マイ・ディア・リリン

マイ・ディア・リリン






────古いアニメを思い出す。


 確かその作品の中では、人類にはリリンという別の名前がついていた。なんでも、私と同じ名前を冠した巨人がいて、それが全ての人類の祖を作ったから、そんな設定になってるんだとか。つまり、リリスが人間そのものの母というわけだ。

 翻って、私が産みだすリリンは子であり分身。たった1日しか持たない存在。もし仮に、産めよ増やせよ地に満ちよと神に代わって唆したとしても、繁殖や繁栄など望むべくもない。せいぜいアバターか身代わり、そして宝具の弾丸として使い捨てるしかないような、そんなとても人間だとは呼べないものでしかない。

 あの作品を見せたキリエライトは何を思っていたんだろう。当てつけか嫌がらせのつもりだろうか。いや、どんな理由であれ知りたくもないけれど。


 ……いや、今なら少しだけわかるかもしれない。その時にはもう、あの子がいたから。


 ある日産まれた、特別なリリン。小春日和に生まれたあの子。1日しか生きられない命の筈が、夜を超えて、1月を超えて、夏を超えて、ひととせを超えて。明日へ明日へと生きていく命。

 聖杯に願ったわけでもない。マスターが繋ぎ止めているサーヴァントでもない。あの子はあの子自身の力で、自分の命で生きている。

 それがどれだけの奇跡なのか、あの子自身は何にも分かってはいないだろうけれど。


「…………それ以上は、だめ」


 今だって、ほら。

 寄ってたかって虐めるなんて間違ってる、そう言って自分と敵対していた筈のティーパーティーの女の子を身を挺して庇っていたし。

 それに敵意を向けて、自分に襲いかかって来た生徒すら、守ろうとしてる。


「コハル……」


 娘を傷つけようとした少女たちに対して降って湧いた軽い怒りに抗わず、第一宝具を切ろうとした私──実の所"フリ"で怖がらせるだけで本当にやるつもりはなかったけど──を、あの子は必死に腕にしがみついて止めて来た。


「………………」


 魔力を収めて腕をそっと下ろし、コハルと真正面から向かい合う。

 この子の性格や特徴としては……割と、おっちょこちょい。日常だとそんなところが目立つ。変に背伸びして飛び級狙ってみたり、エリートなんだーって見栄を張ってみたり。向こう見ずであと先考えない、そんなちょっぴりおバカな子。

 でも、こんな風にいざという時は肝が据わっていて。自分が正しいと思うことのために、譲れない何かのために、震えながらでも勇気を振り絞れる。転んだって失敗したって傷付いたって、泣き言は言うけど、なんだかんだで立ち上がれる。


 そんな、普通に良いところと、普通にダメなところと、そして特別凄いところを。小さな体にいっぱい詰まって生きている。それは、私が大好きな、『人間』の素晴らしさそのもので。


「──あーもう!ほんとに可愛いんだから!!」

「わぷっ!?」


 この子はコハル。リリスの娘。私のリリン。そして、この上なく人間として生きてる女の子。

 それがどうしようもなく、堪らなく嬉しかった。



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