喰う男でもあるぞ」
「うん。心得ておこう」
真っ直ぐこちらを見据えて頷くデイビットを見て、テスカトリポカは頭の中で、必要なものを用意する算段を立てるのだった。
そしてデイビットは明日以降の自分のために、「テスカトリポカに抱かれるかもしれない」という一節を、貴重な5分間の内に刻んでおくのだった。